テラーノベル
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翌日の夜。
ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。
人気店のケーキ箱を持った美緒が、インターフォンの画面に映っている。
香帆は、大きく深呼吸をして玄関のドアを開けた。
「来てくれてありがとう」
「はい、おみやげ」
美緒はいつもと同じだ。綺麗な顔で微笑んでいる。
「夕食まだでしょ。ハンバーグ作ったから食べてね」
香帆と美緒は、ダイニングテーブルに向かい合って座った。
香帆は、意味の無い会話を続けた。
「今日も忙しかった?」「このテレビ面白いね」
どうしても〈切っ掛け〉がつかめない。
美緒がナイフとフォークをテーブルに置いた。
「ねぇ、相談って何?」
もう避けられない。訊くしかない。
「相談というより、質問なんだけど……、狩野桜志郎を知ってる?」
「あ~~あ」
美緒は、指を組んで両手を高く上げた。
グッと背伸びをする。
その姿は、ずっと我慢していた何かを突き破ったように見えた。
「やっぱり知ってるの?」
「その人が何かしたの?」
「アイツは颯真を殺して、保険金を奪った」
「ふ~ん。そうなんだ」
「颯真の浮気もアイツが仕組んだ」
「浮気は、香帆が悪いんでしょ」
「え?」
「結婚1年で浮気されるなんて、よっぽどアンタに魅力が無いのね」
美緒は〈見下す〉目で香帆を見た。明らかに蔑んでいる。
「だってそうじゃない。妻に魅力があれば、浮気なんてしないでしょ」
美緒は仮面を外した。
【優しい同僚《ともだち》】という仮面を外して、フレネミーの本性を現した。
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