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数話で終わるよ!(多分)
特に注意事項は…………うん、ないと思う!
最後まで見てくれると嬉しいです!
***
「っ…ガハッ!ゲホッゲホ…!」
気管に流入した血液が、口から溢れ出す。
太宰は強く咳き込んで吐血する度に、撃たれた腹部の傷口から、包帯に血が染み広がった。
「はッ…はぁ…はぁ……中也………」
並ぶ木々に体重をかけながら、太宰は前へと進んで行く。
その漆黒の瞳には、汚濁形態の中也が映った。
中也は咆哮しながら辺りを破壊し、無の極地へと追い込む。
血。
死体。
瓦礫。
辺りには其れしかなかった。
乾いた笑い声が響いた。それでも中也は、太宰と同じように息が荒くなっていた。
____理由は一つ。
「はぁ…はぁ…」
太宰の荒い息が収集される風に流され、儚く呑み消される。
中也はどんどん赤黒い禍々しい何かに包まれて行った。
其れは中也にとっては警告だった。
死に近付いて行っている証だった。
――済まない中也……。
グッと何かを堪えるように、太宰は悔しそうな表情を浮かべる。
***
事の発端は、特に何も違和感を持つ事の無いものだった。
――其れは、首領からの命令。
或る一つの組織を潰せとの事だった。
特に指定はなく、潰す___全滅させれば其れで佳いとの事。
そう、期間の指定がなかったのだ。
其れに首領は__
『元々あの組織は何かと我々に楯突いていてねぇ、其処までじゃあなかったから目を瞑っていたけれど……』
『最近我々が取引を行っている組織が潰された』
『その組織だけでは無い、彼等は徐々に我々を潰そうと周りの種から消して行っている』
『幾ら何でも、このまま目を瞑っている訳には、ポートマフィア首領として相応しくないと思ってねぇ』
『君達に頼んだ理由…?』
『そうだねぇ…あの組織は其処まで強くはない』
『戦えば普通に長引けくけど、中也君が汚濁を使えば直ぐに終わる』
『……違うよ、中也君に汚濁を使わせる為に頼んだわけじゃない』
『何やら彼等は隠し事をしてるみたいでねぇ。只の隠し事じゃない』
『何か……とても大きな隠し事だ』
『君達には其れを暴いてもらいたい』
『指揮は太宰君に任せるから、物によっては利用、場合によっては破壊』
『全部太宰君が決めて構わないよ』
『そう、何かあった場合は応援を直ぐに呼びなさい』
『うん、それじゃあ……』
――期待してるよ、二人共。
***
「で?如何すンだ太宰、今日中に乗り込むか?」
「そうだね…首領も早目に潰してもらったほうが助かるだろうし……」
太宰は首領から預かった敵組織の資料を、パラッと音を立ててめくる。
「………中也」
「あ?」
「首領が云っていた通り、何かあるかもしれない」真面目な声で太宰は言葉を発する。
「奇襲だ。そうすれば敵のスキも突けるし、人数は其処まで“必要ない”」
「被害は最小に……ってか?」中也の其の言葉に、太宰は「嗚呼」と静かに答えた。
「一応手前は幹部だ、癪だが手前の指示通りに動いてやる」
「ふふっ…流石私の忠犬だ」
「ンだと手前!!」
「ほら、返事は『わんっ!』だよ〜」太宰は中也の頭を撫でようと、手を上げる。
「止めろ!気色悪ィ!!」
中也は太宰の手を振り払った。
太宰は瞼を閉じ、そして開ける。
「あははっ…まぁでも、大丈夫」
真剣な眼差しで、然し誂いの笑みを浮かべながら、太宰は云った。
「私の指示が間違った事は無いからね」
其の言葉に、中也はキョトンっと少年のような表情を浮かべる。
そして一つ、舌打ちを響かせた。
「あ”ーそうだな、流石幹部様だわ」台本読み、棒読みのように云いながら、太宰を置いて歩いて行く。
「そうだろう?中也は私の犬だからねぇ、より一段と敬い給え…!」
「へいへい……」
――そう。私の指示が間違った事は無かった。
――凡てが私の基盤の上だと思っていた。
――今日、この日までは。