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「俺たちは、ただの“つがい”じゃない」― テヒョンの静かな矜持 ―
SクラスDomとして生まれた。
俺は、その意味を、ずっと考えながら生きてきた。
支配すること。導くこと。欲望を満たすこと。
──それがDomとしての“役割”だと、言われてきた。
でも俺は、それだけじゃ満足できなかった。
力があるからこそ、踏み込むべきじゃない距離がある。
俺は、いつもそういうギリギリのところにいた。
そんな中で、キム・ミンジュが来た。
BTSのマネージャーとして。
そして、俺たちの前で、バースの“匂い”を完璧に隠して。
最初は、ただの“気配の薄い女”だと思ってた。
でも、ある日気づいた。
──あの時、事故で軽くぶつかった時。
俺の本能が、一瞬だけ“ザワッ”と騒いだ。
「これは……ただのSubじゃない」
調べる気はなかった。
暴くのも、追及するのも、俺のスタイルじゃない。
それでも、俺は、目を離せなくなった。
Sクラス同士、何か通じ合うものがあったのかもしれない。
ジョングクが現れたときも、誰よりも早く異変に気づいていた。
SSクラス──
本能が、無意識に身構えるほどの存在。
そして、ミンジュがジョングクにだけ、わずかに反応を返した。
「……ああ、終わったな」
それが俺の、最初の感想だった。
少し、胸が詰まった。
別に、恋をしていたわけじゃない。
でも、守りたかったんだ。あの子の静けさを、尊厳を、努力を。
それが、あいつに奪われる気がして、腹が立った。
でも、それは間違いだった。
ミンジュは、ジョングクの隣で、さらに強くなっていった。
「Subらしく」なんてならなかった。むしろ、前より鋭く、意思を持つようになった。
そして気づいた。
“つがい”ってのは、「誰かに支配される関係」じゃない。
選び合って、引き上げ合う関係なんだって。
ジョングクとミンジュがいなくなった夜、ジンヒョンに言った。
「ヒョン、あいつら……正しかったんですよね」
ジンは静かに頷いた。
「正しさは、最後までやりきった奴にだけ、与えられる。
あいつらは……やりきった。だから、正しい」
俺たちは残った。
そして、変わることを選んだ。
「力」ではなく、「尊厳」のために。
「支配」ではなく、「尊重」のために。
俺たちは、新しいDomの在り方を示す必要がある。
だから今、俺はアイドル活動をしながらバース制度改革のチームに加わっている。
言葉じゃない形で、メッセージを世界に届けられるなら俺はなんだってする。
その中に、キム・ミンジュという存在がいたことを、俺は誇りに思ってる。
──彼女は、誰よりも静かで、誰よりも強いSubだった。
そして、ジョングクという存在に出会って、それをさらに証明してみせた。
だからこそ、俺も変われた。
俺はもう、ただのSクラスDomじゃない。
誇りあるSクラスの、進化した“男”になりたい。
そう、心から思ってる。
⸻
【End:テヒョン視点】