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「いやぁ……アンタって、『人は見かけによらない』そのものだわ」
「何だよそれ」
「アンタってさぁ、ホストと男娼をやってたんでしょ? 女を手玉に取る事を生業(なりわい)としている男の口から、『一緒に写真を撮らない?』なんて、言われるとは全く思わないし、まるで中学生や高校生みたいじゃない?」
「うっ……うるせぇなぁ」
ご機嫌斜めになった男に、優子がププッと吹き出す。
「あんた、俺をバカにしてるだろ」
「ごめんごめん。バカにしてるつもりはないよ。さっきも言ったけど、人は見かけによらないなぁって思ったまで。アンタみたいに、冷たさと色っぽさを兼ね揃えた男が、かわいい事を言うなんて、思わないし。それに……」
優子が言葉を詰まらせつつ、拓人の表情を伺う。
「アンタってさ、女とカメラに収まるの…………嫌いじゃないかなって……思ったのよ」
「まぁ昔はそうだったな。で? どうなの? 一緒に…………写真を撮ってくれんの?」
取るに足らない事を、真面目な表情で聞いてくる男に、優子は思わず目を細めてしまう。
「…………しょうがないなぁ。一緒に撮ってあげても……いいよ?」
上から発言だな、と思いつつ、優子は唇を微かに綻ばせた。
二人並んでベッドで仰向けになり、拓人がスマートフォンの液晶画面上のカメラを起動させると、腕を伸ばして画角調整をし始める。
「何か、ベッドに横になってのツーショットって、服は着ていても、いかにもって感じじゃない?」
「まぁいいんじゃん? ある意味、俺らっぽくてさ。んじゃ、撮るよ」
筋張った腕に引き寄せられると、男はシャッターを切る。
軽快なシャッター音が、寝室に静かに響き、拓人が、もう一枚、と言いながら再び画角調整をする。
優子は、口角を僅かに上げ、唇に緩く弧を描かせると、男が再度、シャッター音を鳴らした。
「今撮った写真、せっかくだし、私のスマホに送ってよ」
優子が買ってもらったばかりのスマートフォンを手にして、ワイヤレスで画像を送ってもらった。
「ありがとう。いい記念になったよ」
「ほぉ。あんたに、いい記念と言ってもらえて、嬉しいねぇ」
二つのスマートフォンをヘッドレストに置くと、男が優子を抱き寄せる。
「沖縄に行ったらさ……真っ青な海をバックにして…………あんたの写真、撮らせてくれよ」
「いいよ。その代わり、綺麗に撮ってよね?」
「了解」
拓人の言葉に、優子は微笑みながら頷いた。