テラーノベル
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二日後、沖縄へ旅立つ日の朝。
二人は、大きなキャリーケースと、手荷物を持ち、拓人の自宅を出発。
「あれ? 車で行かないの?」
「行かないよ。まぁ、予定は未定だけどさ、もしかしたら、沖縄にそのまま住んじゃうかもしれないじゃん?」
優子は、てっきり車で空港まで行くのかと思い、黒いセダンに近付いたけど、男の言葉を聞いて、それもそうか、と納得した。
「なあ」
歩き出そうとしている彼女の背中に、拓人から声を投げられる。
「改めて聞く。あんたは全てを捨てて、沖縄に行く事になる。後悔…………しないな?」
「…………しないよ。この旅立ちが、私の人生の岐路になると思ってるからね」
優子は振り返り、拓人に笑顔の花を咲かせてみせる。
「…………そうか。じゃあ…………行くか」
「うん」
閑静な住宅街に、ゴロゴロとキャリーケースを運ぶ音だけが響き渡る。
これから出勤する人たちの波に逆らい、二人は沖縄へ旅立つのだ。
(もう後戻りはできない。けれど…………これが私の選んだ人生……)
優子は、表情を引き締めさせ、前を見据えて歩き続ける。
二人は会話も交わさずに、渋谷駅へ足を運んだ。
山手線とモノレールを乗り継ぎ、空港に到着したのは、九時過ぎ。
「搭乗時刻まで、だいぶ時間があるな。キャリーケースを預けて、カフェでまったりするか」
「うん。小腹空いちゃったよ」
二人はさっそくキャリーケースを預けて、空港内でカフェを探し始めた。
大手チェーンのカフェを見つけた二人は、眠気覚ましにブレンドコーヒーを注文し、優子はチーズケーキも追加で注文。
カフェの外に見える人の波を見やりながら、くつろいでいる。
優子は、スマートフォンに指先を滑らせながら、沖縄の観光スポットや、宿泊先を検索していた。
「沖縄…………楽しみだなぁ。ほら、こんなに海が綺麗なんだよ?」
彼女が顔を綻ばせながらスマートフォンを操作して、男に沖縄の空と海の画像を見せる。
「俺も、この目で海を見られるのが楽しみだよ」
拓人が、コーヒーカップを口元に運びながら、緩やかな笑みを映し出した。
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