テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「……何よ、それ」
私の口から、乾いた声が漏れた。
あんなに望んでいた先輩の本音。でも、それを聞いた今の私の胸にあるのは、喜びじゃなくて、言いようのない虚しさだった。
「嫌だって……そんなの、先輩の勝手だよ。私は、昨日あんなに泣いて、先輩を諦めようって必死に決めたのに。……私が離れていくのが嫌なだけでしょ? 私が好きなんじゃなくて、私に好かれているっていう『安心感』を失いたくないだけでしょ」
一歩踏み出すたびに、先輩がビクッと肩を揺らす。
「今の先輩は……ズルいよ。自分からは何もくれないのに、私が他の誰かを見るのは許さないなんて……。そんなの、お兄ちゃんでもなんでもない。……私、もう先輩の『妹』には戻れない」
凌先輩は何も言い返せず、唇を噛み締めて立ち尽くした。その横から、遥が冷ややかな視線を先輩に投げかける。
「聞いたかよ。……あんたのその中途半端な執着が、一番紗南を傷つけてんだよ。これ以上、紗南を振り回すなら……俺、兄貴だろうが容赦しねーからな」
遥は私の手を迷いなく握ると、呆然と立ち尽くす凌先輩を置き去りにして、歩き出した。