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#闇バイト
るしゅ
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油味噌
17
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翠
36
**『204号室へ来なさい』**
美咲のスマホに届いた一通のメッセージ。
送り主は。
母親だった。
その下には。
**『もう一人の兄弟の名前を教える』**
部屋の空気が止まる。
「……行くの?」
俺が聞く。
美咲は画面を見つめたまま、小さく頷いた。
「逃げても終わらない」
その言葉に。
俺も頷く。
「一緒に行こう」
玄関の前に立っていた男が静かに口を開いた。
「204号室に行くなら、一つだけ忠告しておく」
俺たちは男を見る。
「中で何を見ても、すぐに信じるな」
「どういう意味だ?」
「204号室は真実を見せる場所じゃない」
男はゆっくり首を振る。
「真実を選ばせる場所だ」
俺はその言葉の意味が分からなかった。
「お前は誰なんだ」
男は少し笑う。
「今は名乗れない」
「またそれか」
「でも、一つだけ教えてやる」
男は俺を見る。
「蓮は、お前を裏切っていない」
その一言だけ残して。
男は夜の闇へ消えていった。
「待て!」
追いかけても。
もう姿はなかった。
「……何なんだよ」
俺は拳を握る。
美咲が静かに言う。
「行こう」
俺たちは病院へ向かった。
夜の病院は静かだった。
昼間とは違う。
まるで誰もいない建物みたいだった。
受付の灯りだけがついている。
廊下を歩く。
足音だけが響く。
一歩。
また一歩。
二階へ上がる。
見慣れた番号が並ぶ。
201。
202。
203。
そして。
204。
俺は扉の前で止まった。
鍵は閉まっている。
ポケットから。
あの鍵を取り出す。
蓮が最後に持っていた鍵。
ゆっくり鍵穴へ差し込む。
カチッ。
乾いた音が響く。
「開いた……」
ドアノブを握る。
深呼吸する。
「行くぞ」
扉を開けた。
部屋の中は暗い。
前に来た時と同じ。
いや。
違う。
机も。
椅子も。
壁一面の写真も。
全部なくなっていた。
あるのは。
部屋の中央に置かれた一本のビデオテープだけ。
「……何これ」
美咲が近づこうとする。
「待って」
俺は腕を掴んだ。
「不用意に触るな」
その瞬間。
部屋のスピーカーから音が流れた。
『ようこそ』
俺は反射的に周りを見る。
「R!」
『違う』
またその言葉。
『今日は私が案内人だ』
男でも。
女でもない。
聞いたことのない声。
『ビデオを再生してください』
「断る」
俺は即答した。
『なら、君は何も知ることなく帰る』
沈黙。
美咲が俺を見る。
「悠真」
俺はテープを見つめる。
「……見るしかないか」
部屋の隅には。
古いビデオデッキが置かれていた。
俺はテープを入れる。
ガチャ。
機械がゆっくり動き始める。
砂嵐。
ザーッという音。
そして。
映像が映る。
病室。
日付は。
**2009年11月14日**
ベッドに横たわる母さん。
その横には父さん。
二人とも。
まだ若い。
看護師が部屋へ入る。
腕には。
赤ん坊を抱いていた。
「……俺?」
画面の中の父さんが笑う。
母さんも涙を流している。
その光景は。
どこにでもある。
幸せな家族だった。
だけど。
次の瞬間。
病室のドアが開く。
白衣の男。
そして。
美咲の母親。
部屋の空気が一変する。
父さんの笑顔が消えた。
白衣の男は。
赤ん坊を見つめて言った。
『時間です』
その一言だけだった。
父さんは。
赤ん坊を強く抱きしめる。
母さんは首を横に振る。
必死に何かを訴えている。
でも。
音声がない。
何を話しているのか分からない。
そして。
映像は突然止まった。
画面が真っ暗になる。
その中央に。
白い文字が浮かぶ。
**『選ぶのは、親ではない』**
その下に。
もう一行。
**『選ばれるのは、子どもだ』**
俺は息をのんだ。
「……どういう意味だ」
すると。
スピーカーから再び声が響く。
『君は今、入口に立った』
「入口?」
『これから知るのは』
少し間が空く。
『神谷家の秘密ではない』
俺は画面を見つめる。
『日本で初めてRが生まれた日だ』
部屋の空気が凍りついた。
俺と美咲は。
言葉を失った。
204号室は。
俺たち一家だけの秘密を隠していた場所じゃない。
もっと大きな。
もっと恐ろしい始まりを。
隠していたのだった。
(第五十五話へ続く)
コメント
1件
おお、第54話やばかった…! 「204号室は真実を見せる場所じゃない。真実を選ばせる場所だ」って男の言葉、めっちゃ重いし、結局ビデオで「日本で初めてRが生まれた日」って出たとき背筋凍ったわ。悠真と美咲の関係性もいい感じに深まってるし、続きが気になって仕方ない🔥 るしゅさんの構成力、毎回安定して刺さるわ…