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第4話:ファントムタグは沈黙する
NEO-V公式によるアナウンスが世界中のCOKOLOユーザーに通知された。
【LAST STRIDE シーズン14 開始】
新ステージ実装「ルミナス・キャニオン」
ファントムタグ選出確率に“エモーション・フィード”を反映
COKOLOのタイムラインが騒がしくなる。
“system_0”が初めて初期ファントムとして選出されたのだ。
【LAST STRIDE:ルミナス・キャニオン】
新ステージは、光と霧に包まれた岩山地帯。高低差が激しく、足場の不安定な構造が特徴。
タグを持つファントムは光を放ち、敵から常に追われ続ける。
そのファントムの姿――全身を漆黒に包んだ、無音の男。
背中に映る“system_0”のIDが、開始から10秒で全視聴者に表示された。
観戦画面のコメント欄が爆発する。
「え、system_0が初手ファントム!?誰が勝てるんだよ…」
「動きヤバい、静かすぎて怖い」
「追跡AIがついていけてない…」
【戦闘:沈黙の追跡劇】
system_0は、タグの光を最小限に抑える特殊スキルを起動し、
マップ内の暗所に滑り込んだ。ライフルは持たない。
手にしているのは音を消す近接ナイフとリフレクターブレードのみ。
敵が接近する。system_0は地形の起伏を利用し、
追跡ルートを逆算して“気配だけ”で動きを読み取る。
三人目の敵が仕掛けたグラビティトラップの直前、
彼は小石を蹴り、敵の視線をそらしてから一気に斬撃。
血の代わりに光が飛び、タグ保持者の姿が岩壁をすり抜ける。
「気配で読むとか、幽霊じゃん…」
「ファントムって“そういう意味”だったの…?」
【現実:シスケープ 開発セクション】
社員用モニターで社内の何人かが観戦していた。
開発チームの隅、ノートPCの前でユーヤはひとり、いつも通りの無表情で座っている。
「おい、見てみ。今期タグシステム、反応制御バグってるんじゃないか?」
「emotion-feed入れてから、精度落ちてない?」
彼らは知らない。
そのタグを一度も落とさず、30分逃げ切る“異物”が社内にいることを。
ユーヤの手元には、社外未公開のタグ選出ロジックが表示されていた。
【COKOLO:バーチャルカフェ《メロメロ堂》】
ステージ裏の個室で、コザクラはメロンソーダを飲みながら端末を見つめていた。
緑と赤のスーツ、羽根を模したピン留め、艶のある昭和メイク。
昭和アイドル風の笑顔の裏で、画面を見ながらつぶやく。
「お兄ちゃん……“飼い主たち”よりずっと静かに戦ってるのに、なんでバレないんだろうね」
「ってか、タグ持ってる間の逃げ方が、もう逆に推せるわ……」
COKOLOの空間ではすでに、system_0特集の話題がトレンド入りしていた。
【戦闘終了】
“system_0”
ファントム逃走成功:被弾 0、撃破 5、ログブレイクなし
ログアウトの直前、彼の仮想画面に表示された通知。
【emotion-feedback:異常増幅反応 - 内部評価超過】
【タグ反応エラー記録済み/上位管理者通知中】
ユーヤは表情を変えず、それを閉じた。
「感情が、タグに干渉してる……」