放課後の教室。窓際に座る私、野崎天は今日も柳瀬凛音のことを考えていた。
あの時の笑顔、少し照れる仕草、放課後に二人で帰るときの距離感……。
「はぁ……今日もかっこよかったなぁ……」
思わずため息をついた瞬間、背筋に冷たい気配が走った。
振り返る。誰もいないはずの教室に、白髪の少年が立っていた。
長い髪を右側で少し結び、黒い小さなリボンが揺れる。紫色の瞳……私だけに見えているらしい黒い翼が背中に隠れている。
「……え?誰……?」
思わず声が震える。少年は無言で私を見つめ、低く、冷たい声を放った。
「野崎天……今日で、お前の命は終わるはずだった」
は? 命が終わる? 意味がわからなくて、心臓が跳ねた。
「……は、はあ?なにそれ、冗談でしょ?」
思わず笑いを堪えながら言う。こんな変な子がいるはずない……よね?
少年は小さく肩をすくめ、少し困ったように笑った。
「手順……間違えた。だから、仕方なく守ることにした」
「守る……?」
まさか、私だけに見えて、しかも命を狙ってたのに、守るって……?
その時、窓の外でガラスを叩く音がした。
闇に蠢く陰。
少年はひらりと浮き上がり、黒い翼を広げた。夜空に溶け込むその姿に、私は息を呑む。
「安心しろ、野崎天。お前は俺が守る」
……本来なら私を殺すはずの存在が、今は私を守ると言っている。
しかも、どこかドジっ子な雰囲気で、真剣だけど、少し頼りなさもある。
その瞬間、私の心の片隅に、ふと違う気持ちが芽生えた。
「……なんで、こんな人、守ってくれるんだろう?」
目の前の少年____あずーる。
この奇妙な出会いが、私の17歳の毎日を、まるで恋みたいに変えてしまう予感がした。
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