再び捜索を開始する。罪悪感の消えた私はもうひとつの紙袋に手を伸ばした。こっちはなんだろう…雑誌が入ってる? みっちりいっぱい中身が入っているのではなくて、雑誌が2冊と手ぬぐいやキーホルダーみたいなものが入っていた。
雑誌はどちらとも旅行雑誌だった。建真の性格を考えると、こんな旅行雑誌を丁寧にとっておくとは思えない。彼は本は完全に電子書籍派で、特に雑誌が増えることをあまり好まない。ケチだから旅行雑誌なんか買わずにネット検索派。なのになんで?
もしかして中になにか浮気のヒントでも隠されてる?
ピピーンと思いつくのは私のレベルが上がって、賢さが増えたからだと思った。
雑誌をめくってみたけど…うーん、なんの変哲もないただの雑誌だ。当てが外れたかな?
「えっ?」
あるページを見て思わず声が出た。【彼氏と行きたい温泉宿】の特集コーナーにかわいい字で書かれた付箋紙が張り付けてあった。明らかに建真の字ではない。
(もしかして、これを書いたのは晴菜…?)
付箋紙には『♡♡お泊り候補♡♡』と書かれており、それは高そうな宿ばかりに貼られていた。思わずビリビリに破きたくなったが、盗み見たことがバレても困るのでそのまま調査を続ける。
雑誌を1冊見たら、完全に建真と浮気相手のデートコースが把握できた。しかしこれでは浮気した証拠にならない。うむむ…もっと決定的な証拠を残しておいて欲しいものだ。
他にもなにかないかな、と思っていたら玄関の方でガチャガチャと音がした。
――建真が帰ってきた!!!!
まずいぞどうしよう…。戦闘が始まる予感! 急いで雑誌類の証拠を片付けて紙袋を元に戻した。やばいやばいやばい! 見つかっちゃうぅぅぅ!!!!
このままだと本気でまずい!
俺の部屋でなにしてた、から始まって、ネクタイを部屋に移動させたことがバレた日には…!!
(どんな風に怒られるかわかったもんじゃない…!!)
私は焦った。建真はまっすぐこの部屋に向かってやってくる。
(こうなったら戦うしかないっ!!)
緊迫感のある音楽が渦巻き、私を包んでいる。あああもう怖いなあ…。
私は構えた。扉が開いて建真が部屋に入ってくる。まずは私が居たことに驚きの顔を見せるが、彼はすぐに般若の顔になった。
バトルへ突入! 建真があらわれた!
>たたかう
>にげる
>アイテム
>ぼうぎょ
>そのた
…どれが正解!?
えーっと…逃げるって言っても建真の部屋を出てもすぐ捕まるし、この選択肢を選んだらゲームオーバーよねっ!
「は? 紀美なにやってんの、俺の部屋で」
建真の先制口撃! しかし紀美は素早く身をかわした! ダメージ0!!
「おかえりなさい。さっき宅配便が届いたから、部屋に置いておこうと思っただけ。はい」
私はアイテムを使うことにした。(もちもの:建真の宅配便)
紀美は建真の宅配便を使った!
「そんなのリビングの上に置いときゃいいだろ」
建真は怒っているがそれ以上の攻撃はしてこない模様。
アイテムのお陰でピンチを切り抜けた!
「重要って書いてあったから大事なものかと思って…ごめんなさい」
そう言ってそそくさとその場を逃げ出し、戦闘離脱に成功。
戦闘をこなしたのだから、賢さのひとつくらいは上がったかな?
ふふっ。作戦勝ちね。
この調子でレベルを上げて、建真と離婚してやる!!
…でもその前に、資金調達しなきゃ。(泣)