テラーノベル
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15
Kai
日付が変わる前。
提灯の灯る居酒屋でサークルの友達と飲み会を開いていた。
酔いもほどほどにまわったころ、一人が話題をふった。
「シンさ、彼女つくんねぇの?」
「まだ一人でいいかな。ってかまずモテないし」
「嫌味か?モテモテのモテだろお前」
「好きな子にモテないの」
そんな思春期みたいな談笑を楽しむ。
最近このメンバーで遊べることが少なかったが、やはり楽しい。
気の済むまで飲んで、喋って、酔い潰れて。
バカみたいな飲み方をしてそれぞれ別れた。
調子に乗って飲みまくったせいで頭が痛い。
他と俺は家の方向が真反対なので、帰りはいつも一人ぼっちだ。
しばらく歩いていると、路地裏の奥から音が聞こえた。
気になり近づいてみると、やはり気のせいではなくちゃんと聞こえる。
恐怖心もあったが、好奇心に負けて一歩踏み入れた。
「…話通じんな…」
奥には、携帯を睨み付けている長髪の男が居た。
ピアスめっちゃついてるし黒髪長いしすげぇ怪しい。
ってかめちゃ怖い。
引き返そうとしたとき、運悪く振り替えられ目があってしまった。
サングラスをしている男は一瞬目を見開いたが、すぐに笑った。
「わぁ、聞かれちゃった?どこから聞いたん?」
意外と柔らかい口調の彼は、軽い足取りでこちらに近づいてきた。
「えっと…話が通じない…から…?」
「めっちゃ最後やんwよかったわ」
タートルネックの裾を引っ張りながらこちらの顔を覗き込む。
「…君、会ったことあるっけ?」
「は?」
全く記憶にないので、すっとんきょうな声が出てしまった。
そんな俺の反応を見た男は、一度寂しそうに笑ってから道へ出ていった。
少し胸に引っ掛かりを感じながら、俺も帰路へついた。
その翌日紅葉を見に散歩に出ていると、昨日の男が居た。
横にはもっと背の大きな男が居て、何やら話しながら歩いている。
気付かれないよう目をそらすも、相手にはバッチリ見つかった。
「あっ」
「…コンニチワァ…」
「…お知り合いですか」
「いや?昨日会っただけ。ねー?」
昨日見ただけなのにとってもフランク!
会ったってレベルでもないのに!
違和感を覚えつつ、通りすぎた。
そこまでは良かった。
そこまでは。
でもそれで終わらなかった。
翌々日も、別の場所で再開した。
その次の日も、その次の日も。
会うたびに表情が柔らかく…というか混乱に染まっていっている彼はなんだか面白かった。
ストーカーなわけではなさそう。
今日もまた会うのかな…と少し楽しみにしていると、当然の如く奇跡的に相席になった。
え、ただのカフェだよ?カフェに相席って機能あったの?
「わ、わー…またまた…」
「ですね…?最近毎日会ってません?」
「やね、怖いくらい会うw」
俺はブラックコーヒーを、彼はアイスティーを注文した。
「ブラック飲めんの?」
「はい、姉がブラック派だったんで」
「ほえー、すごいね」
「あなたは、えっと…飲めないんですか?」
言い方を考えてみたが思い付かなかったので、ドストレートに聞いてみた。
案の定一瞬笑顔が固まった。
「…の、飲めるよー、当たり前やん…」
絶対嘘だろ。
さっきから目あわないし。
クスッと笑うと、少し頬を膨らませた。
そんな表情するのか、この人は。
コーヒーのおかげか、心がポカポカした。
「あっそうだ…俺名前言ってませんでしたね」
「確かに、せやったね」
「坂野シンです」
「華井ジンですー」
今さらの自己紹介を済ませ、ついでに連絡先も交換した。
少し話をしていると、ジンさんは既に社会人で年上だと言うことが分かった。
全然1、2歳差くらいだと思っていたのに。
「シンくんはまだ大学生かぁ…若いね」
「いやいや…ジンさんこそ、20代後半なんて思わなかったです…すみませんすごい生意気みたいなっちゃって」
「気にしてへんよ?生意気ドンと来い!なっちゃって…」
ジンさんは照れたように笑う。
この人は、出会った時からずっと笑顔だ。なぜかは分からないけど。
一時間ほど話して、彼は用事があるらしくそのまま別れた。
ちゃんと話したのはこれがはじめてだったのに、とても楽しかった。
いつもより軽い足取りで、人混みの中を進んだ。
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