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日付が変わる前。
提灯の灯る居酒屋でサークルの友達と飲み会を開いていた。
酔いもほどほどにまわったころ、一人が話題をふった。
「シンさ、彼女つくんねぇの?」
「まだ一人でいいかな。ってかまずモテないし」
「嫌味か?モテモテのモテだろお前」
「好きな子にモテないの」
そんな思春期みたいな談笑を楽しむ。
最近このメンバーで遊べることが少なかったが、やはり楽しい。
気の済むまで飲んで、喋って、酔い潰れて。
バカみたいな飲み方をしてそれぞれ別れた。
調子に乗って飲みまくったせいで頭が痛い。
他と俺は家の方向が真反対なので、帰りはいつも一人ぼっちだ。
しばらく歩いていると、路地裏の奥から音が聞こえた。
気になり近づいてみると、やはり気のせいではなくちゃんと聞こえる。
恐怖心もあったが、好奇心に負けて一歩踏み入れた。
「…話通じんな…」
奥には、携帯を睨み付けている長髪の男が居た。
ピアスめっちゃついてるし黒髪長いしすげぇ怪しい。
ってかめちゃ怖い。
引き返そうとしたとき、運悪く振り替えられ目があってしまった。
サングラスをしている男は一瞬目を見開いたが、すぐに笑った。
「わぁ、聞かれちゃった?どこから聞いたん?」
意外と柔らかい口調の彼は、軽い足取りでこちらに近づいてきた。
「えっと…話が通じない…から…?」
「めっちゃ最後やんwよかったわ」
タートルネックの裾を引っ張りながらこちらの顔を覗き込む。
「…君、会ったことあるっけ?」
「は?」
全く記憶にないので、すっとんきょうな声が出てしまった。
そんな俺の反応を見た男は、一度寂しそうに笑ってから道へ出ていった。
少し胸に引っ掛かりを感じながら、俺も帰路へついた。
その翌日紅葉を見に散歩に出ていると、昨日の男が居た。
横にはもっと背の大きな男が居て、何やら話しながら歩いている。
気付かれないよう目をそらすも、相手にはバッチリ見つかった。
「あっ」
「…コンニチワァ…」
「…お知り合いですか」
「いや?昨日会っただけ。ねー?」
昨日見ただけなのにとってもフランク!
会ったってレベルでもないのに!
違和感を覚えつつ、通りすぎた。
そこまでは良かった。
そこまでは。
でもそれで終わらなかった。
翌々日も、別の場所で再開した。
その次の日も、その次の日も。
会うたびに表情が柔らかく…というか混乱に染まっていっている彼はなんだか面白かった。
ストーカーなわけではなさそう。
今日もまた会うのかな…と少し楽しみにしていると、当然の如く奇跡的に相席になった。
え、ただのカフェだよ?カフェに相席って機能あったの?
「わ、わー…またまた…」
「ですね…?最近毎日会ってません?」
「やね、怖いくらい会うw」
俺はブラックコーヒーを、彼はアイスティーを注文した。
「ブラック飲めんの?」
「はい、姉がブラック派だったんで」
「ほえー、すごいね」
「あなたは、えっと…飲めないんですか?」
言い方を考えてみたが思い付かなかったので、ドストレートに聞いてみた。
案の定一瞬笑顔が固まった。
「…の、飲めるよー、当たり前やん…」
絶対嘘だろ。
さっきから目あわないし。
クスッと笑うと、少し頬を膨らませた。
そんな表情するのか、この人は。
コーヒーのおかげか、心がポカポカした。
「あっそうだ…俺名前言ってませんでしたね」
「確かに、せやったね」
「坂野シンです」
「華井ジンですー」
今さらの自己紹介を済ませ、ついでに連絡先も交換した。
少し話をしていると、ジンさんは既に社会人で年上だと言うことが分かった。
全然1、2歳差くらいだと思っていたのに。
「シンくんはまだ大学生かぁ…若いね」
「いやいや…ジンさんこそ、20代後半なんて思わなかったです…すみませんすごい生意気みたいなっちゃって」
「気にしてへんよ?生意気ドンと来い!なっちゃって…」
ジンさんは照れたように笑う。
この人は、出会った時からずっと笑顔だ。なぜかは分からないけど。
一時間ほど話して、彼は用事があるらしくそのまま別れた。
ちゃんと話したのはこれがはじめてだったのに、とても楽しかった。
いつもより軽い足取りで、人混みの中を進んだ。