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たくさんの♡と💬本当にありがとうございます😭
ちょっと遅れちゃったけどゆるちて🥺
「なあ、あれ見ろよ」
昼休み、廊下で誰かがひそっと言った。
つられて視線を向ける。
その先にいたのは――いるまだった。
そして、その前に立ってるのは、見覚えのある上級生。
空気が、ちょっとおかしい。
「やっぱなんかやってんじゃね?」
小さな声が、後ろから聞こえる。
「お前さ」
上級生が、いるまの胸ぐらを軽く掴む。
「ガン飛ばしてんじゃねぇよ」
いるまは、何も言わない。
ただ、じっと相手を見てるだけ。
その目つきが、余計に空気を悪くする。
「ほらな、やっぱやべぇって」
周りのやつが、ひそひそと笑う。
(……違うだろ)
なぜか、そう思った。
理由はうまく言えないけど、
昨日までのやり取りが、頭に残ってる。
「なんか言えよ」
上級生の声が強くなる。
胸ぐらを掴む手にも、力が入る。
それでも、いるまは動かない。
手も出さない。
そのときだった。
「やめて」
小さな声がした。
見ると、少し離れたところに女子が立っている。
怯えた顔で、こっちを見ていた。
その瞬間。
いるまの視線が、ほんの少しだけ揺れた。
「……離せ」
低い声。
初めて、はっきり聞いた気がした。
次の瞬間、
いるまは、相手の手を払った。
強く見えた。
実際、少しよろけた上級生がバランスを崩す。
「っ……!」
周りがざわつく。
「ほら、やっぱり――」
誰かが言いかける。
でも。
いるまは、それ以上何もしなかった。
ただ一歩下がって、
「……関係ないだろ」
それだけ言った。
怒鳴るわけでもなく、
ただ、低く。
さっきの女子の方を見る。
「……大丈夫か」
それだけ。
女子は小さく頷く。
空気が、変わる。
でも、完全には変わらない。
「でも今の見た?」
「普通にやばくね?」
そんな声も、ちゃんと残ってる。
(……やっぱり)
俺は、その場から動けなかった。
さっきの一瞬。
たしかに、“怖い”って思った。
でも、それと同時に――
(あいつ、ずっと手出さなかったよな)
あの状況で、
やろうと思えば、もっとやれたはずだ。
なのに、やらなかった。
見えてるものと、
実際の中身が、
少しだけズレてる気がした。
気づいたら、足が動いていた。
「いるま」
名前を呼ぶと、少しだけ驚いた顔をする。
「……何」
「さっきの」
言葉が詰まる。
うまくまとまらない。
「……あれ、別に」
いるまが先に口を開く。
「いつものことだし」
そう言って、目を逸らす。
「違う」
思わず、強く言ってた。
「そういうのじゃなくて」
「……は?」
少しだけ、眉が動く。
「ちゃんと見てたから」
自分でも、何言ってるかわからない。
でも、
「……なんか、違うだろ」
沈黙。
「……変なやつ」
ぼそっと、いるまが言った。
それ、たぶん悪口じゃない。
少しだけ、
ほんの少しだけ、
距離が縮まった気がした。