テラーノベル
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それからの日々は、すぐに全部が変わったわけじゃなかった。
翔太の中にはまだ「怖い」が残っていたし、ふとした拍子に呼吸が浅くなることもあった。夜になると不安で眠れなくなる日もあった。
それでも――
病室の空気は、少しずつ変わっていった。
辰哉はできるだけ短い時間でも顔を見に来た。
「今日ね、コンビニで変なパン見つけたんだ」
そんな他愛もない話を置いていく。
翔太は最初、反応も薄かったけれど、ある日ほんの少しだけ口元が動いた。
照は不器用なまま、隣に座る時間を増やした。
無理に話しかけない。ただそこにいる。
それが翔太には思ったより落ち着いた。
康二は相変わらず明るく振る舞おうとして空回りするけど、
「翔太おると、なんか安心するわ」
とぽつりと言った日、翔太は小さく瞬きをした。
亮平は一番変わらなかった。
毎日のように話しかける。
返事がなくてもいいと思っているみたいに、ずっと隣にいる。
「今日ね、ちょっとだけ空がきれいだったよ」
そんな話をするだけの日もあった。
翔太は最初、ずっと黙っていた。
でもある日、ほんの小さな声で、
「……見てない」
とだけ返した。
亮平は一瞬固まって、それから少し笑った。
「そっか。じゃあ今度一緒に見よ」
その“今度”が、翔太の中に少しだけ残った。
夜。
翔太はまだ眠れないことが多い。
でも、看護師が「家族来てますよ」と言うと、
以前のような恐怖ではなく、少しだけ胸が動くようになった。
ある日、翔太はふと辰哉の服の袖をつまんだ。
小さな声で。
「……今日、ちょっとだけ、怖くない」
辰哉はすぐに大げさに喜ばなかった。
ただ静かに頷いた。
「そっか」
「それでいいよ」
その返事が、翔太にはちょうどよかった。
少しずつ。
ほんの少しずつ。
「見てくれるかもしれない」
その感覚が、翔太の中に戻り始める。
まだ完全じゃない。
まだ揺れている。
それでも――
ひとりで抱えていた時間とは違う場所へ、
翔太はゆっくりと歩き始めていた。
#さくあべ
がぅ
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コメント
9件


少しづつだけど 凝り固まった心が溶けていっている。 表情と返事がちょっとずつ出てきているのが良いです 続き待ってます♪
しょたシナさん、こんにちは〜!美月ゆめかです🌸✨ 第18話めっちゃ沁みた……😭💕 “扉”ってタイトル、まさに翔太が少しずつ開き始めた心の扉だよね。亮平の「今度一緒に見よ」とか、辰哉の「それでいいよ」とか、友達みんなが翔太に合わせた距離感で優しくて泣ける……🫂💦 無理に変えようとしないで、ただそばにいて、小さな反応を待つってすごく愛だなって思った。“見てくれるかもしれない”っていう感覚が戻り始めたラスト、めっちゃ希望だった……! 次も絶対読みます!よろしくお願いします⋆♡