進とマリーはリーヨンに到着し、冒険者ギルドに足を運んでいた。
建物の大きさは、市民図書館くらいで木造の作りになっている。
中に入るといくつも円卓のテーブルがある。
十数人の冒険者がクエストの受注やクエスト達成を目指し、戦略を練っているようだ。
鑑定のスキルで冒険者達を見ると、レベル的には20~40位となっている。
冒険者たちは装備が様々でそれぞれ戦闘スタイルが違うのだろう伺える。
「早速、受付に行ってみようか―――」
「受付はあっちみたいですよ。」
マリーが受付の方を指差す。
「すいません―――」
「こちらには初めて来たんですけど、冒険者に登録したいです。」
「はい、新規の方ですね。」
「ではこちらの資料を読んで、読み終わったらお名前を書いても貰えますか。」
そう言われて手渡された資料は、冒険者になった後の同意書のようなものだった。
「基本的にクエストによって負傷した場合は、自己負担で当たり前だけど保険みたいのはないんだな。」
冒険者自体が便利屋のようなものみたいで、報酬の何割かをギルドに手数料という形で差し出さないといけないみたいだ。
また、クエストで失敗した場合や請け負ったクエストを打ち切りたいとなった場合は違約金が発生するようだ。
その分、クエスト事態の成功報酬は高めに設定されていた。
上手くいけばかなり稼げそうな職業というのが実態である。
「お姉さん、冒険者になるためには試験とかないのか?」
「昔はそう言った試験をしていたのですが、今のギルドマスターの意向で、そういった試験の類は現在はありません。」
「誰でもなれる分、初心者や自分の実力に自身のない方は、ある程度の料金を払ってBランクやAランクの人に戦闘訓練を受けることも可能になりました。」
冒険者になるための敷居を下げて、その分教育に力を入れているといったところか―――
なかなかそのギルドマスターはやり手なのかもしれないな。
オレとマリーは一しきり手渡された資料に目を通し、お互いで注意点を確認し合った。
マリーはこの世界の文字が読むことができないみたいなので、代わりに読んであげた。
「この世界には文字が読めない人が多いんじゃないか?」
「そういう人にはこの資料はどうしているんだ?」
受付のお姉さんに聞いてみた。
「文字の読めない方には私たちの方で呼んで差し上げてますよ。」
「名前も代筆で私たちが記入しています。」
「なるほど。」
「教えてくれてありがとう。」
そう言って彼女にオレとマリーの名前を記入した紙を提出した。
「冒険者のランクはEランクからスタートします。」
「ランクはEからAの順で高くなっていきます。」
「ランクが上がれば上がるほど、高難易度のクエストを受けることができ達成報酬もその分高くなっていきます。」
「ランクAの上にはSランクがありますが、この世界にSランクは数人しかいません。」
「Sランクは英雄と呼ばれる程の方たちですね。」
彼女は、笑顔で詰まることなくスラスラとSランクの説明をしてきた。
手慣れている。
「Eランクの方はまず、手頃なクエストを受けて上のランクを目指していくようにしましょう。」
「ススム様とマリー様は、ギルドカードを発行しますので、しばらくそこのテーブルでくつろいでいてください。」
そう言って、彼女は受付の奥に行ってしまった。
「お言葉に甘えて、くつろぐか。」
「そうですね。」
オレとマリーはギルド内のテーブルでくつろぐことにした。
どのくらい待てばいいんだろうか―――?
そんな考えを持ちながら。
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