「――嫌われたかも知れない」
「そんなことないと思いますよ。好きっていわれて、嫌な人間はまあ、いないと思いますから。100%とはいいませんけど」
「瑞姫、フォローになっているのか、それ」
カフェテリアで、後輩二人に慰められている。先輩として格好悪いと思いつつも、誰かに慰めて欲しいな、と弱い自分がでてしまい、二人に話を聞いて貰っていた。同学年に、話を聞いてくれる人はいないのかときかれたら、話したいと思えるような人がいない、と回答する。別に、悪い人ばかりじゃないし、俺の事を頼ってくれる人が多いけど。でも、何というか、同輩よりも、先輩よりも、後輩二人の方が安らいだのだ。まあ、もう就職してしまっている先輩の一人には凄くお世話になった記憶はあるけれど。
そんな感じで、二人に、この間あった出来事について、嘘偽り無く話せば、あずゆみ君は優しくフォローしてくれたが、ちぎり君は相変わらずストレートに、ズバッと言ってきた。それが、心にグサリと刺さって痛かったが、いっていることは正しいので、それ以上は何も言えなかった。
「それで、OKは貰えたんですか。先輩にしては頑張った告白だったんでしょう」
「うう……それが『家に持ち帰って検討します』だって言われた」
「これは、脈ありなのか。瑞姫」
「さあね」
あずゆみ君は、この手の話には疎いから、全然力になれないといった感じに肩を落としていた。聞いてくれるだけで、ありがたいのに、力になろうとしてくれるあずゆみ君の優しさに心を打たれつつ、面白そうに危機ながらも、所詮は他人事、というスタンスを貫くちぎり君は、彼らしいな、と思う。でも、この手の話題は、ちぎり君は得意だろう。人の意見に流されないところとか、感情的な分析じゃなくて、客観的、心理的分析が出来るところは、彼の強みだとも思っている。ただ、ストレート過ぎて、人のことを気遣っているかと聞かれた、そこまで気遣ってはいないのだろう。まあ、気遣う必要性がない、と彼は捉えているのかも知れないし。
「ただ、その場でノーと言われなかったんですから、少しは期待して良いんじゃないですか」
「うっ……そうかもだけど」
「人間誰しも、自分に自信が無いものですし、先輩の心情は分からなくはないんですけどね。何か、面倒くさい人だって思います」
「ぐっ……」
「おい、瑞姫……ッ! 瑞姫が、すんません、先輩」
「う、いや……その通りだから。大丈夫、あずゆみ君。ありがとう」
女々しい、面倒くさい。そんなのは分かってる。でも、勝手が分からなくなるっていうのも、誰かに理解して欲しかった。
初めての恋。
いつから恋だったかとか、気付けていないけど、気付けば単純な可愛いから、格好いいに、好きに、恋になっていた。ただそれだけの話。だからこそ、どうすれば良いか分からなかった。
まだきっとゆず君とのあの関係は継続されている。もう、すっかりどうしてゆず君と知りあったとか、今関係が続いているのか分からなくなってきていたけれど、きっかけは、俺が彼の忘れ物を届けに行ったことから。そして、そこからゆず君のBL小説のモデルになるって『お願い』を聞いて。
「はあ……」
「先輩、滅茶苦茶痛い音しましたけど、大丈夫ですか!?」
ゴンと、頭をぶつけて、俺は、それでも大丈夫だとあずゆみ君に伝える。彼は、あたふたしていたが、責任転嫁をし「おい、瑞姫も何か言え」と彼に助けを求めていた。何やかんやいって、二人は仲が良いんじゃないかと思ってしまう。ちぎり君の一方通行なんかじゃないって、思わされるような気もして、少し微笑ましい。ただの友人関係なんだけど、それが尊く感じてしまう。今の俺には眩しいかも知れない。
「先輩はどうなりたいんですか?」
「へ?」
「好きって告白しただけでしょ? だから、その先どうなりたいかって、言語化してみたら良いんじゃないですか。好きって伝えて、それでいいなら、それでもいいですけど。恋人になりたいとかいう願望があるなら、言うだけいってみれば良いじゃないですか」
「ちぎり君」
「僕のアドバイスなんて役に立たないと思いますけどね。ああ、あとほら、祈夜柚大学にはいってないらしいですけど、今度の学園祭に呼んだら来るんじゃないですか? 学園祭って、カップル出来やすいですからねえ。まあ、イベントごとで付合ったカップルが長続きしたとは聞きませんけど」
と、最後の方は聞き取れなかったのだが、ちぎり君に言われて、学園祭のことを思い出した。
そういえば、ゼミで何かやるって言っていた気がしたのだ。
「ごめん、ちょっと思い出した。二人ともごめん、また相談乗って欲しいっていうかもだけど、席外すね」
「あ、はい。先輩」
「どーぞ、先輩」
後輩二人に見送られながら、俺は、集合時間ギリギリに、指定された教室に滑り込み、学祭の話を聞くことになった。
もし、ちぎり君が言ってくれなければ、完全に忘れていただろう。良いタイミングでいってくれたと、本気で感謝している。
(学祭か……呼んでみるだけ、呼んでみようかな……)
こんな状況で呼べるかどうか分からないけれど、メッセージとか……でも、直接会う方が良いか、など考えながら、話を聞き流し、俺は窓の外を見た。青い空に一直線に飛行機雲が尾を引いていて、少し眩しかった。
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