コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
CASE 四郎
一郎からある程度の経緯を聞いた。
俺は二郎に向かって、黒染めの箱を投げた。
「二郎、髪染めてくれるか?」
「分かったよ。四郎…、1人で行くつもりだよね。」
「あぁ、二見の狙いが俺とモモなら俺だけ行く。」
「ダメだよ!!」
俺と二郎の会話を聞いていたモモが大きな声を出した。
「四郎1人はダメ!!六郎の事も皆んなで助けないとダメなの!!」
「そうは言っても、二見の狙いは俺とモモだ。モモを連れて行ったとしても、六郎を解放するかは分からない。」
「六郎は私の好きな人だから、その二見って男は殺す。」
モモの言葉にゾッとした。
「六郎はお兄ちゃんに会わないとダメなの。六郎は私に優しくしてくれた。お風呂を入れてくれたの、だから六郎を傷つけた男を殺す。私がいつも通り殺す。」
いつも通り…?
あの時と同じようにJewelry Wordsを使って、殺すのか…?
「それは駄目だ。」
そう言ったのはボスだった。
「話は一郎から聞いた。九龍会は掟に背いて薬を売買してる証拠は手に入った。一郎、四郎、2人で六郎を迎えに行ってもらう。」
「私も行くの!!」
「モモちゃん、それは出来ない。君を危険な場所には行かせられないし、行かせる気は…。」
ガタンッ。
ガタガタ…。
リビングの家具達が揺れ始めた。
モモに視線を向けると、長い髪がフワッと浮いていた。
「おじさん、止めるなら殺す。」
「頭、これは…。」
「Jewelry Wordsの能力…いや、暴走しかけているのか…。」
伊織とボスの会話が聞こえ、再びモモに視線を向ける。
モモの表情は怒りに満ちていた。
コイツも六郎の事が心配なんだな。
「四郎が行くなら私も行く、六郎も助ける。四郎は強いから負けないもん!!!」
ガシャーンッ!!
ガタガタ!!
皿の割られる音と、家具の揺れが激しくなった。
「モ、モモちゃんっ?!お、落ち着いて…。」
二郎は慌てて、モモを宥めようとしたが二郎の言葉は届いていなかった。
俺は溜め息を吐きモモに近寄る。
「モモ。」
俺がモモの名前を呼ぶと、家具の揺れが止まった。
「付いて来るなら、俺の足手纏いになるな。1人で
勝手な事をしない、側を離れないって約束出来んのか。」
「四郎!?何、言ってるか分かってんのか?」
「こうでもしないとモモが暴走するだろ、伊織。」
「そうだが…、モモちゃんを連れて行かない事は頭の命令でもあるんだぞ。」
「じゃあ、ボスを殺されても良いのか。六郎の事も見捨てんのか。」
俺はそう言って、伊織を見つめる。
「四郎の側を離れないって約束する。私の事を使って良いから付いて行きたい。」
「…、ボス。どうしますか?」
「モモちゃんを連れて行くなら兵頭会総員で九龍会に行く。九龍会と話を付ける。」
「分かりました。俺達も六郎を迎えに行く準備をします。三郎と五郎に連絡して、七海。」
俺とボスの会話ん聞いた二郎は七海に声を掛けた。
「了解。」
「四郎は風呂場に行くよ、髪を染める。」
「あぁ。」
「私も行く。」
「いや、見てても面白くねーぞ。」
「いいの!!」
「へいへい。」
こうなったモモは意地でも付いて来る。
二郎もそれは分かっているようで、モモを連れてリビングを出た。
俺も続いてリビングを出ようとしたがボスに呼び止められた。
「四郎、モモちゃんから目を離すなよ。絶対にだ。」
その言葉は今まで聞いた言葉よりも重かった。
ボスがモモの事を大事に思っている事がよく分かる。
「分かりました。ボスの命令です、必ず守ります。」
俺はそう言ってリビングを出た。
リビングに残された一郎達は兵頭雪哉から作戦を聞いていた。
「六郎がいるのは、九龍会の本家だと思われます。五郎の情報ですので間違いはないと思いますが…。」
「九龍会の本家には…、地下室があったはずだ。そこに監禁されている可能性は高いね。」
カタカタカタ。
岡崎伊織の言葉を聞いた七海は、パソコンのキーボードを叩く。
「ボス、二見がー。」
一郎は二見瞬に言われた言葉を兵頭雪哉に伝えた。
その言葉を聞いた兵頭雪哉、岡崎伊織、七海は驚いた。
「は、はぁ?ちょっと、待って…。それって、本当なわけ?」
「あぁ。」
七海は信じられない気持ちで、一郎に尋ねた。
「嘘っでしょ…?僕でも探せなかったのに、こんな身近にいたの?ねぇ、ボスは知ってたの?」
「まぁな。それが契約の条件だったからな。」
「条件…って?一郎とボスは僕達に何かを隠してるの?」
「話す時が来れば話す。まずは、六郎と九龍会の問題だ。九龍会の組員総出で、俺達を迎え撃つだろう。」
兵頭雪哉はそう言って、煙草に火を付けた。
「二見瞬は俺に殺らせて下さい。じゃないと、この怒りが収まり切らない。」
一郎の眉間に強い皺が入る。
「一郎、それは殺し屋としての意志か。」
「…。殺し屋としては失格だと思います。今回の意志は俺自身の物です。」
「そうか。」
一郎の言葉を聞いた兵頭雪哉は、白い煙を吐き出した。
「伊織、三郎の行方は分かったか?」
「いえ…、まだ行方は分かってはいないです。」
「ボス、三郎の事ですが…。三郎の部屋にこの写真が落ちていました。」
スッ。
テーブルの上に1枚の写真を一郎は出した。
その写真を見た、兵頭雪哉と岡崎伊織は驚いていた。
「こ、この写真をどこから見つけた?」
「いや、三郎の部屋に落ちていただけなので…。」
「…。三郎の奴、行方をくらました理由が分かったよ…。」
岡崎伊織は溜め息を吐いた。
「ねぇ、どう言う事。」
三郎はそう言って、男に銃口を突き付けた。
「六郎が九龍会の二見に捕まったって、どう言う事。」
「俺も知らなかった。まさか、二見が君達の事を知っているとは、思わなかったんだ。」
「六郎を助けに行くよ。四郎とモモちゃんが狙いみたいだし、四郎が危ない。」
「三郎君、四郎君が大切なら今は動かない方が良い。」
その言葉を聞いた三郎は、眉間に皺を寄せた。
「どう言う事。」
「六郎ちゃんが九龍会の本家にいるのは間違いない。だが、そこに二見瞬はいない可能性が高い。いや、寧ろこれは一郎君を殺す為の罠だ。」
「一郎を殺す事が目的なの?何で、四郎じゃなくて一郎なわけ?」
「それはー。」
男の言葉を聞いた三郎は驚いた。
「二見瞬と椿の狙いは君達、Hero Of Justice (ヒーロオブジャスティス)を1人ずつ殺す為だ。それが兵頭雪哉にとってもダメージが大きいからね。椿ならそうする。」
「じゃあ、一郎を見捨てて黙って見てろって事?俺にメンバーを見捨てろって?」
「俺の友人の警察を送る。九龍会の会長、組員を拘束する。」
「その情報はボス達には流すよ。」
「あぁ、構わない。俺の事は伏せてね。君には二見瞬を殺す時に出て貰う。その時が四郎君が危ないからね。」
「四郎が助かるなら、俺は何でもするさ。」
「君はどうして、そこまで四郎君に出来るのかな。」
男の問いに答えてるように三郎は銃口を下ろした。
「俺を救ってくれて、生きる意味をくれたからだ。アンタは復讐の為にここはまで時間を掛けれるんだな。」
「確実に椿を潰す為だ。あの人を、拓さんを殺し俺の家族を殺したアイツを潰す為だ。」
「殺せると良いね。」
三郎はそう言って、煙草を咥えた。
CASE 四郎
鏡に映ったのは、真っ黒になった髪の俺だった。
モモはキラキラした目で俺を見ていた。
「似合う!!カッコイイ!!黒い方が良い!!」
「確かに、黒い方が良いじゃん四郎。」
「そうか?」
二郎とモモは俺の黒髪を推している。
俺は適当に服を着替え、モモに紫外線カットの服を渡した。
「ボス、お待たせしました。」
リビングに入ると俺達の武器が既に用意されていた。
「昔に戻ったんじゃねーか?四郎。」
「おー、幼くなったなぁ。」
ボスと伊織は物珍しそうに俺の黒髪を見て来た。
「三郎から連絡があったよ。どうやら警察も九龍会に行くみたい。やっぱり薬を売買してた情報が警察にも流れてたみたいだよ。それと、今回の狙いは一郎を殺す事みたい。」
三郎が七海と連絡を取ったのか…。
一郎が狙い?
「俺とモモじゃなくて、何で一郎?」
「椿と二見の狙いが僕達を潰す事だって、三郎が。」
「じゃあ…、二見瞬が本家にいない可能性が高いのか…?」
俺がそう言うと、モモが口を開けた。
「いる。」
「感じるのか。」
「うん。」
モモがモモにしか分からない、Jewelry Pupil同士にしから分からない何かがある。
それを察知したと言う事は、Jewelry Pupilがいると言う事だ。
「頭、今回は俺が四郎達を連れて行きます。」
そう言ったのは伊織だった。
「頭にはまだ捕まってもらっては困ります。まだ、始まったらばかりですから。それに、警察にあれこれと調べられても面倒だ。殺して良いのなら俺が仕事をして来ます。」
伊織は今ではボスの右腕をやっているが、俺達を育てた殺し屋だ。
仕事と言うのは殺しの仕事だろう。
伊織が殺しの仕事に戻るのは何年か振りだ。
「伊織、九龍彰宏(くりゅうあきひろ)を本家に連れて来い。それ以外の組員は殺せ。」
「承知しました。」
伊織は星影(ほしかげ)に連絡をし、ボスを迎えに来るように指示した。
「お前等、行くぞ。」
カチャッ。
銃を懐にしまい、伊織は俺達に指示をした。
俺達は自分の愛銃と武器を持ちリビングを出た。
車の運転は伊織がするらしく、俺達は続々と車に乗り込む。
ここから大阪までは約6時間。
俺達は車の中で準備をしていた。
「五郎は九龍会の本家を遠くから見てるって。スナイパー位置に付いてるって。」
七海がパソコン画面を見ながら言葉を放った。
「五郎には援護射撃を頼んである。まだガキだが、腕はそこらの奴より良い。」
「その言葉、本人に言ってやれよ。」
「調子に乗るから言わない。」
俺の問いに伊織はそう答えた。
「六郎…、大丈夫かなぁ…。」
「モモちゃん、六郎は弱くないよ。あの子は強い子だ。だけど、急いだ方が良いね。」
ブゥゥゥゥン!!
車のスピードを上げ急いで向かった。
東京警察署ー
警察署内はバタバタと人が行き交いしていた。
「急いで、九龍会に行くぞ!!」
「マル暴を呼んで大阪に向かわせろ!!」
「八代(やしろ)、櫻葉(さくらば)、お前等も大阪に向かえ!!早急にだ!!」
「「了解。」」
八代和樹(かずき)、櫻葉裕二(ゆうじ)は指示を受けた後、車に乗り込んだ。
ブー。
八代和樹のスマホが振動した。
「和樹、スマホ見ないのか?」「あ、悪い。」
八代和樹はスマホに届いたメッセージを見て溜め息を吐いた。
「アイツからか。」
「あぁ、警察に情報を流したのもそうだ。俺達を九龍会本家に向かわせる為にな。」
「はぁ、俺達の事を使い過ぎだろ!?」
「今回は厄介だ。」
「なら、行こうぜ。大体、俺達に連絡して来る時は大抵はヤバイ時だし。」
「あぁ、兵頭雪哉の所の女の子が拐われたようだ。」
「マジ?」
「あぁ、二見瞬がな。」
ブゥゥゥゥン。
「兵頭雪哉…は、アイツが生きてる事を知らないよな。」
「だろうな。」
「早く行こうぜ。」
「あぁ。」
八代和樹と櫻葉裕二は車で大阪に向かった。