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鬼ヶ島での観光アピールが始まった。ジョセフはパワースポットの桃太郎を祭った神社を訪れ
神聖な雰囲気に心を洗われた。続いて、白い砂浜ビーチでのマリンスポーツを体験し
爽快な風を感じながら波と戯れた。次第に昨日の悪夢のことなどすっかり忘れ、
観光を楽しむジョセフの顔には笑顔が戻っていた。
その日のハイライトは、桃次郎も参加しての絶景の夕日をバックにした
シャンパンでの乾杯シーンだった。カメラマンがシャッターを切る中、
黄金色の夕日が海に溶け込み、ジョセフと桃次郎がシャンパングラスを掲げた。
「ジョセフさん、私はこれから仕事がありますのでごゆっくり」と言い残し、桃次郎は席を立った。
ジョセフとポテトはシャンパンとキャビアを堪能し、
満ち足りた表情を浮かべていた。そんな時、秘書が近づいてきた。
「ジョセフ様、お酒の余興にぜひ鬼たちのダンスをご覧ください」と微笑みながら言った。
その瞬間、照明が暗くなり、鬼たちのファイヤーダンスが始まった。
鬼たちの迫力あるダンスに、ジョセフとポテトは圧倒され感動した。
「すごい迫力です~」とポテトが興奮して言うと、ジョセフも「本当にすごいな」と感嘆の声を上げた。
次に登場したのは女性の鬼たちで、鬼の舞を披露し始めた。
子供の鬼たちも集まり、みんなで踊りを楽しんでいる。
その中で、ジョセフの目に一際目立つ子供の鬼が映った。「どこかで見た鬼...」
その鬼の首には深い傷跡が残されていた。ジョセフの心臓が一気に高鳴った。「あ、あの子は...?!」
驚愕したジョセフは椅子から転げ落ち、ガシャンとシャンパングラスが割れ、
会場は静寂に包まれた。鬼たちの動きが止まり、心配そうに見つめる視線が集まる。
秘書が急いで近づき、「どうなさいました?」と尋ねた。
ジョセフは呆然とした表情で、「あ、あれは夢じゃなかったのか..」と呟いた。
その子供の鬼がジョセフを睨んでいるようで、恐怖が彼の心を支配した。
ジョセフはすぐさまホテルに戻ることを決意し、ポテトを連れて会場を後にした。
ジョセフがホテルに戻ろうとするその瞬間、秘書が慌てて声をかけた。
「ジョセフ様、夜は危ないので私達から離れないでください!」
ジョセフは振り返り、険しい表情で秘書を睨んだ。
「危ないとはどういう意味だ!危ないのはお前らのほうだろう」と言い放ち、足早にホテルへと戻った。
部屋に戻ると、ジョセフはすぐにポテトに向かって問いかけた。
「ポテト、昨日の夜のこと覚えているか?」
ポテトは首をかしげ、「昨日?昨日は夕食を食べて..そのあとどうでしたっけ?」と曖昧な返事をした。
ジョセフは深呼吸しながら話し始めた。
「俺たちは繁華街に出たんだ。そこで、鬼の血を飲まされるところだったんだよ。」
ポテトは困惑した表情を浮かべ、「先輩、何言ってるんですか?」と答えた。
ジョセフは決意を固めた眼差しでポテトを見つめ、「すぐにここを出よう」と言った。
「なぜですか?こんな楽園みたいなところなのに」とポテトは反論したが、
ジョセフは首を振った。「直ぐに出た方がいい。俺の直観がそう言っている!」
ジョセフは迅速に荷物をまとめ始め、ポテトも仕方なくそれに従った。
二匹は誰にも見つからないように、こっそりと非常階段を使ってホテルを抜け出した。
ホテルの外に出ると、夜の冷たい風が二匹の顔に吹き付けた。
ジョセフは一瞬立ち止まり、深呼吸をした。「ここから離れれば安全だ」と自分に言い聞かせるように呟いた。
ポテトはまだ半信半疑の様子で、「先輩、本当に大丈夫ですか?」と尋ねた。
ジョセフは力強くうなずき、「大丈夫だ、これで俺たちは自由だ」と言った。
二匹は暗闇の中、次の目的地へと歩き出した。
ポテトは不安そうにジョセフに問いかけた。「でも、海に囲まれているこの島でどうやって逃げるんですか?」
ジョセフは決意を込めて答えた。「朝まで隠れて、定期便に紛れ込んで逃げよう。とにかく、この島はイカれてるんだ。」
二人は静かに船着き場へと向かった。しかし、そこに着くとすぐに声を掛けられた。「おめーら、どこぞの者だ?」振り向くと、鬼が立っていた。
ジョセフはこの島の鬼たちが友好的であることを知っていたため、冷静に返事をした。
「やあ、俺たちはこの島から出たいんだ。どこか隠れる場所を探していてね。」
鬼は驚いたように聞き返した。「この島を出るだと?」
ジョセフは頷いて答えた。「そう、用事があって帰らないといけないんだ。」
しかし、鬼の表情が一変し、ものすごい形相で問いただした。「お前、調印式の客人か?」
ジョセフは一瞬戸惑いながらも答えた。「あ、ああ。でもその話はなかったことに..」
その瞬間、鬼は持っていた棍棒を振り下ろしてきた。
「なにぃ!!」ジョセフは間一髪でそれをよけた。ジョセフとポテトは震えながら後退した。「な、なぜ?」
鬼は怒りを露わにし、「許せねえ!俺たちの島を!!」と叫んだ。
再び棍棒を振り下ろそうとしたその時、ジョセフとポテトにまぶしいライトが当たった。
「なんだ?!」ジョセフは目を細めてライトの方を見た。ライトの影から現れたのは、秘書だった。
秘書は冷徹な目でジョセフを見つめながら
「危ないと言ったでしょう。ここら辺は野良鬼が出ます。勝手な行動は命を落としますよ。」
ジョセフは驚きと恐怖で声を震わせながら「の、野良鬼?」
その瞬間、鬼が秘書の顔を見ると、牙をむき出しにして怒りを露わにした
秘書は冷静に説明を続ける。「反抗する者が時折現れるのです。しかし、
私たちの管理下にいる限り安全です。」そう言うと、秘書はポケットから小さなスイッチを取り出し
それを押した。その瞬間、隣にいた鬼に猛烈な電気が走り、鬼の怒号が響き渡った。
「ぐぁああああ!」ジョセフは恐怖で後ずさりし、「ひぃ!」と叫んだ。
鬼はそのまま倒れ、動かなくなった。秘書は冷ややかに「連れて行け」と命じ
部下たちが素早く動き、鬼を連れて行った。
秘書はジョセフに向き直り、「さあ、ジョセフ様。戻りましょう」と言った。
ジョセフはまだ動揺が収まらない。「しかし、どうしてここが…?」
秘書は微笑みながら答えた。「あなたはすばらしい後輩をお持ちですね。」
ジョセフはその言葉に驚きと疑念を感じ、「ま、まさか」と呟いた。その時、
ポテトがゆっくりと秘書の隣に歩み寄り、静かに座った。
ジョセフの心は混乱していた。「ポテト、どういうことだ?」