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10 - 第7話:命の見世物市

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2025年11月15日

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第7話:命の見世物市
市民区の大通りは、鮮やかな光の幕で飾られていた。

ビルの壁面には巨大な広告が映し出され、そこには「今月の新種ペット」「家庭に癒しを!」という文字と共に、小さな生き物たちの映像が流れていた。


露店の前に立つフォージャーは、丸顔の中年男。

背は低く、丸めた背中にだぶついた緑の上着を羽織り、額の第三の眼は宝石のように装飾されていた。

彼の名はモルク。

短い赤褐色の髪を乱しながら、笑みを浮かべる。

「さあ見ていっておくれ! 新配合の“しっぽ光ネズミ”! 子どもに大人気だよ!」


ケージの中には、小さなネズミのような生き物が跳ね回っていた。

尾が光を放ち、振るたびに虹色の残光が揺れる。

子どもたちは歓声を上げ、親たちは財布を取り出す。


「命を買って、持ち帰る……か。」

クオンは市場の片隅に立ちながら、灰色の瞳を細めた。

彼の装いは旅人らしい黒い外套に長靴、額の第三の眼は淡い光を宿していた。

周囲の浮かれた人々と対照的に、その姿は場違いに冷ややかだった。


群衆の中には、若い女性のフォージャーの姿もあった。

明るい桃色の髪をツインに結び、黄色の短いワンピースを纏った少女──リュナ。

第三の眼は小さく輝き、軽やかに客に語りかけていた。

「見てください! “花咲き鳥”です! 羽ばたくたびに花粉を撒き、家の中が花畑になります!」


鳥かごの中で、小さな鳥が羽を震わせ、鮮やかな花粉を舞わせる。

客たちは拍手を送り、笑顔で契約端末に指を走らせていた。


だがクオンの瞳には、その光景が歪んで映った。

命が“商品”として流通し、人々は疑問なく楽しんでいる。

それは国家が掲げる秩序よりも軽い、だが同じように残酷な現実だった。


リュナがクオンに気づき、首を傾げる。

「お兄さんもどう? きっと心が和むよ?」


クオンは灰色の瞳を彼女に向ける。

声は淡々としていた。

「和むために命を造り、売り物にする……それを正義と呼ぶのか?」


リュナの笑顔がわずかに揺らぐ。

だが周囲の市民はざわめき、クオンを冷ややかに見た。

「また異端者だ……」

「命のありがたみを分からないのか?」


喧騒の中、クオンはただ静かに立ち尽くしていた。

灰色の瞳の奥では、苛立ちと孤独が燃えていた。

「命は……飾りでも玩具でもない。」


彼の言葉は群衆には届かない。

しかし、確かにその信念は揺らぐことなく、孤独に光り続けていた。





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