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「着いたよ、ここが僕の魔道具達を保管している洞窟だ。」
魔王バルザルドに連れられて、ミモリンは
大きな洞窟の中へとやってきました。洞窟の中はとてもひんやりとしていて、ミモリンは
少し身震いをしました。
辺りを見渡すと、 見たこともない摩訶不思議な魔道具がごちゃごちゃと乱雑に置かれ、沢山の書物がぐちゃぐちゃに積まれていました。それに洞窟内にはネズミやら蜘蛛やらゴキブリやらが うじゃうじゃいました。
そのひどい有り様を見てミモリンはサーッと青ざめました。
(すごく汚い…..。ずっと掃除されてなかったんだな。)
「はは、少し恥ずかしいものを見せてしまったね。ボクは人間だったころから掃除や 整理整頓が大の苦手でね。」
頭を指でポリポリ掻きながらバルザルドは
言いました。
バルザルドは常ににこやかに 微笑んでいたので何を考えてるのかミモリン にはさっぱり分かりませんでした。
ミモリンは再びぶるりと震えました。
(…….それにしても、寒い……..!!!)
それを見ていたバルザルドは何やら呪文を
唱えました。
そしてふっと煙のように消えてしまいました。
「あれ!?バルザルド様!!?どこに行ったんですか?」
ミモリンは辺りをキョロキョロ見回しました。
「ああ、気にしないでくれ。ちょっと魔法で
外に出ただけだ。君には掃除のための正装に
着替えてもらおうと思ってね。」
そんなバルザルドの声がミモリンがさっき
付けられた首輪の鈴から聞こえてきました。
ミモリンにつけられた魔法の首輪は
どうやら発信器の役目もこなしてるようです。
「へっ、それってどういう……きゃああああ!!!!!?」
突然、ミモリンの服が魔法のようにはじけて
消えてしまいました。ミモリンは顔を真っ赤にし、涙目になりながらその巨乳と秘所を
慌てて腕で隠しました。かわいそうですね。
それだけではありませんでした。
ミモリンの身体を突然温かいウォーター
スライムが包みました。
ミモリンはその アワアワのウォータースライムによって身体のすみからすみまで念入りに洗われてしまいました。
「ひぅっ!?……やああああああ!!!!!???」
もちろん、それだけではありません。
ドドドドドドドド
洞窟に突然、およそ100匹のマッチョ体型の羊たちが勢いよく駆けつけてきました。
「え!!?えぇ!!?」
「メェーー!!!囲め囲メェェ!!!!!!俺達の
毛皮でェミモリン様の身体を拭いて差し上げろォォォ!!!!!!!」
「ウオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」
そしてミモリンの身体を群れを謎の屈強な
羊の群れが取り囲みミモリンを中心にして
おしくらまんじゅうをしました。
「何!??なになになになんですかーーー!!!?」
そして屈強な羊たちをタオルがわりに
水気をしっかり拭いたミモリンを謎の光が
包みました。
「え!!えぇ!!?今度はなんですかぁ!!??」
謎のファンシーな音楽が流れながらミモリンは可愛らしいメイド服のような格好へと
変身しました。
《おそうじミモリン》、スタンバイ完了です。
「やぁ、よく似合ってるよ。あれ?どうして
そんなにヘトヘトなんだい?」
魔法でまた一瞬で洞窟に戻ってきたバルザルドが ミモリンに言いました。
「あ ……いや、大丈夫です…..。
ごめんなさい。」
バルザルドに大きな尻を向けて情けない格好で 倒れた状態で、ミモリンは言いました。
いよいよ、おそうじミモリンのお仕事開始です。
「まずはここの魔道具を片付けておくれ。
…….あぁ、この魔道具は取っ手の部分以外にさわると爆発するから気をつけて。こんな風に。」
バルザルドはその魔道具の取っ手部分を
触りました。魔道具は勢いよく弾け
バルザルドの手を弾け飛ばしました。
バルザルドの手だった肉片が床にべちゃっと
飛び散りました。
「ヒッッ……。」
ミモリンは青ざめました。しばらくすると
バルザルドの手はぐじゅぐじゅと音をたてながら元の手へと戻ってゆきました。
「ほかにも危険な魔道具は沢山あるよ。
例えば…….。」
なぜか楽しそうにバルザルドは魔道具の
説明をしました。ミモリンは
(こんな仕事してたら命がいくつあっても
たりない…..!!!)
と思いました。それでもミモリンは死にものぐるいでバルザルドの説明を頭に叩き込み
ました。
死にたくなかったからです。
《およそ二時間後。》
「うん、すごいよミモリン。すごく綺麗に
なった。掃除が得意というのは本当だった
みたいだね。」
ミモリンはなんとか魔法道具達をピカピカに
磨き上げました。途中何度か死にかけましたが魔王バルザルドが魔法でちょちょいと助けてくれました。
「ギャギャギャ!!!!アリガトナッ!!!!」
フラスコのような魔道具の一つが牙を出し、
舌をぺろっと出しながらミモリンにお礼を
言いました。
「は…..はは ……どういたしまして……。」
ミモリンは顔をひきつらせながら言いました。
それからもミモリンは何度も死にかけました。魔道書を逆さまにおいたことで魔道書が
怒って牙を向いておそいかかってきたり、
魔法植物に 捕まって服をひんむかれて食べられそうになったり、「タスケテクレー」と叫び続ける謎の石像をピカピカに磨いたりしました。
なんということでしょう。あれだけ汚かった
魔道具達がミモリンのがんばりによって
ピッカピカのピッカピカになりました。
ミモリンはヘトヘトになりながらも少し誇らしげな表情をしました。
ミモリンはおそうじが本当に大好きなの
です。
「驚いたよ。ミモリン、君は思ったより根性があるようだね。」
バルザルドが感心したようにミモリンに言いました。
「次が最後の掃除場所だ。お願いだから
死なないでくれよ。」
バルザルドはそういって洞窟の奥の奥の更に奥、一番奥の厳重そうな扉をゆっくりと
開きました。
「バルザルド様……..この子は?」
ミモリンはバルザルドに尋ねました。
小さな狭い檻の中に5歳くらいの男の子が
全身を鎖で繋がれていたからです。
「紹介するよ、この子は《禁忌のリュカ》。
僕の最高傑作にして………最大の失敗作だ。」
バルザルドは無表情でそう言いました。
ミモリンにはバルザルドが何を考えているか
さっぱり分かりませんでした。
「僕は不老不死の研究をしていてね。
その研究の過程で作ったのがこのリュカだ。
この子は僕の精子と複数の魔物を掛け合わせて作ったキメラでね。ものすごく代謝がよくていつもマグマのように身体が熱いんだ。
どんな病気にも負けずあらゆる魔法実験に
耐えられる。まさに僕の最高傑作だ。」
魔王バルザルドは淡々と言いました。
ボタ….ボタ….とリュカが口からよだれを
垂らしました。するとジュッ….という音が
出て床の一部が焼けて溶けてしまいました。
最高傑作、と言っているのに魔王バルザルドの表情はまるで嬉しそうではありませんでした。
「だが、リュカを生み出した代償に僕はこの山から出られない呪いをかけられてしまった。僕はどうやらこの世界の禁忌に触れて
しまったようだ。そしてリュカはとても危険だった。近づくものをすべて焼き付くしてしまう。あんまり危険だからこうやって僕の
魔法をかけた檻の中で閉じ込めておくしかないんだ。かわいそうだけどね。」
そう言って、魔王バルザルドはリュカをじっと見つめました。ミモリンはバルザルドの目が リュカを哀れんでいるように見えました。
「グゥゥ……….グアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」
突然、リュカが暴れだしました。魔法で出来た檻がドロドロと熱で溶け出しました。
「熱っ!!!?」
ミモリンはリュカから放たれる熱波で顔に
少し火傷をしました。
「あぶないっ!!!!ミモリン、下がってなさい!!!!少し手荒になるが我慢してくれよ!!!
リュカァ!!!!!!」
魔王バルザルドはそう言って何か魔法を唱えはじめました。
「グウウ……..!!!!!グアアアアアアア!!!!!!!」
リュカは魔法のようなもので縛られながら
必死に抵抗しました。その声はとても苦しそうで、悲しそうで。ミモリンはバルザルドの
背中に隠れてその声を聞いていました。
(…… 一体、どんな気持ちだったんだろう。
生まれた時からずっと独りぼっちで、こんな
暗い檻の中に閉じ込められて、こわかったよね。さむかったよね。くるしかったよね。)
突然、ミモリンはバルザルドの背中から飛び出しました。ミモリンは自分でも自分が何をやってるのかよく分かっていませんでした。
「ッ!!!!?馬鹿!!!!!よせ!!!!!!!」
ミモリンは火傷まみれになりながら、
リュカを抱きしめました。
ミモリンは焼けただれた声帯から
必死に声をだしました。
「だ……い…..じょうぶ……だいじょうぶ…..だ…..よ……..。」
「グウ!!!?グアアア!!??」
リュカは必死に抵抗しました。
リュカはミモリンに抱きしめられて動揺しているようでした。こんな風に誰かに抱きしめられるのは、リュカにとってはじめてのことでした。
「わた ……しは…….ミモリン……..
今日から……..ここで掃除……..をする …..の…….。よろ…….しく…….ね ……リュカ
……….。」
身体中を焼き尽くされる痛みに耐えながら
ミモリンはリュカを抱きしめ続けました。
リュカは、どうやらミモリンが自分を傷つけようとしてるわけではないことが分かりました。
「ミモ……リン……..?」
リュカは初めて誰かの名前を呼びました。
リュカはミモリンを抱きしめ返しました。
リュカの体温は段々と下がり、リュカは安心したかのようにすやすやと眠り出しました。
「ミモリン…….大丈夫かミモリン!!!!!
待ってろ!!!!!私がなんとかする!!!!!!」
そう言って魔王バルザルドは自分の胸から
自分の心臓を抜き取りました。
こうしてミモリンは一度死んでしまったのでした。