おそうじミモリンとおそろし山の魔王
第3話 ミモリンびっくり!!おそろし山の
愉快な仲間達。
「こ……こは……?私……リュカを抱きしめて…….それから……….。」
昏睡状態から目覚めたミモリンが目を覚ますとそこにはなぜか白衣を着たバルザルドと
ものすごく機嫌の悪そうな看護婦さんが
いました。
バルザルドは目が覚めたミモリンに気付き
ゆっくりとミモリンに話しかけました。
「……ああ、落ち着いてミモリン。焦ることはないよ。君に話があるんだ。どうか、落ち着いて。」
演技がかった口調でバルザルドは言いました。
「君は一度リュカに全身を焼かれて死にかけたんだ。そこまでは覚えてるかい?」
「……..はい。」
ミモリンはゆっくりとうなずきました。
「君は非常に危険な状態だった。だから
緊急措置をとらせてもらった。」
「…….はぁ。」
ミモリンはバルザルドがなにが言いたいのか
さっぱりといった調子で首をかしげました。
バルザルドは突然白衣をはだけさせました。
綺麗に割れた腹筋を見せびらかしたわけではありません。
バルザルドの胸の中心にはぽっかり
大きな穴が空いていました。
「僕の心臓を君に移植した。僕の心臓は
魔力の塊そのもの。それで君は一命をとりとめたわけだ。」
ミモリンはとてもびっくりしました。
「え…..えええ!!?バルザルド様は大丈夫なんですかぁ…..。」
ミモリンは不安げに聞きました。
「ああ、僕は脳味噌さえ無事なら生きていけるからね。寝る時にちょっと煩くて邪魔
だったまであるよ。」
「そういうものなんですか……。
よかった……..。」
「問題はここからだよ。ヤッホー、
鏡をもってきてくれ。」
ヤッホーと呼ばれる看護婦の服を着た女の子は「ふんッ。」とつっけんどんな態度で
バルザルドに手鏡を渡しました。
そしてバルザルドはその手鏡をミモリンに
渡しました。
「いいかい、落ち着いて。絶望せずに聞いてくれ。君は僕の心臓を移植されて…….。」
ミモリンは自分の姿を鏡で見てびっくりしました。ミモリンの頭には小さな雌牛のような
角が生え、ミモリンの手にはふっさふさの毛と鋭い爪が生えていたのです。
「君は人間ではなくなってしまった。」
ミモリンは大きな叫び声をあげました。
看護婦の服を着たヤッホーちゃんは煩そうに耳に指をつっこんでちょっと嫌そうな顔を
しました。
三十分ぐらいミモリンは泣きながら
やだぁ!!!とかやだよぅ!!とか叫んでいました。
しばらくしてミモリンは落ち着きました。
「……つまり私はもうこの山から出られなくて、山から出てもお父さんお母さんに会えないんですね……..。」
この現実を受け入れたくないという顔で、
ミモリンは言いました。
「本当に申し訳ないと思っている。どうか
許してほしい。」
そう言ってバルザルドは頭を下げました。
ヤッホーちゃんはそんなバルザルドを白々しそうな目で見ていました。
「いやっ……あのっ……謝らないでください…..バルザルド様は悪くない……というか
…….私が…….考えなしの行動をしたから…..なので ………ハイ。」
ミモリンはそうやってふさふさになった
手をブンブン振りました。そしてまた落ち込みました。
「…….いずれにせよ、君はもうここで暮らしていくしかなくなってしまった。あぁッ!!!本当に申し訳ないと思っているよッ!!!!」
バルザルドは悲しそうな表情をしていました。その表情がやけに演技っぽかったのは
気のせいでしょうか?
「そこでお詫びと君の歓迎会を兼ねて
パーティーを開こうと思う。ドレスに着替えて準備をしてほしい。」
バルザルドはそう言うとシュッと魔法でどこかへと消えてしまいました。
ヤッホーちゃんはミモリンにあっかんべーを
した後、一瞬で木に包まれてその後魔法のように消えていきました。
「でも、ドレスってどうやって…..まさか…..。」
そのまさかです。ミモリンの服が魔法のように弾けとび、ウォータースライムに全身をすみからすみまで洗い尽くされ、およそ99匹の屈強な羊達におしくらまんじゅうされて、ファンシーな音楽とともにミモリンは綺麗なドレス姿に変身しました。
「これ毎回やるんですかぁぁぁぁぁ!!!!!!?」
とミモリンは涙目で叫びました。
勿論毎回やります。お約束というやつです。
おそうじミモリン《ドレスアップバージョン》、スタンバイ完了です。
「やぁ、着替え終わったようだね。おや、
君はよくその体勢で寝ているね。村で流行っているのかい?」
「好きでやってるんじゃありません……。」
ミモリンはゼェゼェ言いながら バルザルドにおしりを向けて 情けない格好で倒れたまま言いました。
そんなこんなでミモリンは魔王バルザルドと
その幹部の座る円卓にやってきました。
そこには三人の男女がそれぞれ椅子に座っていました。
そこにはヤッホーちゃんの姿も ありました。
ヤッホーちゃんは先ほどまで いやいや来ていた看護婦の衣裳から着替え 異国のドレス(着物、というようです。)を びしっと着こなしていました。
ヤッホーちゃんの隣にはにやにやと笑う糸目でタキシード姿の あやしげな男がいました。
そしてその 男の横にはスーツ姿で無表情の
美少年がいました。
「あのさぁ、バル…….あたし言ったよね?
私の山に女を連れ込むのはゼッタイ許せないってさぁ?」
そう言ってバルザルドを
睨み付けました。
その眼光は目力だけで ミモリンを三十人は殺せそうなほど おそろしいものでした。
「フージャッジャッジャ!!!風の噂で聞きやしたぜぇぇ?あんたァあのリュカ様の暴走を抑えたんですってねぇ。こいつぁ大物の予感が
しやすねぇぇ….。私はフージャ、風の精霊でさぁ。以後お見知りおきをォ。」
いかにも怪しそうな顔でにやにや笑いながらフージャと名乗る男は挨拶をしました。
「なーにが風の精霊よ?この雑菌風情が。
新入り、親切で教えてあげるわ。この男の
言うことだけはゼッタイに真に受けちゃダメよ。 あとフージャ。次そのふざけた笑い方
したら本気で怒るからね。」
そう言ってヤッホーちゃんが怒ると
ゴゴゴゴとおそろし山が地響きを起こしました。
「おーこわいこわい。 ヤッホー様はここの
最古参だからゼッタイ怒らせちゃだめですぜぇ?」
フージャはそう言ってミモリンに耳打ちしました。
「はぁ?」
とヤッホーちゃんはキレました。今にも
噴火寸前といった感じです。
(でも、私に忠告してくれたり意外といい人なのかもしれない……..。)
とミモリンはヤッホーちゃんを見て
思いました。
「……………。」
陶器のような美しい顔の美少年は何も言わずにじっとミモリンを見ていました。
怒らせてしまったのでしょうか?
「あー新入り、ガランドのことは気にしなくていいわよ。あいつは陶器のゴーレムなの。
喋らないんじゃなくて喋れないわけ。」
「気さくなやつなんで仲良くしてやってくだせぇ。」
「どこがよ。」
フージャとヤッホーちゃんが口々に言いました。
そして席には一つだけ空席がありました。
「あーそこはリュカ様の席でさぁ。気にしないでくだせぇ。」
そう言ってフージャはにやにや笑いました。
にやにや笑ってないと死ぬ病気なのでしょうかこの男は。
「……さて、皆席についたね。」
バルザルドは正装に着替えていました。
異国でいうところの十二単のように重ね着した民族衣裳をお洒落に着崩し、その腹筋と胸の ぽっかり空いた穴を露にしました。
ヤッホーちゃんが顔を赤くしました。
もしかしたらバルザルドが好きなのかもしれません。
心なしかおそろし山が少し揺れていました。
「それじゃ、皆でごはんにしよっか。
今日はおそろし山のフルコースだ。」
そうして魔王バルザルドは舌なめずりをしました。
(次回、ミモリン感動!!?おそろし山のフルコース!!! お楽しみに。)
(最後まで読んでくださりありがとうございました。)
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