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今度は僕の番だ。
毎度お馴染みの大きなタッパーを出して、蓋を開ける。
「僕のはまあ、よくある鶏の手羽先です」
「そうだよ、肉がそろそろ欲しかったんだ」
先輩は肉に飢えていたらしい。
確かに煮物の中の鶏肉以外、おせちの中って肉類は少ないからなあ。
そして亜里砂さんが、にやにや笑う。
「思い切り被ったのだ。でも出してしまうのだ」
何だろう。
亜里砂さんが出したのは、妙に深いタッパー。
中には茶色い肉の塊が入っている。
「家は何かあると、父と私とで肉を食いまくるのだ。そんな訳で、これは父が作った中華風焼き豚なのだ」
やられたな、と思う。
確かに美味しそうだ、これは。
香りがちょっと違うのは、何か香辛料を使っているのだろう。
「あと、重かったけれど、父がこれも持っていけと言ったのだ」
かなり大きいタッパーを、どん、と出す。
「ポトフだ。家から材料を持ってきて、さっきまで煮込んだのだ」
開けると、ふわっと湯気が立つ。
中にはジャガイモやソーセージ、キャベツなどが浮いている、まさにポトフだ。
「全然正月と関係ないけれど、美味しそうだな、これは」
確かに。
何だか亜里砂さんの持ち込んだもの、ダイナミックだ。
そんな訳で、各自、食器やタッパーを皿代わりにして食事会を開始。
「まずは撮影して、美洋と未亜に送ってやろう」
先輩がスマホで撮影し、そして亜里砂さんのでっかい焼き豚にナイフを入れて、かなり分厚く切り分ける。
「この肉肉しさがいいよな」
早速、焼き豚をいただいてみると、思ったよりさっぱりしている。
脂分が少ないからだろうけれど、それでもバサバサしておらず、しっとりしている。
とてもいいハムを食べている時と同じような感じだ。
味は、ちょっと馴染みのない香辛料の香りがする甘辛系で、とても美味しい。
「何か亜里砂さんのが圧倒的すぎて、正月ムードが吹っ飛びますね。美味しいけれど」
「でも悠の手羽先も美味しいぞ。味も焼き豚とは違うから、別のものとして食べられるし。ただ悠が作るものって、どうも酒のつまみっぽい感じだよな。この前の塩辛もそうだしさ」
確かに、言われてみるとそうかもしれない。
それに、当然だがおせちも美味しい。
本格的なおせちなんて、実家でも作らないしな。
それからポトフが見かけ以上に美味しかった。
温かいせいだけじゃない。
「何か、このポトフ美味しいな」
「出汁に生ハムの骨を使っているのと、あとソーセージが父セレクトの特別製なのだ」
なるほど。
美味しい美味しいと食べていると、先輩のスマホが鳴る。
ちらっと見て、先輩が笑った。
「未亜から、怒りのメッセージが来ているぞ」
確かにこれ、楽しそうだよなと思う。
僕もこれを見せつけられたら悔しいだろうし。
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