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12
れい
586
#異世界転移
花月夜れん
1,321
#恋愛
その人が教室に入ってきた時、なぜか分からないが、ふと顔を上げた。
そして、心の奥で何か軋んだ音がした。
伏し目がちな硬い表情に、自信のなさそうな動作。
──似ていたのだ。
あの頃の自分に。
─────────────────────
(……学校、やだなぁ……)
9月1日、夏休みが終わり、始業式の日。
重い足取りで家を出たが、着いた後のことを考えると憂鬱だった。
まるで通学リュックに鉛が何個も入っているみたいに、どんどん歩みが遅くなっていく。
立ち止まっては歩く、を何回も繰り返すこと数分。
錆びて黒くなった校門が見えてきた。
何百回もくぐってきた、あの威圧感のある門。
足が、止まった。
(……怖い……嫌だ……)
心臓が暴れていた。呼吸が浅く速くなっていくのが自分でも分かる。
引き返そうかと身体を横に向けた途端、背後から抱きつかれた。
「りーつ、こんなとこで何やってんの?」
「……っ!?」
抱きついてきたのは、同じクラスのお調子者だった。
「……なに急に、」
「いやー、なーんか見覚えのある奴いるなって思ってさ。やっぱお前だったわ」
お調子者の言葉に軽く呆れを覚える。
人が憂鬱になってんのに、「やっぱお前だったわ」って。なんだそれ。
無理やり引き剥がし、少し距離を取る。
「こんな所で止まってないでさ、教室行こーよ。だいぶ変わってんじゃない?」
「……いや、行かn」
言い終わる前に、再び抱きつかれる。
「いーから。てか髪伸びたね。」
そしてズルズルと半ば引き摺られるようにして校舎内に入らされる。
「え、ちょ、まっ……」
という呟きは騒がしい校舎に吸い込まれていった。
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校長の長い話にバレー部が全国優勝しただとか、先生が育休や産休に入るだの全く興味のない話を聞き流して始業式が終わった。
冷房がガンガン効いた寒すぎる教室に入ると、椅子が制服のスカート越しでも分かるほどキンキンに冷えていた。
始業式と同じく担任の雑談や連絡を聞き流し、半分寝かけていると、耳が「転入生」という単語を拾った。
(……ふうん、転入生か)
机に突っ伏そうとして、動きが止まった。
興味、ではない。
なにか、本能的なものを感じ、顔を上げた。
今思えば、この行動が中学校生活を左右したのかもしれない。
教室に入ってくる、転入生の姿が見えた。
コメント
1件
ああ、いいですね……。 始業式の朝の、あの鉛を飲み込んだような重さが、すごく伝わってきました。特に「心臓が暴れていた。呼吸が浅く速くなっていく」という身体感覚の描写に、作者さんのリアリティへのこだわりを感じます。 それでいて、お調子者のクラスメイトにずるずる引きずられる日常の軽さが、逆に主人公の影の部分を引き立てている。転入生を見て「本能的なもの」を感じるラストも、何かが始まる予感で胸がざわつきました。 続き、とても気になります……!