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#復讐
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「パパ……どうして、そんなに震えてるの?」
タブレットを抱えた蓮の言葉に、健一は声も出せず、ただその場に立ち尽くしていた。
画面の中では、生前の奈緒が、まるで今の状況を見越していたかのように、優雅に脚を組み替えて笑っている。
『蓮くん。パパはね、とっても弱い人なの。だから、あなたが「正して」あげなきゃダメよ。……私の言った通りに』
「蓮、それを消せ!今すぐ消すんだ!!」
健一が半狂乱になってタブレットを奪い取ろうとしたが
蓮はその小さな体でするりと身をかわし、冷たい、奈緒そっくりの目で父親を見上げた。
「……パパ。ママみたいな人が言ってた。パパが悪いことをしたときは、この『お耳』をつけさせるのが、家族のルールなんだって」
蓮がソファのクローゼットから取り出したのは
あの日、火災の跡から健一が密かに持ち帰ってしまった、あの「犬の耳」だった。
「……っ、蓮、お前……何を……」
「つけて。パパ」
5歳の子供が放つ、絶対的な支配の響き。
健一の脳裏に、かつて奈緒に跪かされていた日々の記憶がフラッシュバックする。
逆らえば、奈緒がセットした
「予約投稿」によって、自分の過去が全世界に晒され
今手にしている富も、蓮との生活も、すべてが崩れ去る。
健一は、折れそうな膝を床につき、震える手で「犬の耳」を頭に乗せた。
「……いい子だね、パパ」
蓮は、奈緒のビデオレターから流れる指示に従うように、健一の頭を優しく撫でた。
その手つきは、幼い子供の無邪気さとは程遠い、獲物を愛でる捕食者のそれだった。
その時、健一のスマホに通知が届いた。
ナオミのアカウントから、自動的に投稿されたメッセージ。
『【速報】かつての贖罪は、次世代へ。……愛する息子が、ついに「真実」に目覚めました。今夜、地獄の第二章をライブ配信します。』
「……ああ、ああああ!!」
健一は、画面に映し出されたナオミの微笑みと、目の前に立つ息子の無機質な笑顔が、重なって見えた。
死んで灰になったはずの奈緒。
だが彼女は、蓮という新しい「器」を手に入れ、再びこの家に君臨したのだ。
「ねえ、パパ。……お掃除の時間だよ。ママが言ってた、一番汚い場所から……パパの『心』を、綺麗にしよ!」
蓮は、かつて健一が床を磨かされたあの「汚れた雑巾」を、父親の顔に投げつけた。