テラーノベル
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馬鹿らしい。馬鹿らしくてしょうがないのに、弱い自分が恥ずかしい。
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「今日さぁ、まじであいつやばかった」
「授業だるすぎー」
「カフェ行こうよ〜」
「ジュース買ってこいよ!」
そんな会話を毎日耳にして、別になんとも思ってないのに、笑って返事をする。
呼吸を合わせて、テンションを合わせて、表情を合わせて、口調を合わせて。
空気を読んで生きる、それが孤独を怖がる私の生きるための必須スキル。
学校は社会の縮図とはよく言ったもので、上へのし上がるには良い事も悪い事もバランスを取らないといけない。
私は嘘や悪さを見過ごせないから、いつも間違ってきた。
私が善であっても、社会はそれを許さない。
馬鹿らしい。
自分も社会も大嫌いだ。
「奈緒」
「!」
よく聞き慣れた声、真弥の声だ。
「今日も部活でしょ?昨日送ってくれた新しい絵、すごく素敵だったよ」
真弥だけは、私の絵の世界観を分かってくれる。
それに真弥は私よりも正義感が強くて、優しい。
日々空気を読むことに疲れ、気を病んだ時は真弥に相談している。
真弥はもし私が間違っていたら間違いを指摘してくれるが絶対に責めることはせず、私の気持ちを考えて私のための答えをくれる。
「ありがと!進捗また伝えるね!」
私が1番本音を伝えられる人間は、母親でもその辺の友達でもなく、真弥だった。
だが、真弥は私よりも正義感が強いのと、成績優秀で可愛いためその分より酷いことに巻き込まれている。
仲良くない人でも頼まれればなんでもやってあげることなんて当たり前。
いじめをかばうことだって何度もしていた。
そのせいで。
「奈緒もさぁ?あの男好きとよく仲良くできるよね」
同じ部活の香織がいかにも悪い笑みを浮かべながらこちらに寄ってくる。
「成績いいからって調子乗ってるしさぁ?オマケに彼氏が途切れない。あの偽善者ぶってる感じ、私なら近くにいるだけで吐き気がして無理だわ〜 」
確かによくモテるし、真弥自身も惚れやすいところがあるため、恋愛経験は多い。
周りの女子もそれを聞いてクスクス笑う。
「ねぇ聞いた?噂だとさ、あいつ他の人の男盗ったらしいよ…」
「またぁ?この間も噂出てたよねぇ」
私はその噂が絶対に嘘だと確信した瞬間に、思わず声を上げてしまった。
「真弥はっ…!そんなことする子じゃない…っ」
『ダメ!』そう気づいた時には遅かった。
「え、なに、あいつのこと信じてるの?」
香織が顔をしかめた。
「奈緒ちゃん騙されてるんだって!!」
心配そうに、でもどこか小馬鹿にしながら春子が言う。
「っ…」
何か言わないと。
でも怖くて、声が出なかった。
沈黙の中香織が口を開く。
「奈緒。あんたあいつの味方するってことがどういうことかわかんないの?」
威圧的な態度に圧倒され、黙った。
香織は学年だけじゃなく学校全体で名が知れている。
男子も女子も先輩も後輩も香織を知っている。
香織はいわゆる『上手に生きる人』だ。
「まぁ、奈緒も騙されやすいんだし、これを機に少し気をつけたら?」
ホッとした自分がいる。
「…うん」
そう返事をした直後、また女子たちは真弥の悪い噂や嘘の噂について話し始め、笑い始める。
私も笑った。
場の空気を読むために、親友を笑った。
最低だ、最悪だ。
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今日の夜、真弥に連絡をした。
『あのね、話したいことがあるんだ。』
真弥は私が見ている限りでは、多少愚痴をこぼすことはあっても自分へのいじめに弱音を言うことは無かった。
本当に強い子だと思う。
まもなくして私の携帯に通知が入った。
『どうした?』
私はすぐに返事をした。
『本当に、部活にいるのが辛いんだ。でも辞めるのはできない、お父さんは絶対に許してくれないし、私も絵を諦めたくないから。』
『今日は何があったの?言えることだけでもいいから、話してみて?』
『今日、あまりにも香織達が真弥の酷いことを言うから、思わず言ったの。そんな子じゃないって。そしたら騙されてるとか、あいつの味方することがどういうことかわかってるのか、とか言われて 』
『うん』
『それでね』
指が止まった。
真弥に嫌われたら、私はこれからあんな場所でどう生きていけばいいのだろう。
それでも、私は絶対に被害者面してはいけない。
『ごめん、怖くてそれ以上は何も言えなくて、みんなに合わせることしかできなかった。』
送信と同時に涙が出る。
バカ、泣くな、本当に泣きたいのは真弥なのに。
『そっか、言ってくれてありがとう』
いつも通りの優しい返事。
『まずね、そんな子じゃないって言ってくれたの、私本当に嬉しかった。香織はたしかに顔も広いし、そういうこと言われて怖くなるなんて当然だと思う。』
真弥が温かい言葉をくれるたびに自分に嫌気が差す。
『奈緒、本当にありがとう。でももう真弥が私を守って辛い思いなんてしないで欲しい。奈緒が辛いと私はもっと辛くなるから、もう守らなくていいから、みんなに合わせていいから。』
「真弥っ…」
『もういいんだよ』
泣きながら返信する。
私は日々のいじめに我慢をしている子に自分を守らせてしまった。
『真弥、本当にごめんなさい』
『ううん、いいの』
そこからは何も話さず、おやすみと言って携帯を閉じた。
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学校にて、また周りが真弥を悪く言うのを聞いて、私は辛くなる。
男子の声は低いから、特に良く聞こえる。
「お前らあいつに騙されんなよ〜」
「いやないない!よく見たらそんなに可愛くねぇし」
「胸と尻はデカいし、ウエスト細いからセフレにはできそーだけど」
男子が笑うのが聞こえる。
こういう時いつもどうして殺人が犯罪なのかと疑問に思う。
真弥の敵はとにかく多い。
でも真弥は色々な面で人よりも優れているから面と向かったいじめというよりも真弥を利用するようなことが多い。
真弥には幼稚園から一緒の愛菜がいるのだが、あんなに仲良しで姉妹のように過ごしていた愛菜すら加害者に手を貸している。
でも愛菜は普通に仲良く真弥と接している。
人の悪意に真弥は慣れていないのだと思う、真弥は皆に利用されていることに気づいている上でただ黙っていた。
それを私は知っていた。
バンッ!
男子の方から机を叩く音が聞こえた。
「なあ、動画撮ってみねぇ?」
悠真が面白そうだと言わんばかりに不敵な笑みを浮かべてそう言った。
「いや動画はまずくねー?」
「だって俺らが悪者になるしなぁ?」
「ビビってんの?抑えて服脱がせるだけだって」
男子が汚く笑う。
爆笑する声に耳を塞ぎたくなった。
「真弥、気にしないで。私が守るから」
愛菜が真弥にそう言う。
裏では真弥の親友という立場を悪用してありもしない噂を皆に流しているくせに。
「愛菜、私は平気だよ」
真弥が笑う顔をみて胸が痛くなった。
真弥は愛菜の悪意に気づいているのだろうか。
「ごめん、トイレ行くね」
私はグループの子達にそう言って一人で廊下へ出た。
もう聞きたくなかったからだ。
「なぁ」
突然声をかけられて振り返る。
そこに居たのは叶太。
いじめられていたのを真弥に助けてもらった同級生だ。
真弥とは仲良くしている。
「あいつ、ほんとに平気だと思うか」
思わずカッとなって言った。
「あんたを助けたことも原因の一つでしょ、他人事もいい加減にしたら!?」
叶太は目を逸らした。
「わかってるよ、申し訳ないと思ってる。でももうあいつは限界なんじゃないかって、心配なんだよ、お前も分かるだろ」
図星だったがそれが癪で無視してそのままトイレへ向かった。
耀聖(ようせい)
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羽海汐遠
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自転車和尚
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#未来
コメント
1件
第2話、読み終えました……胸がぎゅっとなりました。奈緒が親友の悪口に合わせて笑ってしまう場面、あの自己嫌悪の描き方が本当にリアルで、読んでいて自分の過去を思い出しました。真弥からの「もう守らなくていいから」のメッセージ、優しすぎて逆に辛いですよね。奈緒が「泣くな、本当に泣きたいのは真弥なのに」と自分を責めるところ、その誠実さが伝わってきて、続きが気になります。葉太の登場も含めて、人間関係のややこしさが丁寧に描かれていて、ゲファーさんの心理描写の繊細さが光ってました。