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ついカッとしてしまったが、叶太の言う通りだと思う。
真弥は強く見えるけど、本音ではもう辛いんじゃないかと。
でも私は心のどこかで、なんの根拠もなく真弥は平気だと思っていた。
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家にて、私はいつも通り絵を描く。
すると携帯に通知が入ってきた。
真弥だ。
『奈緒』
『どうしたの?』
『愛菜のことで、聞きたいことがある』
私はドキッとしたが、すぐ返事をした。
『うん』
『奈緒は知ってるんじゃないかと思って』
『なにを?』
『愛菜は私を裏切ってること』
全身から汗が出る。
なんて答えればいい?
どうすれば傷つけずに済む?
考えすぎて返事をする指も動かなかった。
『私はどこかで愛菜だけはって思ってしまってる。このままじゃ私そのまま許していってしまう。だから、奈緒が何か知ってるなら教えて欲しいんだ。結果がどうであれ』
私は悩んだが、返信した。
『愛菜は、あっち側だよ』
しばらく返信がなかった。
当たり前だ。
今までずっと一緒だった幼なじみが自分を苦しめる側に回っただなんてどんな人も辛いに決まっている。
何分か経って、返信が来た。
『薄々、そうなんじゃないかって思ってた。でもこうやって分かると、結構クるもんだね』
いつも弱音を吐かないのに弱々しく返信する真弥に私は慌てて文字を打った。
『真弥、辛くないわけはないと思う。限界なんじゃない?教えて欲しい。』
『ううん、大丈夫。心配しないで』
『真弥、無理しないで、お願い。』
そこから返信はなかった。
私は不安で眠れなかった。
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学校にて、私は昼休みに真弥と二人で購買に行っていた。
言うまでもなく、真弥はパシリのためである。
愛菜のお昼を買いに行くのだ。
前はそんなことしていなかったのに。
昨日のことには触れず、二人で仲良く買い物をして教室に帰ろうとした時、教室からの声で私達は立ち止まった。
「愛菜もさぁ?あいつに付きまとわれて可哀想だよね〜」
「もうそろそろやっちゃってもいいんじゃない?」
真弥は何も言わずドアの前で立っている。
「そうだねぇ、あいつと友達ってのが欠点でしかないし、だけどさ?あいつ私のこと大好きだからなんでも話すからさぁ、皆のネタとしてはいいよねー」
愛菜が笑いながら言う。
「あははっ!愛菜ほんと最高〜!」
「もうもはやあいつ可哀想でウケるんだけど!」
教室にどっと笑いが溢れる。
酷い。
どうしてそんなことができるの。
恐る恐る真弥の方を見ると、真弥はかつてないほど絶望的な表情をしていた。
しかし、すぐに憎しみの表情に変わった。
「真弥…」
私が声をかけるとすぐに笑顔になって答えた。
「ん?私は大丈夫。もう分かりきってたことだし」
そう言って何事もなかったかのように教室へ入って行った。
すると教室はすぐに静まった。
「陰湿なやつら…」
誰にも聞こえない声でそう口にして私も教室へ入った。
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放課後、真弥に用があったため真弥を探していると、女子トイレから声が聞こえた。
香織の声だ。
「見てこの動画!聞いたよ〜悠真達の前で服脱いだんだって〜?」
「キモっ!そういうので男子にモテるわけねー!」
春子も便乗して言う。
「押さえつけられて脱がされたんだよ!その動画みて、私の手足が押さえられてるのが見えないの!?あんた達やりすぎだって思わないの!?私が何したって言うのよ!!」
「…えぇ?」
香織が一呼吸置いてから言った。
「楽しいからに決まってんじゃん!!!そんなのも分からないの!?成績優秀な真弥さんなのにー!?キャハハハハ!!!」
私は聞いてられず、トイレに入った瞬間、愛菜の姿が見えた。
「私が悠真くんにそうしろって言ったの。わかる?わ・た・し・が!そう言ったの」
そう言って手に持っていた水バケツの水を真弥に叩きつけた。
その様子を春子が撮る。
「あははっ…あ、奈緒じゃん?奈緒もやる?楽しいよ?」
香織がこっちに近づいてくる。
最悪だ最悪だ最悪だ。
ここで私が何か言っても絶対に香織は私と真弥を何かしらの悪者にする。
そういう手法で何度も苦しんでる人を見た。
真弥に水をかけるなんてもってのほかだ。
考えろ、考えろ、考えろ。
どうにかここからこの3人を離れさせる方法を。
「ほら、早くしろよ」
そう香織が言うのを遮って私は言った。
「香織、春子!探してたんだよ、顧問が2人を呼び出してるんだ、絵の締切が近づいてたでしょ?カンカンだよ」
あながち間違ってはいない。
締切間近に絵が完成していないことは顧問が前から警告していたし、香織は指定校を貰うために顧問に媚びを売っている。
最善の方法だ。
「あ…そういえばそうだったね、しょうがないか。春子、行くよ」
「はぁい、真弥ちゃーん。片付けといて?」
「2人が居なくなるなら私もかーえろ、生乾き臭移りそうだし」
香織がプッと笑って去ろうとする。
「あ、奈緒。教えてくれてありがとねー」
笑顔でそう言って3人とも居なくなる。
すぐに私は真弥に近づいた。
「真弥っ!大丈夫!?」
「静かにしろ」
真弥の剣幕に驚き、私は止まった。
「廊下にいる人が、もし奈緒が私を心配してるところなんか聞いたらすぐ香織に伝わるよ。そうなれば奈緒は、私を庇った上心配していることがバレるんだよ。」
「でもっ…」
「今まで自分が築き上げた地位を崩さないで」
そう言って真弥は立ち上がった。
「助けてくれてありがとう。」
笑顔でそう言って、トイレを掃除し、その場を去った。
私はしばらく立ち止まったままだった。
私はまた真弥に自分を守らせてしまった。
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翌日、朝起きると数秒間だけ目に異常なほどの激痛が走った。
ニュースも、おかしな事ばかり報道している。
人体異常とか言っているので、母がそんなことあるわけないなどと言ってチャンネルを変えてしまった。
普通に見えていたので、普通に支度をして学校に行った。
だが、そこで自分の視界がおかしい事に気がついた。
特定の人間を見ると文字が浮かぶ。
香織は『火炎』、悠真は『ミラー』、愛菜は『治癒』、叶太は『速度』。
春子と、あまり話したことは無いが内田さんは『???』と表示されていた。
学校内には他にも複数人から文字が見えた。
ついに占いでもできるようになったか、と思っていたら、そこで気が付いた。
真弥の姿がない。
香織達は真弥がいないことにクスクス笑っていた。
「ついに学校に来る気も無くなっちゃったのかなぁ?」
「案外もった方だね」
キャハハと笑う女子達に香織が衝撃な発言をする。
「あいつの家、燃やさない?」
女子達は流石に黙った。
「今日のニュース、見たでしょ?原因不明の人体異常。私、それなったみたい。」
ふふふと笑いながら香織が言う。
悠真や愛菜も笑っている。
「私、燃やせるよ。何も無いところから」
そういって女子のうちの1人が持っていた紙パックジュースに火をつけた。
ライターもマッチも使わずに。
何も無いところから急に火が起きるなんて普通は起きない。
女子が悲鳴をあげる。
教室は大混乱に陥った。
私も例外ではなく、今すぐ先生に報告しに行こうとしていたところ、悠真が口を開いた。
「まぁ落ち着けよ、香織も俺も、その他にも何人かいるみたいだし」
悠真は迷わず私の方を見る。
ドアに1番近かったからだ。
「奈緒、能力を使えるやつは簡単に人を殺せる。先生に言いに行こうとなんてしてないよな?俺はお前を殺したくないんだ。」
私は黙って、ドアから離れた。
私はそこでほとんど確信した。
私が見て、文字が浮かんだ人間は能力が使える。
どうして、よりによって香織や悠真なんかに…
「お前ら、俺らに逆らったらどうなるか、分かってるよな?」
教室の全員が震えている。
「それと、他にも能力を持ってるやつ。俺らを殺すために使っても無駄だからな。」
ミラー。
そういうことか。
しばらく間が空いてから、香織が皆に言った。
「今晩、あいつの家を燃やしに行く。もちろんこんなこと誰かに口外したら、あんた達も燃やす。」
全員が沈黙した。
「わかった!?」
香織が叫ぶと、全員が頷いた。
私は超能力といった大きな力に何もできなかった。
すると、先生が入ってきた。
「何を騒いでいる。早く席に着け」
「…はーい」
香織も悠真も愛菜も席に着いたので、私達も席に着いた。
そこから私は授業に身が入らず、何もできなかった。
放課後を迎えてようやく私は何かをする気になって、どうにか放火を止められないか考えた。
私には何も力がない。
あったとしても、能力を読むことだけ。
失敗したら確実に殺される。
でも必ず阻止しなければいけない。
考え込んでいると、春子の声が聞こえた。
「ねぇっ…なんで急にそんなことっ 」
「能力もない役立たずのお荷物連れてく気ないから」
「今まで仲良くやってきてたじゃんかぁっ!!」
「黙れよ雑魚、俺らはやることあんだよ」
「燃やされたくないなら、静かーに生活してたら?」
「そんな…」
香織達が春子を置いて歩いていく。
きっと日が沈むと同時に燃やしに行く気だ。
「春子…自業自得だよね」
私はそう言い聞かせて泣き叫ぶ春子のもとを後にした。
羽海汐遠
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自転車和尚
1,323
天楽°
38
#塩レモン
comi
5,122
コメント
1件
このエピソード、読んでいて本当に胸が痛みました……。真弥の「静かにしろ」という言葉と、助けてくれた奈緒への「ありがとう」という笑顔のギャップが、どれだけ彼女が無理をして自分を守っているかを痛感させてくれました。そして、超能力という形で香織たちに力が与えられてしまう展開が絶望的で、最後の「私には何も力がない」という奈緒の無力感がひしひしと伝わってきました。真弥の家が燃やされる前に、奈緒がどう動くのか気になります。続きが待ち遠しいです。