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どれくらいの時間が流れたのか。


奈美は、スマホで時間を確認すると、もうすぐ十八時十五分になろうとしている。


「奈美ちゃんから俺に連絡くれたのは、初めてだよな?」


その仕草を見た豪が、重くなった口を開いた。


「そうですね。考えてみたら、初めてですね」


「奈美ちゃんからメッセージが来た時…………すげぇ嬉しかった」


豪が、微かに唇を綻ばせながら言ってくれて、気持ちが舞い上がるはずなのに、奈美は、ぎこちなく笑う事しかできない。


二人に覆い被さる、気まずい雰囲気と沈黙。


何かを話さなければ、と思うと、余計に言葉が出てこない。


さっさと、この関係を終わりにして、出会う前の私たちに戻りましょう、と言えばいいものを、決定打を打った後が怖い。


奈美の目の前で、悠然と長い脚を組み、コーヒーカップを口にする豪は、やっぱり男前だ。


甘くて優しくて、二人で会っている時も、奈美の意思を、最優先にしてくれる彼。


見た目だけでなく、性格もイケメンで。


(どうしてこんなに…………好きになっちゃったんだろう……)


瞳の奥はカッと熱を持ち、瞼がジワジワと痺れる感覚が、彼女に襲い掛かる。


視界が今にも滲み、自分自身が崩れていきそうだった。


(ヤバい……泣きそう……! 泣いちゃダメだよ、私!!)


何とか自分を奮い立たせてみるものの、こんな顔を見られたくなくて、奈美は顔を上げられなかった。




「奈美ちゃん? 大丈夫か? 体調悪いのか?」


奈美の様子に、豪が気を遣って声を掛けてくれた。


(違う。そんなんじゃない。言いたい事も言えないで、私の中で膨らんだ『思い』と『想い』を、自己完結しようかしないか、迷っているだけ……)


「……大丈夫です」


奈美は消え入りそうな声を零しながら、首を数回横に振る。


「ならいいが……」


豪が小さくため息をつき、再びコーヒーカップを口に寄せた。


「そういえば、奈美ちゃん、話したい事があるって言ってたよな?」


彼が、不安を纏わせた表情で、奈美を覗き込む。


(ああ、ついに来た……。私の考えている事を、言わないとならない時間が……)


「はい……」


「何かあったのか?」


「…………」


豪の眼差しが奈美に絡みつき、顔を上げて交差させるのが怖くて堪らない。


無言の彼女に、豪が再び声を掛けた。

ただ、それだけの関係……

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