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アシュレイの傍での生活も三年目になり、ずいぶんと慣れた頃に、ふと村は今、どうなっているのか、家族は元気だろうかと気になった。気になれば帰りたくなる。 デックは、一度村に帰りたいとアシュレイに頼んだ。姿を見せないし陰から見るだけだからと。
しかしアシュレイは、許可してくれなかった。
「悪いが、俺はおまえを信頼しきれていない。
村に帰れば二度とこの国へは戻らないだろう?」
「……」
デックは否定できなかった。俯くしかできなかった。
確かにそうかもしれない。懐かしい面々を見れば、離れがたくなる。
だから諦めた。諦めてアシュレイの傍での暮らしを続けた。
翌年、やはり村のことが気にかかり、再びアシュレイに懇願する。
必ず戻ってくる、戻って来たらずっと、アシュレイの傍で協力するからと、断られる覚悟で言うと、意外にも今回は許してくれた。騎士を一人、同行させることを条件に。
騎士は、見張りの役目もあるが、デックがまだ成人していないため、大人がいた方が国境も越えやすく宿にも泊まりやすいだろうからという理由で、同行させたらしい。
久しぶりの帰郷に、デックは胸を高ぶらせながら出発した。
順調に進み国境を越え、出発から数日後、いよいよ村に近づいてきた。
村の手前の街で、騎士は待機すると言う。村にはデック一人で行かせるようにと、アシュレイから命じられているそうだ。
デックは、街に騎士と馬を残して、村へと急いだ。はやる気持ちを抑えて、村へと続く道を足早に歩いた。皆は、俺を覚えているだろうか。元気に暮らしているだろうか。
しかし久しぶりに帰った村には、誰もいなかった。朽ちかけた家々が残っていただけ。
村人が皆、自分のように攫われたか殺されたかしたのだと思ったデックは、ひどく落ち込んで村を離れた。
だがこの時、まだリオは村に住んでいた。母親と二人だけで住んでいた。離れた街の医師に母親を診せるために、たまたま数日留守にしていただけだった。この時にリオと会っていれぱ、デックの未来は変わっていたかもしれない。
騎士が待機する宿へ戻る道中に、デックは魔獣に襲われそうになっていたロンを助けた。まだふわふわの毛の幼鳥で、とてもこの場に残しておけない。
ロンを抱き上げ「俺と来るか?」と聞くと、まるで返事をするかのように「ピー」と鳴く。
その様子があまりにもかわいらしくて、落ち込んで暗かった胸の中に光が射し込むような、少し明るい気持ちになった。
その日から、デックとロンは、いつも一緒だ。