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龍也の口の中を隅々まで舐め回し、舌を吸ったり吸われたりして、唇がよだれでベタベタになった。
龍也は私の短い髪を逆撫でするように、指を絡める。
私は龍也のスウェットの中に手を忍ばせ、上半身を弄る。
次第に、足の間に硬いモノを感じ、私はゆっくりと腰を揺らし、スウェットの上から刺激した。更に、大きく硬くなっていく。
同時に乳首や脇腹をくすぐると、龍也の舌の動きが鈍くなった。
「あきらっ――! ストップ」
勇太のことを聞いた時の怖い表情はどこへいったのか、息を切らしながら頬を赤らめて、蕩けている。
セックスの時、イク直前まであまり表情の変わらない男もいるけれど、龍也は割と最初から表情が変わる。
それが可愛くて、時々こうして無性に苛めたくなる。
「龍也って、他の女の時もそうなの?」
「はっ!?」
「……なんでもない」
馬鹿なことを聞いた。
嫉妬なんて、していい関係じゃない。
「あきら、何を――」
私はスウェットをめくり上げて、首と腕を抜いた。そして、万歳の恰好のまま、スエットを顔に巻き付けた。腕も一緒に。おでこの辺りで袖を結び、余った部分が視界を遮るように垂らした。
「今日は私がスルから、じっとしてて」
私は情けない姿の龍也の耳元で囁き、勢いよくズボンとパンツを脱がせた。
「おいっ! あきら、やめ――」
前触れなしに、裏筋に舌を滑らせると、ピョンッと跳ねた。
舌を離して、今度は先端の割れ目を舐める。また、跳ねた。
面白い。
「んっ……。あ……」
龍也の感じている声に、私も濡れてきたのがわかる。
下着の替えはないから、私は汚れる前にショーツを脱いだ。
龍也には、見えていない。
舐めたり、息を吹きかけたり、撫でたりしているうちに、先端から汁が染み出て来た。
「ひもちひぃ……?」
咥えたまま聞くと、喉の奥にピュッと汁が吹き出してきた。
「んっ――」
「ごめ――」
龍也のDNAが喉を伝う。
私は、舐めて綺麗にして、それから、挿《い》れた。
「あきら! ゴム――」
「いい」
「良くない!」
「いらない! どうせ――」
龍也がガバッと起き上がって、スウェットから腕を抜いた。結んだままのスウェットが首に落ちる。
「どうせとか言うな!」
私の腰を抱く龍也の腕は痛いほど強く、熱い。
私はスウェットの結び目を解き、風通しの良くなった龍也の首に腕を絡めた。
「あき――」
「私の身体の中、いつか龍也でいっぱいにならないかな……」
私が腰を振ると、龍也が恍惚の表情で私の頭を掴み、唇を重ねた。
汗ばむ身体がリズミカルに揺れる。
軋むベッドのスプリング。
悦ぶ身体と嘆く心。
滴る汗と零れる涙。
「龍也……」
息苦しさに耐えかねて、私は彼の唇から離れ、それでも上手く呼吸が出来なくて、結局彼の唇へと戻っていく。
あと何回、こうして身体を重ねられるだろう。
あと何回、龍也は私を求めてくれるだろう。
あと何回、私は自分の気持ちを誤魔化せるだろう。
「あきらっ――!」
絞り出すようなかすれた声で名前を呼ばれ、私は耐えきれなくなって達した。
「あ、ああっ――!!」
お腹の中から突き上げる痺れに身体が跳ねる。
グンッと龍也が最奥に突き立て、動きを止めた。
膣内《なか》で龍也が快感に身を震わせているのがわかる。
規則正しいリズムで龍也のDNAが、本来ならあるべき子宮を目指して飛び出す。
けれど、私には受け止める子宮はない。
私は四年前まで、勇太と付き合っていた。
高校一年で同じクラスになって、高校二年の夏休みに付き合い始め、四年前までの約十年付き合っていた。
途中、距離を置く時期もあったし、その間に互いに別の異性に目を向けたこともあったけれど、やっぱり互いを忘れられなかった。
結婚の約束もしていた。
子供は最低二人、出来れば四人は欲しいとも話していた。
互いの親とも親しかったし、結婚を喜んでもくれた。
「あきら」
セックスの後、帰ろうとした私を、龍也は抱き締めて放さなかった。
龍也のベッドと龍也の腕の中の心地良さに、私はあっさりと屈してしまった。
「あきら」
名前を呼ばれて、重い瞼をようやく持ち上げた。
「携帯、鳴ってる」
「ん……」
龍也が私を手放して、ベッドを出た。急にひやりと身体が冷える。
「ほら」
リビングに置いてあった私のスマホを差し出され、私は仕方なしに受け取った。
「もしもし?」
『あきら?』
母親だった。
『寝てた? 珍しいわね、いつも夜更かししてるのに』
「……どうしたの?」
『あのね……』
言いにくいことなのか、お母さんは言葉を区切った。
それが気になって、私は身体を起こした。
横になったままでは、頭も働かない。
龍也が、脱がせたTシャツを拾い、差し出した。私はスマホを耳と肩に挟み、Tシャツを着る。
「なに? どうしたの?」
『ゆきが結婚するって』
ゆきは、私の三歳年下の妹。
「そうなんだ。相手は前に言ってた上司?」
お盆に帰った時、上司と付き合っていると聞いた。確か、五歳くらい年上の課長。
『そうなの』
「良かったじゃない」
おめでたい話なのに、なぜかお母さんの声は沈んでいた。
「なにか問題でもあるの?」
『ゆき、妊娠してるの』
お母さんの声が沈んでいる理由がわかった。
「……そう。何か月?」
『三か月。それで、早めに結納を兼ねて両家の顔合わせをして、籍を入れたいって』
「そっか」
『お姉ちゃん、再来週の土曜日に帰って来られる?』
「うん。服装とか、後でまた教えて?」
『ありがとう、お姉ちゃん』
「なにが? 妹の結婚相手に会うのは当たり前じゃない」
『そうだけど……』
「お母さん、私はもう吹っ切れてるから」
この言葉を、もう何度言ったかわからない。
『そうかもしれないけど……』
「おめでとう、お母さん。いよいよ、おばあちゃんだね」
『お姉ちゃん……』
「私も楽しみだよ」
互いにおやすみを言って、電話を切った。
カチャカチャと食器がぶつかるような音がして、私はベッドから出た。龍也はキッチンに立っていた。
「何してるの?」
「コーヒー、飲むか?」
「ん」
炊飯器のランプが目に入った。明日の朝ご飯の為に、龍也がタイマーをセットしてくれたのだろう。
「妹が結婚するんだって」と、私はカップにお湯を注ぐ龍也の背中に行った。
「子供が出来たって」
「……何番目の妹?」
「え?」
「二人いるだろ? 妹」
驚いた。
龍也に家族のことを話した記憶がない。
「すぐ下の妹」
「ふぅん」
「どうして知ってるの?」
「何が?」
「私に妹が二人いること」
「お前が言ったんだろ」と言って、龍也がカップを二つ持って、振り返った。
私は私の分を受け取ろうとしたけれど、龍也は二つともテーブルに運んだ。
「OLCでキャンプに行った時、大和さんが外部との連絡は一切禁止だって全員の携帯の電源を切らせたことがあったろ」
龍也がソファに座り、私はその横の床に座った。ソファとテーブルに挟まれて、私は膝を抱えた。
「あの時、お前だけが『無理』だってごねてさ」
「そんなこと、あったっけ?」
「あったよ。みんな、彼氏と連絡取れなくなるのを嫌がってるのかと思って、からかったんだよな」
思い出した。
スマホは電源を切った上に、回収された。
だけど、先輩たちがお酒を飲んで騒ぎ始めた頃に、龍也が私のスマホを持って来てくれた。
「あの時、話してくれたろ。妹と弟が二人ずついるって。いつも家事をしている自分が泊まりで家を空けるなんて滅多にないことだから、心配だって」
そうだ。
修学旅行以外で外泊をしたことがなかった私は、出かける前に晩ご飯のカレーを作り、炊飯器のタイマーをセットした。
私が学生の頃、両親は五人の子供たちを育てるために必死で働いていた。父親はバスの運転手、母親はホームセンターの販売員をしていた。
私と末っ子の妹との年の差は十二歳で、私は中学生の頃から家事全般を手伝ってきた。
「よく、覚えてるね。そんな昔のこと」
私はカップの端から息を吹きかけて、コーヒーを覚ましながら言った。
「覚えてるよ。あきらのことは、なんでも」
龍也はずるい。
私が言われて嬉しい言葉を、あっさり言ってしまう。
勘違いしてしまいそうな、甘い言葉。
勘違いしたくなるような、残酷な言葉。
「私も覚えてるよ」
「なにを?」
「龍也は一人っ子で、母一人子一人で育ったから、早く結婚してたくさん子供が欲しいんだよね?」
「あきら……」
背後で、龍也の声が揺れたのを感じた。
「今結婚しても、早いとは言えないよ?」
「だから、か?」
私はコーヒーを一口飲んで、カップをテーブルに置いた。立ち上がって、龍也の足の上に跨った。
「あきら」
「もっかい、シよ」
龍也の首に腕を回し、引き寄せた。
今度のキスは、コーヒーの味がした。