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書斎に出入りを始め一月が経過した。
とは言っても何か目立ったこともなく平和な日常だ。
シンから文字を教わりつつ、父上の仕事場に入り浸る生活をしていた。
そんな充実した生活をしていた僕はある悩みができた。
その日は普段通り歩く訓練と使用人たちの会話から何かしらの情報収集できないかと思いシンを連れて廊下を放浪していた。
何にでも興味を示すのが子供というもの。屋敷を歩き回り興味を持ったら近づく。年相応の行動だと思う。
この行動で情報収集に関してはほとんど得られるものはない。
1番の目的は体力をつけることなので、日課になっている。
だが、ここ最近ずっとで歩き続け僕の行動のせいでシンを連れ回してしまった。
その結果……。
「キアン様……何故今日の目安が終わっていないのですか?」
「いやーね……あはは。……申し訳ない」
父上の仕事に遅れを生じさせてしまった。
僕が一日中シンを連れて屋敷を彷徨さまよい始めたこと。それに伴い、書斎に僕が来なくなったことで父上のやる気低下。結果、仕事に遅れが生じてしまった。
前者はともかく後者はどうなのかと思うが、……とにかく原因は僕だ。
このままではまずい。
そして現在、たまたま書斎に来たのだが、父上はシンに説教を受けていた。
「何故早くご相談してくださらないのですか?まだ、良いですが、これ以上遅れが生じてしまっていたら取り返しがつかなくなっていましたよ」
「……本当に申し訳ない。だが、一つ言いたい。……この仕事量を一人でやるのは限界があって」
「ならなおさら相談してくださいよ!」
「……はい」
僕は黙って二人のやりとりを見ていた。
主従関係の立場が逆転していた。
解決方法はシンを元の立ち位置に戻すことが最も良い方法だが、僕の行動が制限されてしまう。
だが、僕は思考し、一番の解決策を導き出していた。
よし、僕も専属執事を探そうと思った。
実は、候補は一人見つけてある。
この前、僕のせいで罰を喰らってしまったあの人だ。
そのためには執事が主人を叱り続けるというカオスから脱出しなければならない。
僕は状況打破のための行動を開始する。
「ちちうえ!」
「いや、だからわるかった……何かのアレン?」
「む……」
父上は呼んだだけで弱気の声音から威厳のある声に、シンは僕を少し睨む。
父上……もう僕に威厳あるところを見せようとしても手遅れですよ。
それにシン、話の途中で入り込んでしまって悪いけど、その目は子供にしちゃいけないものかと。
内心突っ込むも、僕もここにいるのはまずいと思い脱出する。
「ぼく、ははうえのところいきますね」
「え……」
父上はショックを受けていた。……いや、そこまで大袈裟に反応しなくても。
「キアン様、私はアレン様をユリアン様の元へ連れて行きますので、作業に取り掛かっていてください。すぐに戻りますので」
「……わかったよ」
あーあ、なんか、僕の発言で父上、落ち込んでしまっているな。
多分今日仕事捗らなさそうだなぁ。
しょうがない。一肌脱いでやるか。シンも早く仕事に入りたそうにしてるし、こうなったのは僕が原因だ。
少しくらい役に立たないと。
それに、僕はこれから一人で行動したいため、シンが一緒ではまずい。
「シン、ぼくひとりでいけるからだいじょうぶだよ!」
「……承知しました。お気をつけて」
「うん」
シンは僕の言葉に少し驚きはしたが、1秒でも早く仕事を始めたいのか、すぐに了承してくれた。
あとはしょぼくれている父上に対してだが、対処が簡単だ。
「ちちうえ!おしごとがんばってください!」
僕は満面な笑顔でそう言って書斎を退室した。
『シン……早く終わらせようか』
『……はぁ、承知しました』
うん、どうやら大丈夫そうだ。
父上は単純だ。
ここ最近扱い方がわかった気がした。