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ᗷᗩᗪ ᗴᑎᗪIᑎᘜ
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皆愛されたいって言っているけど、俺にはいまいち理解できない。愛す方がよっぽど楽なのに。
可愛いものを愛でるのに理由なんてあるのだろうか。
「よーしよし!今日もゾムは可愛いなぁ」
頭をわしゃわしゃと撫で、沢山の愛の言葉をプレゼントする。誰かを愛すのが楽しい。可愛いって沢山言いたい。甘やかして欠伸で出たいっぱいの涙を小瓶に詰めたい。わしゃわしゃ、って言葉に言って、鼓膜を溶かしたい。世界一の立派な子に育てたい。柔らかい頬っぺはお風呂上がりの唇みたいに赤くて、でもちょっとだけセクシーだ。
俺はその人のことが好きなんじゃなくて、誰かを愛する俺のことが好きなのかもしれない。
綿菓子みたいに可愛いゾムは今日もゴロゴロニコニコしている。
「ごろごろ〜」
効果音は可愛いしゾムも喜ぶから大好き。
『ごろごろ〜』
呂律がいまいち回っていない。いっぱいリラックスしているのだろう。ゾムの頭とお腹を撫でていると、ぐるぐると右手が振動した。
「お腹すいたんやね、ご飯もぐもぐする?」
『するー』
ゾムと居る時は脳死で話せるから凄く気楽だ。こんな言葉使いゾム以外には出来ないし、でも使わないと可愛い言葉が勿体ない。
「今日はハンバーグやでー」
「はい、いただきます」
『いただきます』
ぱんっ、と手を合わせて解凍したハンバーグを食べる。小さめな可愛いお皿は、ご飯を食べると猫のプリントが見えてくる。大人ながらテンションが上がってしまうのが小っ恥ずかしい。可愛いからいいけど。
「…ゾムお眠になってもうた?」
お腹いっぱいになったからか、暖かい毛布にくるまっているからか、将又撫で続けたからか、こくりこくりと半目になって眠そうなゾム。今日も生きることを頑張ったし、お昼寝休憩の時間だろう。
『ねむい…』
「ねんねしよか」
午前中に起きれて偉いよ。布団から1人で出れて、寝癖も自分で直せたんやろ?ほんま凄い。呼吸も上手やん。お昼ご飯も食べれたな。噛むのも疲れたやろ。自分で歩けたし、お水も飲めたやん。偉い偉い。沢山めっちゃ可愛かったで。よしよし。なんていうか、1人で頑張るゾムは可愛いけど、頼ってもらうのも凄い嬉しいんよ。いや、でもやっぱりどっちも嬉しいわ。
「……寝てもうた?」
一定のリズムで聴こえる呼吸音は、夢の世界への案内なのかもしれない。普段は見えない瞼も、まつ毛も、無防備な口も。全部が全部キラキラでクラクラする。
「ゾム?」
『なにー?』
「いやぁ?別に嫌ってわけじゃないんやけどさ」
「ちゅー、一旦辞めれる?」
何十分経っただろうか。昼寝から目を覚ましたゾムが、顔にバードキスしてくる。甘え方を知らないゾムからのキスは普段なら滅多にないレアイベント。最初の方は凄く嬉しくてイチャイチャしていたのだが、勃起しすぎて痛い。このレアイベントを手放すのは惜しいが、 これ以上は俺が耐えきれない。
『…俺からのキス嫌?』
ムスッとした表情も可愛い。
「全くもって嫌やないで!?でもー……」
キラキラでふわふわなゾムを汚したくはない。そんな自己満でも、ゾムのためだと信じて絶対に手は出さない。
『……別に気にしとらんし』
嘘つき。鼻伸びてまうぞー。
頬っぺにいっぱいいっぱいの空気を詰め込み、これでもかと言うほど不機嫌です、という顔を見せてくる。可愛い。
「も〜そんな可愛いかったら食べてまうでー」
がおー。口を大きく開いて、爪をたてる猛獣のようなポーズをする。ゾムはわー、なんて煩くない叫び声を上げて布団に包まっている。頭隠して尻隠さず。布団からはお尻だけが顔を出しており、ぷりぷりしていて揉んだら心地が良さそうだ。
言い表せないほど可愛い。何この生物。
手を握るだけでこれ以上ない安心感が手に入った。一生守る。まるでプロポーズのような小っ恥ずかしいセリフは、布団に入ってるゾムには聞こえなかったようだ。
『今なんじ?』
布団から顔だけを出し、此方をチラリと見つめている。
そっか、ゾムはまだ時計が読めないから。
「5時13分、もうそろそろ帰る時間や」
『えー!やだやだ、まだ帰りたない……』
手足をぶんぶんと動かして駄々をこねる。
「お父さんお母さんが心配するで?」
『でもー……』
悩んでいる。とっても悩んでいる。それがどうしようもなく嬉しかった。今までを共に過した家族と、3ヶ月前に出会った俺とを天秤にかけてくれて、嬉しかった。俺だって帰って欲しくない。ずっと居て欲しい、一緒に住みたい。背中を見送りたくない。早く大人になって欲しい。でも、大人になったらゾムが遠くに行ってしまいそうで怖いから子供で居て欲しい。
「また明日来てや、明日はおやつも用意しとくわ」
『ほんまに?……なら帰る』
不満そうな表情をしつつ、帰る準備を始めた。リュックサックを開け、サッカーボールと水筒と子供用携帯とハンカチを入れる。
『ロボロまたね、明日も11時ぐらいに来るから』
「またな、何時でも居るで好きな時間に来いや」
ドアを開けて手を振る。リュックに隠れた小さな背中は悲哀と期待で溢れていた。
俺は、俺なんかが可愛いゾムを独り占めできる休日が大好きだ。今日は土曜日。明日は日曜日。日曜日が終われば月曜日。月曜日は大嫌い。ゾムに会えないし、生きてる自分に反吐が出るから。
小さくなってく背中が見えなくなっても見つめる。家に入ると、ゾムが忘れて帰った何かのキャラのぬいぐるみをゾムに見立てて話しかける。
「ご飯何にする?んー、今日は要らんか」
うんうん、とぬいぐるみの頭を動かした。虚しさを感じてしまう。俺もまだまだだな。
意識がある状態で布団に入ると、嫌な思い出が全部出てきて死にたくなる。だから寝る直前まで映画でも配信でもいい、何かしら見ていた。
内容が頭に入らなくても何も考えないように無理に詰め込んだ。そして気づいたら意識を失い朝になってる。不健康極まりない生活。
朝の8時。玄関にずっと座っている。ずっと、ずっと、ずっと。
世界一好きな効果音が鳴った。
ゾムだ、ゾムが来た。やった、今日は何をしようか。お菓子も用意してるし、喜んでくれるかな。ゲーム、そうだ今度ゲーム買お。ゾムはきっと好きだ、あ、まずは出ないと。ゾム、ゾム。
鍵を外し、 軽い扉を開ける。そこには二人の男女が居た。大人だった。
二人はゾムの両親だった。
言われた言葉は全てが鮮明で、一語一句が脳に染み付いていく。
息子とはどういう関係ですか?
うちの息子に何をしてくれてるの。 通報してやる。 失礼ですがご職業は。 どうして息子を部屋に連れ込む必要が? 何か変なこと教えこんでないでしょうね。この犯罪者が。
叫ぶ母親と冷静な父親。怖くて微動だに出来なかった。
大人が怖い。大人は可愛くない。大人は怖い。大人は気持ち悪い。嫌だ、嫌だ。出てって。
「う゛ッぅ……」
涙が溢れだして止まらない。泣きたくない、泣きたくないのに。
大の大人がみっともなく泣き出したせいか、二人は困惑していた。それからはうんざりした表情で二度と息子に近づかないで。と吐き捨てて出ていった。
「ゾム…、。」
顔中べちゃべちゃになるまで泣いた。横になったせいか、上から零れ落ちた涙は反対の目に入っていく。沢山の液体で濡れた顔は可愛いとは言えないだろう。ティッシュで拭いて、何事も無かったかのように映画をつける。
子供の頃は、大人って凄いと思ってた。
早く寝なくていいし、何でも買えるし、好きな時に遊びに行ける。
でもいざなってみたら思ってたのと違くて、良いことなんて殆ど無かった。
強いて言うなら、子供にとっての大人は、2割3割増にかっこよく見えるってことくらい。
初めて見た時は凍ってしまったのかと思った。だって動けなくなったから。
公園で遊ぶ小学生を見て一目惚れ。そこから話しかける大人なんて不審者でしかないが、不審者でも良いと思えるほど可愛かった。
子供なだけならそこら中にいる、でもそれだけじゃない。ゾムだから可愛いと思えた。小さい、元気、よく笑う、そんな有り触れた物だけに惹かれたわけではない。顔つき言葉遣い髪型体格その全てが完璧だ。そして、視覚で得られる情報だけでなく、それ以外も全てが可愛かった。
「ゾムが、ゾムがいいよ……」
譫言のように何度も何度も呟いた。おもちゃを強請る子供のように何度も何度も欲しいと願った。
きっと今頃。ゾムは両親に怒られているだろう。俺のせいでゾムが悲しんでる。俺なんかのせいで。くそ…畜生。悔しい。悔しい悔しい。俺が大人じゃなかったら、一緒にいれたのに。
『なんで泣いとんの?』
ゾムの声が聞こえた気がした。頭をあげれば俺が世界一好きな顔が見える。
「…えっ、え?…!なんでおるん!?」
嬉しすぎて頭が爆発しそうだ。
『遊ぶ約束したやん、お菓子もくれるって』
『まぁ自転車にGPS付けられたから徒歩で来なあかんなったけどな』
純粋で無垢で、でもたまにズルい。小悪魔みたいな、天使みたいな。
「そこまでして来てくれたん…?」
『……好きやから』
シンプルな答え。たったその一言でこの世に生まれたことに意味を感じる。この幸せを感じるために俺は生まれてきたのだと。
『俺ロボロのことだーいすきやから』
無邪気に歯を見せて笑う。ちらちらと見える奥の乳歯が可愛い。
「嬉しい」
その瞳に写った俺はどんな細胞の形なのだろうか。瞳越しに直した前髪と、ゾムの二酸化炭素の味。我が子の成長を見守る親のように、それでいて無償の愛を与える子供のように。何もかもを共有したい。これが愛なのかはっきりとは分からない。結論が出ないことなんて考えない方が断然いいから。
「は、はは、嬉しい、嬉しい」
硬い地面に頭をつけて、見えているもの触れていたものが現実だと信じて、ただただ笑う姿。
見上げた世界に人の姿は見えなかった。
数年ぶりの音の無い夜だった。
5ヶ月後。ゾムはまたひとつ歳をとっていた。
俺の事なんか適当な過去の思い出だろう。
幸せそうにケーキを囲む家族を窓の外から見つめていた。フードを深く被りマスクと眼鏡をつけて、ただただゾムだけを見つめていた。不審者として近所の住民に通報されるのも時間の問題だろう。
「ハッピバースデートゥーユー」
静かな歌い声は音程がズレることはなく、夜の空気にとけ込んだ。
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サブタイトル『置いてきぼりの未完成』
zmすんが子供なのに最初から気づいていた人は居るかね(◠ᴥ◕ʋ)エドバシリ≡┏( •︠ˍ•︡ )┛
いつだって愛を与えるのは子供の方なんだよね꒰(͏ˊ•ꈊ•ˋ)꒱本当に子供なのはどっちなのやらᯤ ᯅ ᯤ
最近アニメにハマってるんだけど、見るものなくなってきたʕ≖ᴥ≖ʔ
おすすめのアニメ教えて欲しい︿゚Ʒ︿゚Ʒ
またね
コメント
6件
もう、好き。ほんとに愛🫶🫶🫶🫶
数ヶ月前から見させて頂いてました!!初コメ失礼します( . .)" 普段からとても良い意味でドロドロした感じとか、状態の表現の仕方とか、文字だけだけど感情がめちゃくちゃ出てるとことか、毎度テーマもエンドもめちゃくちゃ好きですт т もう鬼才すぎてほんとに……あと色々刺さります 最近更新が多くてほんとに嬉しいです!!陰ながら見させて頂きます!!長々すみません!!
幼児退行かと思った…、ちゃんと子供でした