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GEMSKURAN🪽🌙✧
1
#バレー
わ に
4,414
「作戦通りに行くぞ」「任せて!」
そういって細い腕で力こぶをアピールする彼女
1本の真っ直ぐな廊下の奥、扉の前に化物がいる。
彼女からもらったバットを構える。
よく見たら名前が書いてある。
ー真白ー
良い名前だ。
純粋無垢な感じの彼女に合っている
石を前に投げ、力を込めてバットを振る。
石は勢い良く化物の額に当たる。
「気付いたな」
こっちに向かって歩みよってくる。
怒っているようではない。
だがそれでいい。
化物が扉の前から離れた。
こうして廊下で争っている内に、彼女は教室内を移動して扉の前に行く。
教室内は老朽化により壁に穴が空いており小さな彼女なら自由に移動できるだろう。
化物の奥に彼女が扉の前に辿り着いたのを見届ける。
彼女が扉内の散策を終えるまで俺はこいつを引き付ける。
「耐えてくれよ俺…」
重い扉を開けると研究施設が広がっていた。
壁中を這う配線、丸い水槽、ボタンやレバーがいっぱい。
何がなんだか私にはよく分からない。
観察しながら歩いていると、ある資料を見つける。
何だか気持ち悪い。
それは人間や虫の臓器や体の部位の写真と共に文章が添えられた医学書のようなものだった。
不気味なのがその写真、人と虫が融合したような、人のつるつるした感じと虫のごちゃごちゃした感じが混ざっていて、まるでさっきの化物さんみたい。
非人道的な実験を行っていたのは分かるけど、何のために?
町の人がいないのと関係はあるの?
あれ、私は…?
「…」
ハッと我に返る。
戻らなくちゃ。
まだ化物さんと戦ってるに違いない。
扉を開けて廊下に出る。
誰もいない。
「お願い、無事でいて…!」
必死で探す。
「どうしよ、どうしよ…」
カキーン!
ん?誰かが外で野球でもしてるのかな。
誰が?
窓から校庭を見下ろすと、戦っているはずの二人が野球をしていた。
「えっと…どういうこと?」
彼女が校舎から出てきた。
「どうだった?収穫はあったか?」
彼女は呆然として言う
「もっと話すべきことがあるような気がするんだけど…」
「なんか野球が好きみたいでさ」
遡ること30分前…
しまった、バットを落とした!
これはマズい。
そう思ったとき化物はバットを拾い上げ、構えた。
野球に詳しくない俺でも分かる構え。
まさに今から玉を打つバッターのような綺麗なフォーム。
「やってやるよ」
何かを察した俺は手に持っていた石をストライクゾーン目掛けて投げる。
化物がバットを降った刹那、石は窓ガラスを突き抜け空高く舞う。
「こりゃすごいな…」
化物は続けて校庭を指差す
「ふ、なるほどな」
「…っていう感じで」
「納得できないんだけど!?」
化物は素振りをしている。
よっぽど野球が好きらしい。
「ま、まぁとにかく無事で良かった!」
「悪いやつじゃないんだろうな。ただ正体が分からないだけで」
「そのことなんだけど…」
化物がこちらへやってくる。
「名残惜しいけどそろそろ行かなきゃ、ここでお別れだね」
「見た目は怖いけど楽しかったよ、また会おう」
化物は何も言わずに手を振る
遠く離れても、見えなくなるまで手を振っていた。
もう空が赤く染まっていた。
夕日が眩しい。
俺達は町に続く畦道を歩いていた。
周りには田んぼが広がっており、遠くには電波塔がそびえ立っている。
田んぼの虫達の声に混じり、ひぐらしが鳴き始めた。
「野球好きの化物か…いよいよ現実味が無くなってきたな」
「そうだね…」
「浮かない顔だな」
「何か忘れてるような気がするんだよね…」
「…あ!私のバット返してもらってない!」
「そんなことか、あいつも気に入ってたしいいだろ」
「まぁそうなんだけどさぁ」
夕日に向かって歩いていく二人の影が伸びる。
少女の影が一瞬、揺らいだ気がした。
コメント
1件
第5話読みました! 化物がまさかの野球好きで、バット振ってる姿にほっこりしちゃった(笑) 「悪いやつじゃないんだろうな」って主人公が言うところ、なんかじんわりきた。あと研究施設の描写が不気味で…この世界の謎がまだまだありそう。最後の影の揺らぎも気になるな。 続き、ちゃんと読ませてもらいますね🌙