テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
〈 rdside 〉
rd「行ってきまーす」
誰もいない小さな家にそう言って俺は何度も通ったことのある見慣れた道を歩く。
俺は生まれが東京で学生生活の全ては東京だったけど、大人になるにつれてあの街の狭さに気づいてしまった。
狭くて、騒がしくて、苦しい街。
それに比べてこの町は人が居なくて静かで広々としている。
まぁさすがに何も無さすぎるんじゃないかとは思うけど。
俺は元々この町に来てなにかしたいというのは無かった。田舎に来れればそれで良かった。
でも最近になってまた医療に詳しくなろうと思った。
俺は元々医療系の職に就こうと思って勉強してきてそこそこいい大学にも入った。
でも医療となれば患者の死を何度も見るわけで、それが俺には耐えられないと思った。
ましてや俺なんかは人の心に寄り添うなんてことが出来ないから患者に優しい言葉をかけられないだろうと思いその夢は呆気なく挫折してしまった。
だけど医者にはなれなくても医者の補佐ならできるのではないか?と近所の方に言われ俺はまた医療関係の勉強をしている。
カランカラン ヾ
洒落た音を立てて開く大きな扉の向こうには光の束を集めたような山吹色の髪をした彼、pnがいた。
pn「あっらっだぁさん!!」
rd「ぺいんとじゃん、やっほー」
pn「今日も相変わらず雨ですね〜」
rd「まぁしゃーない」
雨の日の図書館は本の匂いと図書館の店員がやっているカフェのコーヒーの匂いが合わさり独特の雰囲気を醸し出していた。
pn「今からお昼食べようと思って!!
らっだぁさんも一緒に食べますよね?!」
最初から俺に拒否権がないことに少し笑ってしまったけど、俺も何も食べていなかったし特に断る理由も無かったからそのままカフェへ入っていった。
俺らの出会いはまさに運命的なもので、pnに振りかぶろうとしていた本を俺がキャッチしたのがはじまり。
偶然読みたかった本も同じで東京から来たということも医療に興味があることなども同じだった。
俺はpnに医療の職を目指している事は言っていないし別に言う必要もない。
pnに関しては医者や補佐を目指している訳でもなくただ興味があったから医療系の大学へ進んだのだという。
pnは中々の気分屋でよく笑う太陽のような人物だった。
俺はこの町にきて2年ほど経つけど友達はいなかったからpnに出会えたのは俺の今後の人生を動かす歯車が1つ見つかったような感覚だった。
pn「らっだぁさんって 〜〜〜 !!」
rd「らっだぁでいいよ 笑ヾ」
pn「え、いいんですか?」
rd「うん、ていうか別にタメでいいし」
俺もこんな冷たい言い方をしなくても…なんて思うけど俺は他人に無関心な人に囲まれた都会で育った以上こういう正確なんだ。
pn「やったぁ ッ !! らっだぁ!!」
嬉しそうに俺の名前を呼ぶ彼はまさに子供のようで俺と2つしか年齢が変わらないことを忘れてしまいそうになる。
とにかく弟感が強い彼だが妹がいて長男らしい。
兄らしい所もあるのかな、なんて最初は思っていたが今まで一度もそんなことを感じてない。
こんなに正反対な俺らだけど一緒に居て何故かすごく居心地が良い。
まぁ俺の勝手な感情に過ぎないけど。
俺にも相棒…弟…友達…親友。どれが当てはまるのかは分からないけどそんな存在がやっとできたようで嬉しかった。
pn「ていうか今度俺の家で遊ぼうよ!!
あ、もちろん泊まりでな?」
rd「え、なんでよ 笑ヾ」
何を提案し始めたかと思ったら家に招かれた。
俺の家が広いだの景色が綺麗だのありとあらゆる箇所を自慢されて俺は来週ぺいんとの家に泊まりに行くことになった。
rd「来週ね….図書館集合でいいの?」
pn「うん!! 一緒にここでお昼食べてから!!」
rd「毎日ここで食べて飽きないの?」
話を聞くとどうやら飽きないように毎日飲み物と食べ物を違う組み合わせで頼んでいるんだとか。
俺はここのカフェを利用するのが初めてだったから彼の一押しのカフェオレとサンドウィッチを頼んだ。
味はちゃんと美味しくてぺいんとも満更でも無い顔をしていたが作ったのは決してお前では無いから調子に乗るな、と言ってやった。
昼食を食べ終えると俺らはあの小説について語り合うことになった。もちろんぺいんとが発案者。
pn「やっぱハッピーエンドっていいよね」
rd「そう?俺はバッドエンドも嫌いじゃないけど」
pn「俺も別にバッドエンドが嫌いなんて一言も言ってない!!」
俺らが読んだ小説は主人公が家出をして東京の街に飛び込むという所から始まるラブストーリー。
住むところもなく公園にいた主人公を救った女性とそのまま恋仲になり2人で幸せになる…というどこにでもありそうな話。
でも言葉一つ一つに儚さがあってどこか切ない話だった。終わりもなんだか不自然な終わり方で続編を匂わせるものだった。
rd「これって続きあんのかな」
pn「あ〜〜たしかに…でもありそうな終わり方だったよね」
rd「うん。ていうか今回ハッピーエンドだから続編はバッドエンドとかありそうじゃない?」
pn「うわっ何そのリアルな考察!!」
rd「そうか? 笑ヾ」
そんな300ページの本について1時間ほど俺らは語った。
その後ぺいんとが急に眠くなってきたとか言って俺の隣で爆睡こき始めた。本当に気分屋だよな。
俺も今日は本を読む気分じゃなかったから黙って1人で勉強を始めた。
最近はずっと癌について勉強している。
癌に関しては余命宣告をされる場合が多いがそで命を諦めるのは勿体ないと思う。
俺は癌の進行を遅らせ、取り除く手術が可能なんじゃないかと思い調べている。
まぁ最近と言ってもここ半年は調べているかな。
ぺいんとにも、「お前癌好きなの?」なんて調子乗ったことを言われたくらいだし。
実は2年ほど前、ぺいんとの父親が癌で亡くなったらしい、ぺいんとが医療について調べている理由はきっとそれなんじゃないかと思った。
だからぺいんとの父親の癌について教えてやる為にも俺は今必死に勉強している。
コメント
4件
え〜これは伏線か何かかな……もしそうだったら結構いい。 え、2人とも医療?pnがハピエン良いよね宣言?rdがバドエンも良いよね宣言?はぁーこれいくらでも伏線張れますよ。 rdとpnがその小説に酷似するかのように恋仲になり、pnが癌で伏せ(癌って先祖代々みたいなこと言うしね)rdが助けようと頑張るけど手遅れになってしまうpn……あの時のrdの「俺はバドエンもいいと思う」が実際に起こってしまう…… (←これただの我の妄想。外しまくってたらクッッッッッッソ恥ずい😇) 長文失礼✋
めちゃめちゃ仲良くなっててなんか嬉しいです(?)