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窓の外から見えるは荒れ果てた街並みばかり。空は未だ青空を見せず、灰色の世界が私の眼に映る。
その空模様は私の今の気持ちを代弁しているかのような、そんな空だ。
この世界で生きているのは私だけ……
もうあなたはここにはいない…
けど、確かに私の『心』には私を生んでくれたあなたがいる。あなたがくれたものは私にとってその全てが思い出で宝物だ。
『名前』『感情』『何気ない日常』そして『あなた自身のこと』
私は感謝しています。私を生んでくれ世界を教えてくれた。あなたのことは私の記憶にしっかりと刻まれてます。今でもあの日々を鮮明に思い出せる程に
私が初めて世界を見た日、あなたは泣いていた。
とても印象に残っています。私がゆっくりと起き上がり辺りを見渡す。白を基調とした部屋で機械などが沢山見られました。その時点で私は自分が『造られた存在』というのを自覚しました。さらにそれを確信的なものにしたのは私の身体で、人にかなり近く造られているが肌質は温度を持たない鉄の板。人の持つ五感はおろか、感情なるものはまだ芽生えてなかった。そんな私を見たあなたの第一声は「良かった…」という安堵の一言でしたね。
「良かった……。本当に良かった。」
「?」
「あなたは?」
「あ、あぁ…。済まない。」
「私は『サダハル』という者だ。君をこの世に誕生させた本人だよ」
そう名乗った当時のあなたはまだ若くて四十代後半くらいだけど少し白髪が見え隠れしてる頭髪に、少し寄れた白衣を着てて、なにより私が目を覚ましたことに対して泣いたからか、顔は涙で歪んでしまっていたけれどなんとなく優しさは感じ取れたかな。
「サダハル……。では、サダハル。私はなんだ?」
「君は……君は私の子供だな。」
「子供…私はサダハルの子供か。」
その言葉にあなたは顔を曇らせてましたね。
「……あぁ。君は私の子供だよ」
「では、私はあなたの子供に当たるのならば名前は一体何になるのだ?私の得ている情報の中には人々にはみな名前があるという事だ。私のような造られた存在で言えば型式番号か?」
「まぁ、それに当たるかな。でも、名前は一つの個性でもあると思うよ。」
「その個性をあなたが私にくれるのですか?」
「あぁ……。」
今思えばあの発言はあなたにとって酷なものでしたね。それでもあなたは、嫌な顔せず私の問いに答えてくれて嬉しかったです。
「そうだな…。じゃあ『マナ』てのはどうだ?」
「マナ……。それが私の名前。それが個性…」
「気に食わなかったら別の名前にするが…」
「いえ、私があなたに案を仰いだものに否定はしません。今日から私はマナと名乗ることにします。」
「そうか。気に入ってくれたなら何よりだ。」
これが私が初めて世界を見た日に起きたあなたとの出会いでした。