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16年目のKiss

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16年目のKiss

3 - 夢に見る、会いたくなかった男-3

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2024年05月13日

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*****


「千恵! 久し振り~」

声をかけられて、私は頭の上に大きなハテナマークを浮かべた。


誰!?


真奈美の隣に座って手を振る人は、肝っ玉母ちゃんと呼ぶに相応しい体格と、オーバーアクションと、イタリアンバル店内の全員に私の名前を印象付ける大きな声。

私は足早に二人を目指す。

店内の一番奥、透明なパーテーションで仕切られた半個室には、十人は座れそうなテーブルと、七脚の椅子がある。

パーテーションの中に入ったはいいが、私の名前を呼んだ彼女が誰なのかを考え、挨拶に困った。

それは、すぐに二人も気が付いたようだ。

「やだ、わかんない!? 香苗《かなえ》だよ」

名前を聞いて思い出すのは、背の順で百七十センチに少し届かないくらいの私の後ろにいた、バレー部のキャプテン。

身体の線が細くて、手足が長く、モデルのようだった。

あれから二十三年。

「子供三人産んだらこんなになっちゃったよー!」

ガハハッと笑いながら、香苗は自分のお腹の肉を掴む。

「千恵は変わんないねぇ? 離婚したばっかで激やせしたわけじゃない?」

「デカい声で離婚とか言うなよ」

背後からの声に振り返ると、懐かしい顔があった。

「あ、ホント変わんないな、篠塚《しのづか》は。あれ? 篠塚で合ってる?」

聞かれたのは、私が誰かということか、離婚を経た私の苗字のことか。

「合ってるよ」と、答えた。

どちらにしても、合っているからだ。

「簑島《みのしま》だよね?」

「おう。なんだ、同い年には見えないな」と、簑島は自分の頭を撫でた。

すっかりボリュームのなくなった髪が、ぺたりと横たわってしまう。

「ははは……」

真面目一辺倒だった簑島は、印象は当時のままで、今日もきっちりスーツにネクタイまで締めている。

真奈美が下座に一人で座り、香苗はその斜向かいの壁側、簑島は香苗の隣に座り、私は簑島の隣に座った。

「簑島、なんで休みの日までスーツ?」と、香苗が聞く。

「あ! この前、おっさんくさいって言ったの、根に持ってる?」と、真奈美。

「スーツで来ようと思うくらいにはな」と、簑島。

「この前?」

「はははっ。一年前はこの前じゃねーよな」

「クラス会。千恵は欠席だったでしょ?」

「ああ……」

柚葉からメッセージが回ってきた気がする。

「失礼致します」と、スタッフが注文用のとブレットを持って入って来た。

「ファーストドリンクは全員お揃いになってからにしますか?」

あと三人が来るようだが、私が知らされた集合時間は過ぎた。

「頼んじゃお」と真奈美が言った。

「ビールでいいよね?」

ファーストドリンクのみスタッフに直接オーダーし、後はタブレットでの注文になると説明を受ける。

パーティープランで予約済だが、単品で追加オーダーも可能だという。

「ね、あとは誰が――」

「――三人は仕事の後で来るって言ってたから、先に始めよ」

「近藤《こんどう》も来るんだろ?」と、簑島が真奈美に聞いた。

「うん」

「やっと離婚成立したんだ?」

「みたい」

「近藤?」

憶えのない名前に口を挟むと、簑島が私を見た。

「隣のクラスの近藤、憶えてる?」

隣のクラス、と言われて思い出す。

「ツーブロックにして来たら先生に怒鳴られて、次の日には坊主になってた奴!?」

「やっぱ、近藤っていえばソレだよねぇ」と、香苗が笑う。

「近藤、今はイ〇ンに入ってる美容室の店長してるんだけどさ」

「美容師なの?」

「そ! 今じゃ、ツーブロックを作る方」と、真奈美。

「本人は?」

「ロン毛。パーマかけて結んでんの」

「うそぉ!」

「ホント、ホント!」

四人の笑い声が響く中、ファーストドリンクが運ばれてきた。

「ひとまず、乾杯しよ!」と、真奈美がジョッキを持ち上げた。

「バツイチにかんぱ~い!」

「そんなのに乾杯とかしないから!」と言って、香苗がさっさとジョッキに口をつける。

私と簑島は笑いながら互いのジョッキを軽く合わせ、一口飲む。

そして、簑島に「で?」と話の続きを催促した。

「で、一年前のクラス会に飛び入り参加してたんだけどさ? 泥沼離婚調停中だって言ってたんだよ」

「え」

思わず笑顔が引きつる。

「なんか、デキ婚したんだけど、生まれた子供が自分の子供じゃなかったらしくて」

「うわぁ」と、思わず心の声が漏れる。

現実にあるんだ、と思った。

「なのに、奥さんが別れてくれなくて、調停だって」

「旦那が調停を申し立てるのって珍しいよね」と言った香苗のジョッキの中身は、既に半分。

「そうなんだ?」

「最近はそうでもないのかな? 私の時は、妻側からの申し立てが多いって聞いた」

「香苗、調停したの?」

「したよー。子供三人もいるんだよ? きっちり養育費貰わないと! 口約束なんて、当てにならないじゃない」

「なるほど」

「千恵はしなかったの?」

「私は――」

料理を持ったスタッフが歩いて来るのに気が付いて、私は言葉を切った。

すぐに、スタッフから声をかけられる。

「――失礼致します」

スタッフは両手に持った大皿をテーブルの中央に置いて。「サーモンと玉ねぎのカルパッチョと自家製ピクルス、生ハムとサラミの盛り合わせです」と説明をして去る。

「美味しそう!」

満面の笑みでそう言うと、香苗が取り皿とトングを持つ。

「全員分、分けちゃっていい?」

「皿ばっか増えるから、後の奴らは後でいいんじゃないか?」と、簑島。

「そ? あ、皿分ける?」

「一緒にのっけちゃっていーよ」

香苗が率先して、テキパキと料理を取り分ける。

私と真奈美は手持ち無沙汰で顔を見合わせ、笑った。

「そういえば、香苗と簑島って一緒に学級代表してたよね?」

「そうそう」

「体育祭の参加競技も、学校祭の出し物も、二人でテキパキ決めてくれて」

「仕切りたがりでウザがられてたけどね」

料理を載せた皿を、香苗が簑島に渡し、簑島が私に渡す。

「あのクラス、自己主張が強いクセに適当な奴ばっかだったじゃん。香苗と簑島くらいしっかり者が仕切ってくれててちょうど良かったんだよ」

真奈美がカルパッチョを食べて、「ん! おいし」と唸る。

「そう言ってくれて、嬉しいわ。別れた旦那には、『お前に仕切られるばっかの人生なんてうんざりだ』って言われたけど」

「え」

三人の視線を集めながら、香苗は生ハムを頬張る。

「結婚前は、優柔不断な自分にはしっかり者の私が必要だ、なんて言ってたくせに」

「子供三人もいるのに、そんな理由で別れたのか?」

「まさか。決定打は『騙された!』って泣かれたことかな」

「騙す!?」

「泣かれた!?」

私と真奈美が同時に違うことを聞き返し、香苗がアハハッと笑った。

「美人でスタイルのいい私が好きだったんだって。友達に羨ましがられて、自慢だったって。けど、子供産む度に太ったし、性格もキツくなって、今では一緒に歩きたくないって言われた」

「はぁぁぁ!?? なに、それ。ふざけんじゃないわよ!」

自分でもびっくりするほど甲高く大きな声が出た。

それくらい、ムカついた。

「何様よ! 誰の子供産んで育ててると思ってるのよ! 子育てがどれだけ体力必要か、お前がやってみろって――」

「――でけー声だな。苦情くるぞ」

興奮気味に声の方を睨みつけると、男二人と女一人が立っていた。


な……んで……。

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