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side|天羽萬里《あもうばんり》
俺はそっと彼女の背中に手を這わした。
彼女の背中はまるで陶器で出来ているように真っ白で滑らかだった。
彼女を後ろから抱きしめながら、背中にキスを落とすと…
彼女が震えているのが分かった。
「琴宮…?」
俺はキスをしながら、彼女に声をかけた。
「ひ、酷すぎます…!
こんなの…!」
彼女は|嗚咽《おえつ》を漏らしながらそう言った。
俺には何が酷いのか、分からなかった。
どんな女も俺に言い寄られたら喜んでいたし、肉体関係を迫れば俺をすぐに受け入れた。
だから、琴宮も…
そう思っていたのに、彼女は幼い子供のようにイヤイヤと泣きじゃくった。
俺はそれ以上キスする事も手を這わす事もできなかった。
「嫌い…」
「え…?」
「大っ嫌いです!」
彼女はそう言うと嗚咽と泣き声を漏らして本格的に泣き始めた。
ここまで拒否されたのは初めてだった。
俺は彼女の背中のチャックを上げると、彼女を抱き上げた。
「天羽…オーナー…?」
「萎えた。
家まで送っていく。
チーフコンシェルジュには俺から連絡を入れておく。」
琴宮をリムジンに乗せると俺は彼女のマンションに車を向かわせた。
彼女は、両腕で自分を抱きしめながら、今なお震えていた。
俺はどうすれば良いか分からなかった。
プレゼントも喜ばれず、俺の身体にも溺れない。
極め付けに言われた言葉は、大っ嫌い、だ。
「琴宮、もうしないから…」
「酷いです…ぅっ…!
心を入れ替えてくれたって…
そう思っていたのに…」
琴宮は言った。
心を入れ替える?
俺は一体どうすればいいんだ?
何が間違えていたんだ???
震える彼女を抱きしめてあげる事も、手を握ってあげる事もできないまま、リムジンは彼女のマンションに着いた。
「琴宮…
部屋まで…」
「結構です!」
そう言って彼女はリムジンのドアを激しく閉めた。
俺は琴宮が中に入っていくのを見届けて、深いため息を吐いた。
見たいのは、あんな泣き顔じゃ無いんだ。
あの笑顔をもう一度見るためには、俺はどうしたらいいんだ?
エルメスのバーキンもGUCCIの腕時計も俺はリムジンの座席に投げ捨てた。
こんなものじゃダメなんだ。
…城でも買うか?
馬鹿な…
きっと彼女は喜ばない。
何故かそれだけはわかった。
俺はリムジンを出発させると、チーフコンシェルジュに連絡して、琴宮は体調不良で帰らせた、と伝えた。
お金じゃ、人の心は買えない…のか…?
その時に俺は初めてそう考えた。
とりあえず、琴宮の心はお金じゃ買えないらしい。
そう思うと、何故か少しだけ嬉しかった。
俺の初恋はやっと入り口に差し掛かろうとしていたのだった。
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