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コメント
2件
天才すぎますって!素敵な作品有難う御座います!
最高天才!!✨💯🩷🤍🩷
夕方の楽屋。
衣装のままソファにだらっと座って、
次の出番までの空き時間。
テレビで流れてたのが、たまたま童話特集。
「白雪姫ってさ」
柔太朗がぼんやり言う。
「キスで起きるの、都合よすぎじゃない?」
隣でスマホいじってた勇斗が笑う。
「夢あるじゃん」
「いや普通起きないでしょ」
「やってみないと分かんなくない?」
その一言に、柔太朗が顔を上げる。
「は?」
勇斗はこっち見ないまま、軽く続ける。
「例えばさ、誰か寝てたら」
「キスしたら起きるかどうか」
「検証できるじゃん」
さらっと言う。
軽いノリ。
でも、どこか意味深。
「……誰でやるの」
「え、柔太朗やってくれんの?」
「やるわけないでしょ」
即答。
でも。
「はやちゃんが寝てたら、考える」
ぽろっと出た。
勇斗が一瞬だけ手を止める。
「へぇ」
少しだけ口角が上がる。
「覚えとく」
その時は、ただの軽口だった。
———
深夜。
二人でサシ飲み。
照明は落ちてて、空気はゆるい。
「……はやちゃん、弱」
柔太朗が笑う。
勇斗はソファに沈み込んで、もう半分寝てる。
「ちょっと寝るわ……」
「ここで?」
「すぐ起きる……たぶん」
そのまま、目を閉じる。
数分後。
完全に寝てる。
「……はぁ」
呆れたようにため息。
でもどこか優しい。
「トイレ借りるね」
返事はない。
———
戻ってくる。
同じ体勢。
微動だにしない。
「マジで寝てるし」
近づく。
しゃがむ。
顔を覗き込む。
呼吸は静かで規則的。
長いまつげが影を落としてる。
うるっとした唇。
(……近)
無意識に、距離が縮まる。
そのとき、ふと思い出す。
——白雪姫。
「キスで起きるの、都合よすぎじゃない?」
「やってみないと分かんなくない?」
あの会話。
頭の中で再生される。
(……いや、まさかね)
でも。
(起きたら、面白くない?)
心臓が、ドクンと鳴る。
「……一回だけ」
小さく呟く。
手が少し震える。
逃げるなら今。
でも。
逃げない。
ゆっくり顔を近づける。
呼吸が混ざる距離。
ほんの一瞬迷って——
そっと、触れる。
唇。
柔らかい。
一瞬。
本当に、一瞬。
離れた瞬間。
(やば)
一気に現実が押し寄せる。
「なにやってんの俺……」
耳まで熱い。
立ち上がる。
逃げる。
ドアに向かう。
その時。
ぐっと、腕を掴まれる。
「——っ?!」
引かれる。
バランス崩して、ソファに押し戻される。
さっきまで寝てたはずの勇斗が、こっち見てる。
目、完全に覚めてる。
「さっき何した?」
低い声。
逃げ場、ゼロ。
「……」
視線が泳ぐ。
でも、無理。
「……キス」
小さく。
勇斗の眉が、少しだけ上がる。
「へぇ」
「なんで?」
「……寝てると思ったから」
言い訳。
でも本音。
勇斗が、ゆっくり体を起こす。
距離が近づく。
「白雪姫の検証?」
息が詰まる。
「……覚えてたの」
「当たり前でしょ」
少しだけ笑う。
「で、どうだった?」
「……起きたじゃん」
「うん」
一歩、詰める。
膝が触れそうな距離。
「じゃあさ」
低く。
「もう一回やってみる?」
心臓が跳ねる。
「……無理」
首を振る。
でも、完全には拒否できてない。
勇斗がそれを見逃さない。
「じゃあ」
手首を軽く引く。
逃げない程度の力。
「俺からでいい?」
一応の確認。
柔太朗は、目を逸らさずに聞く。
「……嫌って言ったら?」
「やめる」
即答。
間もなく。
「でも」
少しだけ近づく。
「言わないでしょ」
図星。
息が浅くなる。
「……言わない」
その瞬間。
頬に手が触れる。
指先が少し冷たい。
「検証、続き」
囁く。
次の瞬間——
キス。
さっきより、少し長い。
離れたあとも距離が近いまま。
呼吸が混ざる。
「これで確定」
小さく笑う。
「起きるね、ちゃんと」
柔太朗が、少しだけ睨む。
「……ふざけんな」
「ふざけてないよ」
真面目な目。
「柔太朗からされたの普通に嬉しかったし」
心臓が止まりそうになる。
「……は?」
「だから」
距離を、もう一度だけ詰める。
「寝たフリした」
頭が真っ白。
「……最低」
「知ってる」
でも、少しだけ優しい声。
「でもさ」
「逃げるくらいならしなきゃよかったでしょ」
言い返せない。
「……」
沈黙。
その中で、柔太朗が小さく息を吐く。
「……もう一回」
勇斗が目を細める。
「なに?」
柔太朗が、少しだけ視線を上げる。
「今度は……起きてる状態で」
勇斗の表情が、少し変わる。
「ほんとに?」
「うん」
今度は逃げない。
自分で決める。
その夜。
白雪姫の“続き”は、
ちゃんと二人で確かめることになった。