テラーノベル
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街まで歩いていくとなると、着くのは明日になる。仕方ない、夜は森で野宿だ。野宿のための道具は、背中に負った大きな袋に入っている。日持ちのする硬いパンや干し肉もある。
「でもなぁ…夜の森は魔獣が出るからなぁ。やっぱり村で馬を買えばよかったかな。でも売り物の馬はいないと、おばちゃん言ってたしなぁ」
まだ昼を過ぎた所だから、高い木々が並ぶ森の中にも明るい場所がある。これが夜になると、月明かりがあっても周囲が闇に包まれて、何も見えなくなる。そしてその暗闇から魔獣が襲ってくるのだ。
しかしずっと旅をしているリオは、魔獣が出ない道を選び、魔獣に見つからないように野宿ができる。でも絶対に安全ではない。稀に魔獣と出くわすこともある。そういう時は、全速力で逃げるに限るんだけど。
「なるべく日が暮れる前に森の中を進むか」
リオは背中の荷物を背負い直すと、かなり足早に歩き出した。
しかし半刻も経たないうちに、木に凭れて座り込んだ。自慢じゃないが、リオは体力がない。金を稼ぐために力仕事をすることもあるけど、程々に手を抜きながらやっている。旅も細切れに休みながら進んでいる。そうしなければ疲れて熱を出してしまうことがあるからだ。
「あー…疲れる。無理しない方がいいかなぁ…」
木に背中を預けて空を見上げていると、水が流れる音が聞こえてきた。近くに川があるようだ。リオは掛け声をかけて勢いよく立ち上がり、音の方へと近づいた。
「おおっ、すごい!」
急に視界が開け、川が現れた。あまり深くはない川に透き通った綺麗な水が流れている。リオは水辺りに近づき、膝をついて川に手を入れた。
「冷たくて気持ちいい!馬車を引いてた時は街道だったから気づかなかったけど、川があったんだな」
冷たい水に触れてテンションが上がる。
リオは荷物を横に置くと、両手で水をすくい顔を洗う。ついでに口をつけて飲もうとしたその時、「飲むなっ」と怒鳴られた。
リオの肩がビクッと跳ねる。その振動で手のひらの水を零した。
「誰だよっ…」と怒鳴り返しながら振り返ると、真後ろに先ほどの騎士が、先ほどよりも怖い顔で立っていた。
「あっ!さっきの悪…」
「あく?なんだ?」
「…いや、ギデオン…さん。ここで何してんの?」
やべぇ…悪魔って言うところだった。だって顔が怖いんだもん。
ギデオンは安定の怖い顔でリオを見下ろしたまま口を開く。
「何してるはこちらのセリフだ。川の水をそのまま飲めば腹を壊すぞ」
「えー?大丈夫でしょ。たまに飲んでるけど」
「なんだと?」
ギデオンの眉間の皺が、更に深くなる。
えー、なんでそんな怒ってるんだ?俺、あんたに何もしてないよね?
とりあえず首が痛くなってきたので立ち上がり、正面からギデオンの顔を見あげた。
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