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ギデオンは背が高い。リオより頭一つ分は高いだろうか。 羨ましい。でも俺も、まだまだ成長期だから伸びるはずだ。ギデオンと変わらないくらい伸びるはずだ。だから前言撤回。ちっとも羨ましくなんてないからな!
そんなことを考えながら、リオは無意識に睨んでいたらしい。
「なんだその目は?」と怖い顔の男に怖い目で睨み返された。
へへーんだ、睨まれたって俺は平気だもんね!ギデオンは怖い顔してるけど紳士的でいきなり暴力をふるわないってわかってるから怖くない。怖いのは、優しい顔の裏で何を考えてるのかわからない人だ。
「言いたいことがあるなら言え」
「なぁ、なんで飲んじゃダメなの?」
「川の水には様々な菌がいる。飲むなら煮沸してからにしろ」
「でも今まで腹を壊したことないけど」
「なに?頻繁に飲んでたのか?」
「いや?基本は水筒を持ってる。今日は暑くないから大丈夫かなと思って持ってなかったから」
「ちっ」
え?今舌打ちした?なんで?俺が飲み水を持ってなかろうが、川の水を飲もうがアンタには関係ないよね?話の通じない会話って疲れる…。
リオは無言で荷物を背負うと、ギデオンに背を向けて歩き出した。
リオの後ろから小石を踏む音が聞こえる。ギデオンがついてきているようだ。初対面の時の印象で俺のことが嫌いなのはわかっている。先ほどの態度でそれを再認識した。なのになんで構ってくるんだ?
しばらくは無視して歩いていたけど、リオが先に折れて振り向いた。
「なんでついてくんの?まだ何か用があんの?」
「…いや」
「用がないなら先に行きなよ。馬があるだろ」
「…おまえ…リオはどこに行く?」
「森を抜けた先にある街だけど」
「俺も」
「はい?」
「俺もその街に用がある。だから…」
「なに」
「だから俺の馬に乗れ。徒歩だと夜までに街に着けないだろう。夜の森は危険だ」
「……」
リオは足を止めて考えた。
ギデオンの馬に乗る?一緒に?嫌だ、すごく嫌だ。筋肉で硬そうな身体の騎士に密着して乗るの?それに借りを作りたくない。でも…暗くなる前に街に着きたい気持ちもある。
上を向いたり下を向いたり唸ったりしていたら、「無理にとは言わぬ」と今度はギデオンが背中を向けた。
「あっ、待って待って!乗るっ、乗ります!」
リオは慌ててギデオンの上着を掴んだ。
俺は厄介な性格なんだ。相手が近づいてくると逃げたくなり、去っていくと追いかけたくなる。ギデオンに関しては去ってもらっても構わないのに、つい追いかけてしまった。
ギデオンが「そうか」とこちらを向いて息を吐いた。
ん?あれ?もしかして今、笑った?相変わらず怖い顔だけど、少しだけ、ほんの微かに目が柔らかくなったような…気のせいか。
ギデオンが軽やかに馬の背に乗り、俺に向かって手を伸ばす。
その手を掴むと強い力で引っ張られ、背中からギデオンに包まれるような格好で馬の背に乗った。