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それは夢だと思った。だがどうやら違った。毛布に巻かれるように眠りこけていた私は、腕の中に埋もれたウサギを凝視した。
「…!…」
一方で彼は身体を縮め、すやすやと深く眠り続けているようだった。ウサギだろうか…?耳は通常より長く、垂れ下がっている。私の縄張りで厚かましくも眠りこけるそのウサギに少しばかり、嫌悪を含んだ視線を向ける。すると、ウサギはくるりと頭を回し、うつ伏せにゆらりとこちらに移動した。両手にある鋭い爪をシーツにくい込ませ、上目遣いで私に語りかけた。
「はやくしないと間に合わないぞ」
にたりと目を細め、口角をゆるりと持ち上げた。如何にも人を見下すのが好きそうな面持ちだ。ギザギザとした鋭い歯がこちらを覗く。
「…あー、学校??学校はもう休みだよ…?」
私は視線を外らすことなく無感情に台詞を吐いた。
「あいつがやってくる…。絶対にそいつと目を合わせるな」
耳元をまとわりついて離れない。”あいつ”とは誰であろうか。白昼夢のような朝が過ぎ、夕方が来て、深夜が訪れる。意識は相変わらず朦朧としており、ベッドの角で小指をぶつけた私は耐え難い痛みを感じやっと目が覚める。
ああ、私はここにいるんだ。と。
すると再びオズが語りだす。
「オレについて来い。ここは危険だ。」
「危険…??こんな夜中に物騒な単語言わないでよ。ははは…。怖いものイメージしてしまうでしょう?」
ぐったりと毛布に寝そべり続けていた私は、よっぽどの怖がりだったのか、無防備にも仰向けのまま動けなくなってしまった。目前にあるのは黒い扉。鍵はない。扉のすぐ側で誰かがこちらの様子を伺っている。
オズの名を辛うじて呟く。行かないで。ここにいて…。怖い。しかし彼はいつからか居なくなっていた。私だけが心臓を見せつけるようにそこに居た。
これは現実か夢か。確実に私の身体は恐怖に震え、扉を見た。
しかし気がつくと朝を迎えていた。
「おい。」
射し込む光に目を細め、窓から見える快晴の空と蝉の声が轟いている。私は意外にもスッキリとした目覚めの中、オズに声をかけられた。
「あれ?おはよう…。なんか変な夢みたかも」
今日は何曜日で何日か午前か午後か。どれくらいの夏休みを浪費したのか。夢か現実か。はたまた検討がつかない。
「はやくオレについて来いって言ってんだろ。いつまで呑まれるつもりだ!あいつに抱かれたいのか??キモチワリィ」
「え…?抱かれたい…?誰のこと?きもいこと言わないでよ。」
「テメーが言うな!!自分が今どんな姿なのか客観的に認識できないのか?」
パジャマです。
どうやら進展のない生活を続けていることに彼はお怒りのようです。午前7時過ぎの夏休み。私は制服に着替え学校に向った。