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この人に勝つためにはアルナさんから貰った試作品たちをフル活用しないといけない訳だがぶっちゃけフル活用しても勝てない気しかしない。瞬間火力で言えば貰った試作品たちの中で一位二位を争う爆発細剣をあの大剣で防がれてる時点で勝機はほぼない。真正面からやり合うのはナンセンスだが、だからと言って奇襲を仕掛けられるほどの技量やスキルを私は持っていない為ぶっちゃけ詰みだと思う。それでも勝負を受けた以上やるだけやるが、さて……どうしたものかなぁ。
「時に貴様名をなんと申す?」
「んぁ?私の名前?」
「そうだ。これだけの実力を持つ者なら名を覚えておかねば無礼だと思ってな。」
「…ッス〜。まぁ、お答えしますけど笑わないでくださいよ?」
「なに?」
「私は『プリンセス』愛称でプリンって呼ばれてる初心者ね。」
「そうか……プリンセス、またの名をプリンか。では、私も名乗ろう。私の名は『グレン』とあるギルドの団長をやらせてもらっている者だ。」
「グレンさんね。それじゃあグレンさん私全力でやりますけどお気に召さなくても許してくださいね?」
「ぶつけられる全てをぶつけて来い、『全て』を出せるのならば、な?」
次の瞬間地を蹴り一気に距離を詰められ大剣の間合いに入るや否や片手でその大剣をもち横に薙ぎ払う。すんでのところでプリンは地面に突っ伏して攻撃を避けたあと**試作型焔の剣**で切り上げつつ起き上がる。しかし、それを予見していたグレンは大剣を避けられた時点で一歩引いておりプリンの切っ先は空を切る形となる。
「…火の粉が少し熱いな?」
「馬鹿みたいな避け方からの反撃なんだけどこれも避けるんですね?」
「どんな避け方であれこちらの攻撃が当たらなかった時点で反撃が来るのは察しがつく。それくらいわかって当然だろ?」
「私この手のゲーム初めてでそこまで頭回らなかったわ。なんせ現実でも頭悪い方の人間だから先の展開とかあんま考えられないし考えたくもないんだよね。 」
「ふっ…その場の思いつきやノリだけで私に勝とうと思ってる時点であまいな。」
「ま、そうだねぇ…。私的には勝てたらいいなくらいだからさ。そのために貴女を使ってるに過ぎないんですけど。」
「大口をこうも叩いてくる初心者は初めてだな。」
「とにかく今の攻撃も避けられるんじゃ私に勝機はもうない。なので、やる事やって一回散るかな。」
服に着いた土埃を払いウィンドウを開く。そして空いている片手に先程の爆発細剣を装備し軽く素振りを始める。
「種類の違う剣で双剣?貴様何を考えてる?」
「何って…。別に?ただ私の素の速さじゃ貴女の反応速度に勝てない、そしてその速さと私が持てる高火力の突きですら防せがれる始末。ならば、別の攻撃を囮にして少しでも隙ができたところで突きを繰り出せば守られたとしても完全ガードではないから多少のダメージが入るはず。ていう理由で別々の武器を持ってるんだけど?」
(ナチュラルに説明してるがプリンという女剣士はそのイかれ具合を分かっていない。まずこのゲームでの双剣とは難しい武器種の代表格と言われている。
大振りで大味な戦闘が魅力の大剣、千里先からでも狙い撃つ弓、そして攻守共にバランスの良い片手剣使いが火力を求めて手を出しそのまま挫折する者が後を絶たない理論上トップクラスのDPSを叩き出す双剣…。この3種類だ。
大剣は言わずもがな一撃が重い代わりに大振りなため隙が大きく手痛い反撃を喰らいやすく、弓もまず思ったところに矢を飛ばすこと自体が困難な上にワザのひとつ『エレメントアロー』は獲物を追従する効果があるが弓の扱いの他に使用者の基礎能力が重要になるため練度がそのまま差として出てくる。
そして双剣は大剣以上に瞬間の判断が肝になってくる。大剣は最悪盾としても使えるが双剣は身を守る手段が無いに等しい。さらに左右で持つ剣は刀身に差がありすぎたり別々の武器種を使った時の事故率が高い。例えば弱攻撃を守ろうと剣を構えた時その手に持っていたのがレイピアだった時守れるはずもなくあっさり大ダメージを負うだろう。なので今どちらの手にどのタイプの武器を持っていてそれらの特徴を把握、そのうえで相手の動きを見切りこちらの得意をどう押し付けるかプランを立てていかないといけない。これほどあれこれ考える前衛職など大盾使い以外居ないだろう。
彼女の素の速さはそのまま双剣の強みに繋がるがあの様子だとぶっつけ本番だろうし、何より例えに出したオーソドックスな片手剣と細剣という別種同士の組み合わせ。これを彼女は扱えると確信してるからこの場でそれを行おうとしてるのだ。だから私はイカれてると表現した。)
「爆発細剣と試作型焔の剣の二種らを扱うとして、魔力の消費量はとんでもないからまぁ…捨て身の策といえばそう。だけど裏を返せば魔力がある限りはこの子達をいくらでも使えるということ。どうせやられるならせめてグレンさんには手負いになってもらおうかな。」
レイピアを持つ左手首を軽くクルッと回したあと刺突の構えを瞬間的にし魔力を推進力に変換しグレンを貫こうとする。がしかし、超反応によってまたその一撃は防がれてしまった。
「くっ!?流石に防げるといえどこの威力。そう何度もは受けられないな。」
「今回はレイピアだけじゃなくてこっちもあるんだよ?」
防がれたレイピアとは別、通常空いていた片手には先程の炎を纏う剣が握られておりレイピアと入れ替えるようにその炎がグレンを襲う。それを咄嗟に判断し大剣で押し返し距離をあけた後炎の斬撃を飛ばし再び牽制を始める。
「くっそ!あの大剣を簡単にブンブン振り回すとか何者だよ本当に…。」
「双剣と言うだけで私と相性が最悪なのにそこに拍車をかけるかの如くマジックウェポンを扱うとは、やってられないなぁ………。」
両者攻防一体戦況が続きそのまま第一収縮まで5分を切った頃…。
(これじゃあ埒が明かないな…。プリンのガス欠を待てば勝てるが試作品にしては消費魔力が少なく継戦能力も非常に高い。そのためまさか私が第一収縮まで粘られるとは思わなかった……。)
(私も勝てないけどグレンさんも攻めあぐねてる。が、時間かければもちろん私が負ける訳だがその前に収縮に二人ともやられてしまう可能性がでてきた。説明になかったが恐らく収縮に間に合わないと一発アウト、それも復活はできないタイプだろう。じゃないと数減らして盛り上がりに欠けるだろうからな。それはグレンさんも理解してるはずだからぶっちゃけ身を引いてくれる、ないし私が身を引きたいんだがそれをさせてくれるか……。ん?まてよ?今私とグレンさんはここでドンパチしてる訳だが使う攻撃が炎ばっかりだから悪目立ちしてるよね?となると、他のプレイヤーはこう思うはず『漁夫の利チャンス』と…。うんなるほど。グレンさんはともかく私は大ピンチだなこれ…。
良し!何とか言いくるめてこの窮地を脱しようかな!)
「……ねぇグレンさん?」
「どうした?負けを認めるか?」
「負け認めたら逃がしてくれるならとっくの昔に白旗上げてますよ?」
「だろうな。」
「それよりこのまま私たち戦闘続けてると収縮に飲まれて二度とこの場に立てなくなるかもしれないですよ?」
「脅し文句か?」
「まぁ、そう思ってもらっても構わないですけど、もし私のこの話が本当だった場合決着は付かないですよ?それと、これだけ派手に暴れたから悪目立ちして漁夫の利狙ってるヤツらがその辺にちらほらいるんですけどどうします?」
「お前を倒してそいつらも倒す。それ以外選択肢はないだろう?」
「その前に私が漁夫の利の1人にやられたらおしまいですよ?」
2人が手を止めて会話をしているその僅かな隙を逃さず漁夫の利を狙う1人がプリンに狙いを定めて矢を射る。スキル【加速】によって通常よりも矢にスピードが乗り刹那の瞬間プリンの頭部に直撃する。
「なっ!?」
「………ね?先にやられちゃうから私さ♪」
頭部に当たったかと思われたが狙われてるのがわかった時点で対策講じており、自身の周りに【魔力操作】によってできた薄い魔力の衣を纏ったおかげで致命傷にはならなかったのだ。
「今の攻撃防ぐので私のMPほぼ尽きちゃったみたいだわ。ね?どうします?万全の私との戦闘を望むなら一旦休戦して中心に行くために協力しません?もちろん勝てれば良いと言うなら今あなたの手で斬ってもらっても構いませんが?」
「くっ……。」
(やはり性格上正々堂々を重んじる騎士道か武士道かどっちか知らんけどそういうアレがある人だよね。口振り的に私の最終的に勝てばよかろう精神に難色示してたし…。ここで協力してもらえば収縮からも逃げられるしこの人からも逃げられる。一石二鳥ってわけよ。私ってば天才だね!)
「さぁ?どうしますぅ?決められないなら私を待ってるであろう漁夫の利軍団に突っ込んできますねぇ。」
「…分かった!一時休戦といこう!まずはセーフゾーンに入り貴様が再度万全な状態になった時やり合おうそれまではお預けでいい!」
「…話のわかる人で助かったわ。」
「約束違えるなよ?」
「近しい人ならまぁあったかもしれないけど初対面の方の約束は守るから安心してね!」
「……では、漁夫の利を狙う卑怯者退治と行くぞ!」
「私魔力切れだからほぼ100パーセント自力で戦う形になるかなぁ?」
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