放課後、屋上。
「類ーっ!!」
「おや、司くん?」
オレは殺し屋だ。
腕はそこまで無いものの、類のせいで散々鍛えられた運動神経で何とかしている。
今回のターゲットは、『類の母親』。
だから類の所に泊まりに行くくらいしか手段が無いのだが……
かなり難しい。
殺せたとしても類は感が良いからすぐ気付くかもしれないし、熱中していると密着することが多いので匂いで勘づかれてしまう可能性も無いことは無い。
はぁ、厄介だ。
「オレ、やる事があるから先に帰るな!」
「あぁ、分かったよ」
類の家は知っている。
類の家に着くまで全力疾走で15分、普通に走ってて20分くらいか、
自転車を使って行くのも良いが、勘づかれてしまうだろう。
裏口……いや、あそこには両親が研究室としている地下があったはず。地下は外からも行けるようになっているから、そこを通って1階、地下に母親が居たとしたら実験で失敗ということにしてしまえば……
走りながら考えて、ルートを通る。
確かあそこは鍵が不要なはず。
それに今日、この時間であと10分は母親が家に居ることは確認済み。
あとはしっかり殺すだけ。
扉を開ける。
地下の『そこ』には、類の母親が居た。
「え?天馬く______」
手榴弾のピンを抜き、素早く机のあたりに投げる。
コントロールは完璧。扉を締めて、あとは死亡確認をするだけ。
すまないな、類のお母さん。
遺体は残る。葬式には出てやるから、安心しろ、
「あれ?司くん?」
「あぁ、類か?」
まずい、もう帰ってきていたのか。
「類、何やら中から爆発音が聞こえたんだが……」
「……え、もしかして……、開けるよ!母さん!!」
返事は来ない。当たり前だ。そこそこ威力は高いからな。
それに、役者をしていて良かった。
『台本』が無くたって、直ぐに作るのは可能なんだ。
「っ、母さん、?」
あぁ、死んでいるのか。
当たり前だ。あれだけ大きい爆発音、想定より威力は高かったが、あれで仕留められないなら終わりだろう。
「司くん」
「……っ、」
かなりショックを受けた。
ふりをする。
類の家にはショー関連の事で泊まらせてもらっていて、お世話になっている。
だから、今の『天馬司』は、「爆発音がしたが、人が死んでいるかもしれないと思い怖くなって開けられず、ふとした瞬間類が現れ、類を支えに覗いたものの、最悪の事態が起こっていため自己嫌悪感に苛まれている」というシチュエーション。
「……司くん、大丈夫、?」
「っ、!」
ぶんぶんと首を横に振る。
オレも初めての仕事の時、こんな感じだった。
が。
今はもう死体に慣れ、殺すのにも躊躇しなくなった。
「君のせいじゃないから。大丈夫だよ。」
あぁ、優しいな。類は。
犯人がすぐそこに居るのにも関わらず、気付かないなんて。馬鹿だ。
「……今日は、君の家に泊まってもいいかい?」
「……あぁ、、」
……あぁ、本当に、バカだ。
さて、報告しないとな。依頼も溜まっている。
パパっと片付けないと……
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