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四郎達を乗せたゴンドラが、地上から勢いよく落下する中。
モモは咄嗟にガラスの破片で自身の腕を切り付け、傷を作り四郎の口元に血を持って来ていた。
ゴンドラが地面に落下した瞬間、アルビノの血が四郎の体内に流れ込む。
頭から血を流しているが、アルビノの血液のお陰で致命症には至らなかった。
だが、落下した衝撃で外れたドアが、四郎の左足を挟んでいたのだ。
自力では動かせない重さのドアが四郎の足を挟む。
「四郎っ、四郎っ」
モモが必死に体を揺らすが、四郎が目を覚ます事はなかった。
ポタッ、ポタッ、ポタッ。
白いモモの肌に四郎の額の傷口から出た血が付着する。
「四郎っ、四郎っ!!嘘っ、嘘っ!!」
慌てて四郎の頬を叩いて、体を揺らす。
だが、どれだけ体を揺らしても起きる気配がない。
モモの脳裏に嫌な想像が思い描かれる。
四郎の心臓の音に耳を立て、鼓動があるか確認をする。
CASE モモ
トクンッ、トクンッ、トクンッ。
「良かったっ…。心臓、動いてる」
腕を深く切ってないから、四郎の足の傷が治せてない。
それに、観覧車が落ちる直前…。
私達を乗せたゴンドラの下に、柔らかいクッションのような物が下敷きになった。
今はもう無くなってるけど…。
もしかして、誰かが助けてくれたの?
ガッシャンッ!!
グラッ!!
ドンドンドンドンドンドンッ!!
ゴンドラが再び揺れ、ドア部分が大きく叩かれた。
だ、誰!?
思わず四郎に抱き付き、音を出す人物に見つからないよう隠れる。
「四郎!!モモちゃん!!大丈夫か!?」
聞き覚えのある声に、私の警戒心はすぐに無くなった。
「この声…、辰巳お兄さん!?」
「良かった、このゴンドラに乗ってて。ちょっと待っててね」
ドアを叩いていたのは辰巳お兄さんだったんだ。
ホッと胸を撫で下ろすと、バキッと大きな音をさせながらドアが開いた。
パールを持った辰巳お兄さんが汗だくになりながら、
四郎の腕を引っ張り上げる。
「モモちゃん、大丈夫!?」
「美雨ちゃん!!」
「手っ、出して!!」
美雨ちゃんが開いたドアから身を乗り出し、手を差し
出す。
あたしは迷わず美雨ちゃんの手を掴み、ゴンドラの中から出る事に成功した。
辰巳さんは四郎の左足を見て、落下の衝撃で落ちた木の板を手に取る。
持って来ていたであろうタオルを取り出し、四郎の左足に木の板をタオルで巻き付けた。
「モモちゃんっ。腕、怪我してるっ」
「大丈夫だよ、これぐらい。自分で傷付けた傷だし、
痛くもないから平気」
「え?」
「それよりも、クッション?みたいな物を出したのは…」
傷の話題を逸らすように、辰巳さんに声を掛ける。
「あ、あれは薫君だよ。ゴンドラのネジが外れた瞬間、咄嗟にJewelry Wordsを使ったんだ。モモちゃんに大怪我がなくて良かったけど…」
そう言って、辰巳さんはベンチで寝ている四郎に視線を移す。
「四郎の足、完全に折れてんな。自力では動くのは無理だな。しかし、𣜿葉達とも逸れちまったし…」
「っ!!」
ガチャッ。
いきなり四郎が起き上がり、ハンドガンを取り出し構える。
辰巳さんと美雨ちゃんな姿を見てた瞬間、四郎は銃を下ろした。
「すいません、辰巳さん」
「銃を向けた事か?気にすんな。警戒心が衰えてなくて良いじゃないか。足は固定したが、歩けるか?」
「歩けます。俺の事よりも𣜿葉さん達の方が心配ですね。スナイパーも居るみたいで、三郎が来てたので向かわせた所です」
四郎は顔色一つ変えずに立ち上がる。
歩けるなんて嘘。
本当は凄く痛い筈なのに。
頭と足からの出血が見ても分かるぐらい酷い。
大丈夫じゃないよって言っても、四郎は「大丈夫だ」そう答える。
「お兄さん、本当に大丈夫…?美雨が治すよ…?」
美雨ちゃんがそう言って、四郎の腕に触れた。
その光景が何とも言えない気持ちにさせた。
心臓に重い石が乗っかったような。
黒くてドロドロした嫌な感情が押し寄せて来る。
美雨ちゃんの事はすごく好き。
初めての友達だから。
四郎も黙って美雨ちゃんに触られてる。
私はこの感情が何なのか、三郎から教えて貰った。
“嫉妬”。
私、美雨ちゃんにヤキモチ妬いてる。
四郎が、美雨ちゃんの手を乱暴に振り払わない理由だって分かる。
辰巳お兄さんの大事な子だから。
そんな子に乱暴な事をしないのは分かってる。
「気持ちだけ貰っておく」
そう言って、四郎は美雨ちゃんの手に触れ腕から離す。
「モモ、怪我したのか」
「…うん」
自分自身で傷付けた傷なのに、嘘を付いた。
四郎は眉間に皺を寄せて、腕の傷口を睨み付ける。
「傷口は治るから大丈夫だよ。心配してくれて…、ありがとう」
私は四郎の体に抱き付き、香水の匂いを嗅いだ。
オレンジシトラスの柑橘系の匂い。
私の好きな匂い。
私の落ち着く匂い。
愛してるなんて言葉はいらない。
いらないから、他の子に触られないで。
「爆発の衝撃で客達で、溢れ返ってる。𣜿葉さん達も人混みの中か…」
「芦間の計画だろう。人混みに乗じて、𣜿葉を殺す気だ」
「辰巳さん、𣜿葉さんだけを狙ってる訳じゃなさそうです」
四郎の言葉を聞いた辰巳お兄さんは、何かを察した様子だった。
「スナイパーが潜伏して、俺を狙って撃って来ました。今、三郎が向かってます」
「三郎もここに来てんのか?いや、三郎なら来るか。ひとまず、ここを離れよう。お嬢達が狙われる可能性が高い。お嬢、失礼します」
辰巳お兄さんはそう言って、美雨ちゃんを抱き上げる。
「四郎…」
「分かってる」
四郎は短い言葉を吐き、私を抱き上げた。
抱っこしてほしくて呼んだんじゃない。
四郎の足が心配だったの。
四郎は自分を犠牲にしてでも、私の事を守る。
ずっとそうだったから。
本当に私を思って守ってくれてる?
半分そうで半分は違う。
四郎が自分を捨て身にしてでも守るのは、雪哉おじさんの命令だから。
そんな思いを口にせずに、四郎の首に腕を回した。
その瞬間、パァァンッと大きな発砲音がランドに響き渡る。
四郎が黒いお城の方に視線を向け、音の出所を探るような仕草をした。
「音がしたのは城の方じゃないな。後ろの方だと…、出入り口の方面か」
「𣜿葉達がいる方面だ。芦間が発泡したんだ」
「今からだと間に合いませんね。辰巳さん、どこかの建物に入りましょう」
四郎は周囲を見渡しながら、辰巳お兄さんに提案しする。
「三郎のJewelry Wordsの能力で見た限り、スナイパーを仕留め切れてません。また、俺達を狙って…っ」
パシュッ!!
四郎がそう言った時、辰巳お兄さんの足元に銃弾の跡が付いた。
「黒猫城の方角からですね。辰巳さん、モモをお願いして良いですか」
「えっ…?」
突然の言葉に、私と辰巳お兄さんは驚いてしまった。
「何を言い出すかと思えば…、どう言う事だ?」
「すいませんが、モモを連れてランドから出てくれませんか」
「おい、待て。お前、まさかスナイパーの所に行く気か」
「そのつもりです」
カチャッ、カチャッ。
ハンドガンに銃弾を込めながら、言葉を吐く。
「何で、お前が行く必要があんだよ四郎。このまま人の波に乗じて抜け出せば良いだろ」
「そう言う訳には行きませんよ。椿恭弥の作った殺し屋組織のメンバーだったら、消す必要があります」
「だとしても、今じゃないだろ。仮に、スナイパーが
組織の人間じゃなかったらどうすんだ。行くだけ無駄だろ」
「無駄じゃないですよ、辰巳さん。モモを怪我させたのもありますんで」
その言葉を聞いた瞬間、胸が熱くなった。
私の為に怒ってくれているの?
四郎、そうなの?
だけど、私はすぐに現実に戻される事になる。
「ボスにスナイパーの人物を合わせないと。椿恭弥の情報を引き出すのに良いタイミングです」
「そんなに…、雪哉おじさんが大事なの…?」
私の言葉を聞いた四郎は手を止め、黙って見下ろしてきた。
四郎の前で雪哉おじさんの事を悪く言うのは、ダメって分かってる。
ここで口を閉じないといけない事も分かってる。
だけど、勝手に言葉が溢れ出てしまう。
「行かないで、四郎。私の側にいてっ!!雪哉おじさんの為に、四郎が死にそうになるのはおかしいよ!!私の事が大切なら側にいて!!」
美雨ちゃん達がいるのもお構いなしに叫ぶ。
四郎は私の言葉を聞いてもなお、黙ったままだ。
そんな姿に腹が立って、更に叫び続ける。
「何か言ってよ、四郎!!雪哉おじさんの事がそんなに大事なの?ねぇ、何か言ってよ」
「はぁ…、めんどくせぇ」
「えっ…?」
「めんどくせぇ事を言うなよ、モモ。ボスが大事かって聞きてねぇのか」
四郎が冷たく言い放つ。
すぐに分かった。
四郎の地雷を踏んでしまった事に。
「おい、四郎。その言い方は良くねーだろ」
辰巳さんの言葉を無視して、四郎は話を続けた。
目に見えない静かな怒りの炎を燃やしながら、一言だけ言った。
「俺の命はボスの為にある」
そう言って、四郎は人混み中に消えて行ってしまった。
「モモちゃん、ここは危険だから離れよう。四郎の言った事は気にしなくて良い」
「大丈夫?モモちゃん…」
辰巳お兄さんと美雨ちゃんが慰めてくれている。
だが、そんな言葉すら耳に入らなかった。
“見捨てられた”
私、このままだと四郎に見捨てられる。
せっかく、好きになってもらえたのに。
嫌われた…、四郎に嫌われた。
「行かなきゃ」
「え?」
「四郎に謝らなきゃ」
「モ、モモちゃん?」
「四郎に見捨てられる」
美雨ちゃんの言葉よりも、いなくなった四郎の事で頭がいっぱいだった。
追い掛けなきゃ。
追い掛けて謝らなきゃ。
「四郎っ、行かないでっ」
「モモちゃん!?」
私は美雨ちゃんの言葉に返事をせずに、走り出した。
CASE 𣜿葉孝明
「キャー!!!」
「おい、退けよ!?」
「皆様、落ち着いて避難して下さい!!!」
慌てて逃げ出す客達に向かって、スタッフがアナウンスをし指示を送る。
だが、客達はお構いなしに人の輪を掻き分け逃げ出す。
命を狙われる恐怖に黒猫ランド内の空気が染まる。
その空気を吸った客達はみっともなく逃げ出す。
普通ならこの状況にならないし、会う事もない。
「四郎お兄さん達、大丈夫かな。クッション、間に合ったなら良いけど…」
「ゴンドラの下にクッションが敷けたよ。四郎の様子を見に行きたいが、人が多過ぎる」
俺と薫は人の波に捕まり、四郎達と離れ離れにされてしまった。
四郎達がいるエリアとは逆方向、出口側に移動させられている。
外に出た方が薫の安全を確保出来るが…。
モモちゃんと美雨ちゃんが狙われてない保証がない。
四郎が無傷なら戦闘になっても心配いらないが、ゴンドラが落下してしまった。
薫の能力で出したクッションが、どれだけのカバー力があるか分からない。
致命傷を負ってないと良いが…。
どうするか…。
ゾワッ!!
背後から強い殺気を感じ、俺はその視線の正体を知っている。
まずい!!
俺は急いで薫を抱き上げ、人の波から外れる為に左側に体を向けた。
人を押しの避けながら、無理矢理に人の波の中をかき分ける。
芦間啓成がすぐ後ろまで来てやがった。
アイツは一般人だろうが子供だろうが、平気で殺す奴だ。
パァァンッ!!
その瞬間、背後から発砲音が聞こえた。
「いやあぁぁぁあぁぁあぁあ!!!」
「お、おい!?誰が撃たれたぞ!!!」
「早く行けよ!!」
「し、死にたくないっ!!死にたくないっ!!!」
やっぱり、撃ちやがったか。
発砲音を聞いた客体が我先にと、人を押し始めた。
芦間啓成は俺の場所を把握して、発砲音をわざと出した。
あの野郎、本気で俺を殺しに来やがったな。
「あ、兄貴…」
「大丈夫だ、薫。にいちゃんが絶対に守ってやる」
無理矢理に体を捩じ込ませながら、人の波を掻き分け始める。
多少、強引になっても仕方がない。
俺はここにいる客体や家族よりも、薫の方が大事なんだ!!
やっとの思いで人混みを抜けた瞬間だった。
パァァンッ!!
ブシャッ!!
右肩に痛みが走り、すぐに撃たれたと分かった。
「兄貴!?」
「大丈夫、薫は怪我してねぇか」
「う、うん。僕はどこも怪我してないよっ」
今にも泣き出しそうな薫の頭を撫でながら、背後に視線を向ける。
勿論、俺に向かって撃ってきた人物は芦間啓成だ。
「よぉ、子守りの調子はどうだぁ?」
芦間は気怠げに首を曲げながら、銃口を向けている。
「芦間…、テメェ。今頃になって、薫を狙って来やがってよ」
「うちの頭が弟君の目玉をご所望なんで?あの時のようにヘマは出来ないんだよなぁ?」
「っ…」
俺の後ろにいる薫に向かって、芦間はわざと怖がらせるような言葉を並べる。
薫は芦間に対して強い恐怖心を持っていた。
芦間は当然、その事を分かった上で言っている。
あの時とは違うのは、俺が薫の隣にいれている事だ。
「薫、大丈夫だ。にいちゃんがいるだろ」
「うん、大丈夫っ。怖くない」
そう言って、薫が俺の手を強く握る。
芦間の隣にいる男の子もJewelry Pupilか。
「啓成、勝つよね?」
「当たり前だろ、リン。俺は勝つ勝負しかしねぇよ」
普通の殺し合いじゃなく、Jewelry Pupil同士の殺し合いに変わった。
相手の子供がどのような能力を持っているのか分からない。
だが、薫の前で芦間を殺す事だけが引け目だ。
「お母さんっ、お父さんっ!!お願いだから、目をあけてよ!!」
「いや、いやっ、死なないで!!!」
人混みの中から泣き叫ぶ声が聞こえてきた。
「芦間、お前…。一般人を殺す事はなかっただろ」
「あ?そのセリフ、テメェが言えた事かよ。お前だって散々、人を殺して来ただろうが」
そう言って、芦間が俺を睨み付ける。
そうだ、俺だって芦間と同じような事をして来た。
敵対していた組の組長の自宅にいた家族を殺し、組長を殺した事もある。
家族が殺される事なんて、腐る程ある。
殺されたくないなら家族を持つなって思っていた。
だが、薫と生活するようになって変わってしまった。
こんな俺にも大切な家族が出来て、守りたい存在が出来たからだ。
俺と芦間が昔のよう酒を飲む仲には戻れない。
そもそも、最初から芦間は俺の事なんて何とも思ってなかったんだ。
だからこそ、芦間は俺の実家に乗り込み両親を殺せた。
どれだけ考えても、俺には芦間の考えが理解出来ない。
ただ、これだけは聞いておきたかった。
「芦間、一緒にいる子供はお前の何だ」
俺の言葉を聞いた芦間は、男の子の頭を撫でながら答えた。
「俺の大事な子だ」
そう言った芦間の瞳は、今まで見た事がない優しい瞳
だった。
芦間、お前もその子と出会って変わったんだな。
「薫、銃を出してくれ」
「兄貴…、本当にやる気?」
「頼む」
「分かった」
薫が目を瞑り銃の形を想像し、イメージを膨らませて行く。
ポンッと薫の手のひらにハンドガンが現れ、俺はハンドガンを手に取る。
「へぇ、弟君の能力はやっぱり良いねぇ」
「芦間、お前にも大事な”家族”が出来たなら分かるよな。俺の言いたい事がよ」
「俺とお前とで仕事が出来たのはある意味、運命だったのかもな。こうやって、互いに銃口を向け合う」
カチャッ!!
俺達は銃口を互いに向け、同時に引き金を引いた。
20:00 黒猫城周辺エリアー
CASE 三郎
四郎の乗ってるゴンドラが落下してしまった。
だが、四郎が死ぬ未来になっていないけど…。
「四郎…っ」
黒猫城に背を向け、観覧車の方に向かおうとした時だった。
「…」
刀袋から村正を抜き取り、背後から感じた殺気の状態を探る。
だが、探さなくても犯人はすぐに見つかった。
シュンッ!!
キィィィン!!
「へぇ、久しぶりに見たな。生きてた?君」
「佐助の事、怪我させたのお前だろ」
以前、ボスと辰巳さんの拷問を受けた男が睨み付けて来る。
「は?佐助?」
「とぼけんな。ヒルトン東京ってホテルで、女の子とやり合っただろ」
「あー、あの包帯の女子高生か」
男の言葉を聞いて、女子高生の存在を思い出す。
だけど、この男は女子高生の為に怒ってる理由が分からない。
「何で、君がそんなに怒る必要がある訳?あの女子高生の仲間?」
「仲間であり、俺の好きな子だ」
「好きな子ねぇ…。これはまた素晴らしい青春恋愛ですこと」
そう言って、小馬鹿にするように笑うと男が走り出した。
だが男の動きが遅い為、簡単に防げてしまう。
ブンッ!!
キィィィン!!
「君、俺に勝てると思ってんの?」
「は?ゔっ…!?」
男が刀を振り下ろそうとした時、隠し持っていたナイフを男の腹に向かって投げ飛ばしていた。
ナイフは腹に刺さったまま、男は今まで気付かないでいた。
「気付かなかった?俺がナイフを投げてたの」
「…、そう言う事かよ」
「はい?何、1人で納得してるの?」
「佐助が珍しく男を褒めてたんだよ!!椿様以外の男を!!まさか、その相手がお前だったなんてな!?」
男は髪を掻き毟りながら喚き散らかす。
「え、えぇー。何なの?この人。薬でもやって…るねぇ、君」
男の手首に注射針の跡がかなりあった。
「薬中の相手とか嫌なんだけど、俺。気持ち悪いからやめてよねー。喚き散らかすの、恥ずかしいよ君」
「うるせぇな、好きで打ってると思うのか!?これが!!」
「はぁ?好きで打ってんじゃないの」
耳を押さえながら、男の問いに返事をする。
「俺達はアンタ等とは違うんだよ。仕事をミスしたら、椿様に打たれてるんだよ。お陰で、薬物中毒になっちまたんだよ」
「君、椿恭弥が雇ってる殺し屋だったんだ。ふーん、それでここにいる訳…か。四郎の乗ってるゴンドラを狙って撃ったのも、お前等の所のスナイパーか」
「そうに決まってんだろ。椿様は四郎って男の事が気に入ら…」
ビュンッ!!
男の言葉を遮るようにナイフを投げ飛ばし、静止させた。
ナイフは男の頬を擦り、傷口から血が流れ出す。
「汚い口で四郎の名前を呼ぶなよ、三下が」
「は?何、いきなり怒って」
「四郎はね?お前みたいな奴が、口にして良い男じゃないんだよ。あー、鬱陶しいなお前」
「なっ」
俺が睨み付けると男は口を閉じ、眉を顰める。
この男を捕まえて、椿恭弥の情報を吐き出させてから殺そう。
両足を斬り落として、歩けなくしないとな…。
そんな事を考えていると、脳裏に四郎を写した映像が流れ出す。
四郎が足を引き摺りながら、黒猫城の方に向かって行くのが見えた。
成る程、四郎がスナイパーの方に行くなら…。
俺はこっちの男を…。
「君に聞きたい事が出来た。大人しくやられてくれない?」
「は?ただ殺されてたまるかよ」
「だよねぇ。なら、無理矢理にでも大人して貰うよ」
そう言って、俺は村正を構え直した。