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ハナお姉ちゃんと喧嘩をして2ヶ月ほど経った。僕はまだまだダメな子だから2ヶ月経った今でもハナお姉ちゃんが初めて僕に対して血相変えて怒ってくれたのに僕はまた、お姉ちゃんに会いたいと願っている。きっとまた怒られるかもしれない。でも、それでもいい。それが最後の会話になるならせめて”ごめんなさい”だけはしたい。それで、お姉ちゃんの中から”僕”という存在が消えたとしても、僕はお姉ちゃんのことを一生忘れない。僕だけがお姉ちゃんを覚えているだけでいい。大人の人たちからどれだけ嫌われていても僕だけが優しいお姉ちゃんを知っていればそれでいい。そしていつか必ず僕がこの村を変えてみせる。”忌み子”なんて言われて、酷いことされる人が出ないように僕がこの村を変えるんだ。
お姉ちゃんは大人の人の考えは変えられないし、それに従うしかないって話してたけど、僕はそんなことないと思う。きっとお姉ちゃんは自分でも気付かないうちに『心』を壊されちゃったんだ。だから、酷いことをされてても僕に向けて前向きな言葉をいつもかけてたのに、そうじゃなくて僕とお姉ちゃんを遠ざけるような酷い言葉を使うようになっちゃったんだ。だから、僕が絶対この村を変えてみせる。そのためにこの2ヶ月間僕でも出来ることを見つけて行動して、そして剣を扱えるようになって、弓を練習できるレベルまできたんだ。
まずは、子供の僕でも活躍できることを証明して、村の外に出れるようになることからスタートして、そしてその過程でお姉ちゃんが僕にしてくれたみたいに僕よりも幼い子達に優しくして子供達の”希望”になるんだ。さらに僕をこうして強くしてくれた人として、お姉ちゃんの事を話せばきっと僕と同じ考えになるはず。忌み子なんて存在を無くそうって志を持つお友達ができるはず。
僕は諦めないよお姉ちゃん。仮に村に帰ってきてくれなくても、最後に会ってごめんなさいだけは僕したいもん。
今日、僕が面倒を見てた子が村の外に出ていってしまった。出ていった理由は分からないけど、その子を見たって人の話を聞くと『お兄ちゃんを探しに行くんだ!』と言って大人の静止を無視して出ていったらしい。多分その子の言うお兄ちゃんは”僕”のことだろう。確かについ先程までは外に出て動物を狩っていたところだが、どうやら入れ違いでその子は出ていってしまったようだ。責任は僕にあるから、何とかして外に出ようとしたが、村の人達はそれを許さない。子供である僕が村の大人たちと一緒に狩りに出てること自体が本当は許されないことではあるが、特別に許可を出して外に出しているということ。
村の掟である以上仕方の無いことなのかもしれないが、事の発端は僕にあるのなら僕が行くのが妥当だと思うのにそれを許さない大人達。融通が利かない大人って言うのはきっとこういう人達なんだろう。お姉ちゃんが、大人はクソだけどそれに従うしかないということを今僕は理解した。もどかしいけど、これ以上”こと”を大きくして僕の目的が遠ざかるのは困るから、いまはただグッとこらえるしかないか……。
その子が飛び出してどのくらい時間が経ったのだろう。空模様か曇天に変わり、遂には大粒の雨が降り出してきていた。村人達はすぐに家に戻り暖を取る。ほとんどの村人が家の中に入る中僕はずっと雨当たる外で空を見てた。
この空模様が今の僕の心を表してるようなそんな気がしたから…。僕の中で心の拠り所であったお姉ちゃんが村を出ていき、力ない僕はそれを止められない。そして、短い期間で何とか力をつけてお姉ちゃんと同じように僕よりも幼い子達と仲良くなり、村を変えようとしてた時に村を勝手に出ていく子が現れ、それを探しにすら行けない。まだ僕は力がない。お姉ちゃんと対等に話すほどの力は僕はまだ持ててない…。弱いままの僕だ。このままじゃまた僕はお姉ちゃんに怒られちゃう。何もなし得ないでただ村の大人たちの意見に流されて、そしてそのまま”村の風習”を変えることが出来ないまま大人になるんだ。そんなの…そんなの嫌だよ僕………。
自分の非力さに嘆いていた時曇天の空から、光が漏れだしそして青空が顔をのぞかせた。雨は止み家の中に避難していた村人も続々と顔を覗かせてまたいつもの村の活気にと戻っていった。しかしそんなに喜びも束の間、村の外で例の子を探していた大人から衝撃的な言葉が発せられた。
「”忌み子”が竜を従え村の子を脅迫の材料して現れた!」
その一言ですぐに村の空気は変わる。忌み子として扱われてきたハナお姉ちゃんが復讐に来たと皆震撼していたが、僕だけはそんな事ないと確信していた。きっとたまたま迷子の子と出会いそのまま村付近まで案内してくれたのだろうが、村人達はなんとしてもハナお姉ちゃんを悪者…忌み子として扱いたいらしい。だから、個人的な主観を混じえて僕らに伝えてきたのだろう。龍と共に来たというのも恐らく偶然が重なったに過ぎないはずだ。だって、僕の中のお姉ちゃんはそんなことをする人ではないから。
その報告から少し経ったあとふと空を見上げると空を駆ける竜とその背に乗る人の姿が微かにだが確認できた。そしてその背に乗る人物がハナだとユウヤは直観的に感じてそして、もう彼女は村に戻ることは無いと理解した。
「……ハナお姉ちゃん本当にもうこの村には戻らないんだね。」
その事実がユウヤにはとても辛いものだった。心のどこかで僅かながらに希望の夢みていたのだ。忌み子として嫌われてきた彼女ではあるが、この村を共に変えて居場所にしていくとそんなふうに思っていたが、そんなもの理想でしかない。彼女は本当にこの村との縁を切り、滅ぼそうとしているのだ。それが嘘か真かなんて今は確かめられないけど、確かなのは”村には帰らない”ということのみ。
「そうするしかないなら、僕もそうする。お姉ちゃんの敵としてまた立ちはだかってそれで話を聞いてもらえるか怪しいけど、何とか話を聞いてもらってそれでごめんなさいを言うんだ……。お姉ちゃんに聞く気があるなしに関わらず…………」
心に誓ったその”約束”村を変えると共にただ彼女に謝りたい。それを目的に彼もまた力をつける。