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「さてと、何から、どうすればよいのかしら?」
橘が、紗奈をめぐって、対立している男達へ、声をかけた。
しまった、歌の一首でも送ればよかったか。いや、素直に、気持ちを確かめて。ちょっと、本人抜きに、何をごちゃごちゃと!などなど、男達は、今や頭に血がのぼり、言いがかりを付け、掴みかからんばかりの勢いを見せている。
すると──。
「えーーーーい!!!黙らっしゃいっーーーー!!!」
橘の、最大級の渇が飛んだ。
「あなた方は、何しに来ておるのです!!!こちらが、甘い顔をしたら、調子に乗って!!」
あっりゃーと、髭モジャが、渋い顔をする。
「かか樣を、怒らせたなぁ、こりゃ、どうしようもないわ」
「ひゃー、髭モジャ樣は、あのような、ご様子と、戦っているのですか?!」
「おお、そうじゃぞ!タマや、ああなると、手におえん、お前も覚えておけ」
はい、わかりました。と、タマは頷き、何故か、眠っている一の姫猫を見た。
そこへ、
「橘様ー!もう、夜が明けようとしていますよー!それに外は、肌寒いこと!」
着替えを追えた紗奈が、戻って来た。
確かに、言われて見れば、明け方の底冷え、というものなのか、肌寒さが増している。
「そうね、皆さんを、外に放置というのは、さすがにまずいわ。お前様!と、言いたいところですが、守満《もりみつ》様?いかが致しましょう?」
うん?!と、一瞬固まった守満だったが、ちらりと、崇高《むねたか》に目をやると、
「ここは、橘に任せる。そして、そこの、検非違使殿、すまぬがああああ、暫し、留まり、手を貸してやってくれええええ!!!!」
私は、表へ戻る。もう、夜が明けたとあっては、父上と、話をつけておかねば……。
と、独り言のように、ぶつぶつ言いながら、崇高《むねたか》から、ぷいっと、顔を背け、守満は、小屋を出た。
が、
「紗奈のことは、後で!よいなっっっっ!!!!」
と、いい放ち、すたすたと歩んで行った。
「……たしかに、表向きを、どうするか、守近様が、これから、疾走されるのでしょうが……諸々、関わっているとしたら、果たして……」
常春が、言い渋る。
火災は、内大臣家の事。そして、守孝の過失、と、してしまうべきなのか、はたまた、もののけやら賊のせいにしてしまうべきなのか。
ここは、守近の手腕の、見せ所ではあるが、如何せん、おそらく、何かしらに、関わっているはず。
内大臣の意向というものもあるだろうし、なにやら、ゴタゴタしている、謎の姫君騒動を、上手く、処理できる機会のようにも、思えるが……、また、ここで、内大臣と、守近が、組んでしまったら、それこそ、守恵子《もりえこ》入内に、話が刷り変わりそうでもある。
「橘様、すみません。私も、表方へ」
常春が、言った。
「そうね、守満様は、本当の事を知らないもの。常春様が、上手く、誘導すべきだわ。でないと……訳のわからない権力争いに巻き込まれっぱなしになるもの」
橘も、守恵子の事、これ以上屋敷が、野望のとばっちりを受けるのが心配なのだろう。
「常春様、守満様の補佐を……」
はい、と、言うと、常春は、守満を追いかけた。が、
「崇高様、紗奈の事は、後でっっっっ!!!」
と、言うと、崇高をジロリと睨み付け、足早に、表方へ向かった。
「ありゃ、おいとま、じゃ、なんだと、言っていたのに」
髭モジャが、呟くと、
「お黙んなさいっ!お前様!!!さあ!早く、外の者達を、こちらへ運びなさいなっ!崇高様も!ぼっと、しないっ!!!」
小屋の中では、橘の激が飛ぶ。
「あー、なるほど、なるほど」
タマが、ほおーと、橘の姿に、見とれていた。
「タマ、何、やってんの、あんた、小さいんだから、ちょこちょこせずに、猫ちゃんと休んでなさいよ。疲れてないの?っていうか、そうだ、正式な、犬じゃなかったんだ」
「上野様、正式なって、なんですか。それは、こっちの台詞ですよー。上野様こそ、正式なお話が、どう決まるのか、くくくく、タマ、楽しみだなぁーーー」
「確かに、ちょっと、楽しみね」
と、橘も、顔をほころばせている。わからないのは、紗奈で、
「えーと、つまり、おいとま、の件ですね?まあ、一旦、国へ帰るのが、私もいいんじゃないかと。かれこれ騒ぎすぎましたから。とにかく、橘様、内大臣家の皆様のお世話が、落ち着くまでは、ちゃんと、お手伝いいたしますので!」
あらまあ、助かるわ。と、さすがの橘も、そうとしか、言いようがなかった。
「なんでだろうなー、上野様の、あの、調子はずれ。タマでも、わかるのにーーー」
タマが、二人の足元で、呆れていた。