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急に始まります
「余命、半年です」
医者の口から出た言葉は、やけに軽かった。
俺——朝霧 凛(あさぎり りん)、17歳。
ごく普通の高校生。
……だったはずなのに。
教室の窓から差し込む光が、今日はやけに白い。
「凛、ぼーっとしすぎ」
隣の席からノートで軽く叩いてきたのは、幼馴染の神崎 湊(かんざき みなと)。
昔から一緒で、ずっと隣にいて、
それが当たり前だった存在。
「……なんでもねぇよ」
言えるわけないだろ。
余命半年なんて。
湊は俺の顔をじっと見る。 鋭いくせに、どこか優しい目。
「嘘つくとき、目逸らす癖、治ってない」
図星だった。
それから俺は、少しずつ距離を取った。
湊にだけは知られたくなかった。
悲しむ顔なんて、見たくなかったから。
「最近、避けてる?」
放課後の屋上。 夕焼けが滲む中、湊は真っ直ぐ聞いてきた。
「……別に」
「俺のこと嫌いになった?」
その声が、少し震えてることに気づいてしまった。
違う。 嫌いなわけない。
好きだからだよ。
「……俺さ」
言うな。 言ったら終わる。
でも、湊は俺の腕を掴んだ。
「逃げんな」
その一言で、張り詰めてたものが崩れた。
「……余命半年だって」
言ってしまった。
風が止まったみたいに、静寂が落ちる。
湊は何も言わなかった。 ただ、俺の腕を掴む力が強くなる。
「だから、離れようと思ってた」
笑って言うつもりだったのに、 声が震えた。
次の瞬間——
ぎゅっと、抱きしめられた。
「バカ」
耳元で低く響く声。
「なんで一人で決めんだよ」
「だって、お前が——」
「俺が何?」
湊の顔が近い。 真剣すぎるくらい、真剣な目。
「半年しかないなら、その半年全部、俺にくれ」
息が止まりそうだった。
「俺、お前のこと好きだよ。ずっと前から」
世界が、静かにひっくり返った。
「同情じゃ——」
「違う」
即答だった。
「余命がなくても好き。余命があっても好き」
涙が勝手に溢れる。
「怖いよ……」
本音がこぼれた。
「うん」
「消えるの、怖い」
「うん」
「置いてくの、嫌だ」
「……俺は置いてかれない」
湊は俺の頬に触れる。
「お前が生きた時間、全部抱えて生きる」
それは約束みたいで、呪いみたいで、 でも、愛だった。
そっと、唇が触れた。
優しくて、震えてて、 必死で。
「半年で足りるわけねぇだろ」
湊は泣きながら笑った。
「だから、一秒も無駄にすんな」
俺は頷いた。
怖いけど。 終わるのは怖いけど。
それでも——
この半年を、 「失う時間」じゃなくて 「生きる時間」にしようと思った。
湊と一緒に。