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世代間格差ってヤツだろうか? 言い難い事ってか、言っちゃいけない事をハッキリ言うな、この娘はぁ…… 全くぅ~
そんな風に私が思っていると、全く同意見だったのだろう、小屋の奥から野太い声が掛けられたのである。
『随分失礼な事を言うじゃないか娘よ、良く見るが良い、汚いと誹(そし)りを受ける覚えは無いぞ』
「っ!」
「ギレスラ、帰っていたのか、今日は早かったんだな」
『うむ……』
小屋の奥に身を横たえていたのは、レイブの倍ほどの体躯を持ち、紅の鱗に全身を覆われたニーズヘッグ種の若い雄竜である。
胸部や手足の一部の鱗は、何故か真紫に変じているようでは有るが、全身を見た時に感じる圧は、竜種の最強種であるニーズヘッグ独特の『紅』、その威を感じさせるに充分な真紅であった。
但し、竜の不文律である決まり事、顔周辺に重なり合った鋭鱗(えいりん)から鋭く伸びた両角は通常の二本では無く、更に二本を加えた四本が存在していたのである。
本来の双角があるであろう場所には、全身と同じ真紅の角が真っ直ぐに伸び、その内側に不自然、且つ凶悪な捻(ねじ)れを有した異常な長さの鮮やかに光り輝く紫の二本角が存在感を主張し捲っていた。
小屋の入り口に向けて伸ばした顔の先を少し斜めに傾けて、体色と同じ真紅の虹彩の中で不気味にギラついた線状の紫の瞳を小さな少女に向けて、威嚇するかのように瞬いて見せたのである。
少女は紫の瞳を見つめ返した後、素早く周囲を見回しながらあっけらかんとした声で答える。
「うんそうねぇ、確かに汚くは無いわねぇ、質素だけどぉ…… 掘っ立て小屋に土間のみ、後は古くて湿気が多そうな藁(わら)とムシロ、それに欠けた水瓶に申し訳程度の竈(かまど)でしょぉ? まあ、汚くは無いわよね、そこは謝るわ! んでも、この悪臭は一体何なのよぉ! 竜さんか叔父さん、どっちか説明してくれないかな?」
レイブは首を傾げながらだ。
「臭い? 臭いかな?」
ラマス即答。
「すっごく臭いわよ? 鼻が曲がっちゃう!」
「ええっ!」
レイブも十七歳になったのだ。
思春期の終盤真っ只中っぽく、住処の匂いをクンカクンカしたり、ついでに自分の腋(わき)辺りを入念に臭った後、何も感じなかったらしく大きく首を傾げたりしている。
鼻を摘んで頬を膨らませたままのラマスに対して大きな声が掛けられる。
『ははははっ! 良いぞ娘! 確かに不慣れな者にはここの香りは強烈なのかもしれないな! この匂いは我等スリーマンセル唯一の食事、日々の糧(かて)の残り香なんだぞ! 確かに匂いはきついが食べ慣れてみればこれほど美味い物は無いんだ! 娘も食してみれば良い! ははははっ、何よりその歯に衣着せぬ物言い、このギレスラ、気に入ったぞ、気に入ったぁ! はははははっ! んで、レイブ! この娘は一体誰なのだ?』
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