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第6話:ユレイ、命の記録を読む
⏳ シーン1:杭が消えかけた日
診療室に入ってきたのは、痩せた体に碧のローブを纏う碧族の男性――セイジュ。
白髪交じりの髪を後ろで束ね、肌にはかすかに碧素の粒子が浮遊している。
碧診区の端末には、彼のライフカード残日数《00日03時間》の文字が浮かぶ。
彼の言葉に、ユレイが静かに頷いた。
「まだ残っとるうちに、“言葉”にしよか。お前の声、きっと届く」
🪵 シーン2:記録のための杭
処置室の中央に、新たな診療杭が設置される。
ユレイはセイジュの手を取り、ゆっくりと杭に触れさせた。
メディすずかがフラクタル記録モードを起動。
《TRACE=FINAL_MEMORY》《CODE=RECORD》《MODE=VOICE+FEELING》
セイジュの碧素が、杭に染み入るように流れ込む。
「わしな……守りたかったんや。ただそれだけや」
彼の碧素が震える。杭の光が、一瞬ゆらぎ、そして穏やかに点滅した。
「ユレイ。あんたになら……託せる」
🧬 シーン3:最期の手紙
ユレイはセイジュの声を元に、簡易コードとしてメッセージを変換。
《FRACTAL_MESSAGE=RELAY》
《TO=“シュイ(仲間の名)”》
「杭が消えても、言葉だけは、風になるんや」
セイジュは目を閉じた。碧素が静かに剥がれていく。
砂のように舞う粒子が、診療室の杭へと還っていった。
🕊️ シーン4:記録が、残ること
ユレイは杭を両手で支え、目を伏せる。
「……見送ったつもりやったけど、こうして最後に“届けたい”って言えるの、ええことやな」
メディすずかが、優しく返す。
「命の記録は、いつか誰かの“始まり”になります」
ユレイは微笑む。
「せやな。死んでも、“言葉”だけは生き続ける。碧の街には、それを聴いてくれる奴らがようさんおるからな」
記憶はやがて消えても、想いは杭に残る。
命の記録は、“誰かを生かす”言葉になる。