あやかし町には、噂がある。
『春に、三ツ目の散歩道を振り向かず通れば
二度と会えない死者と会える』
春、盤上町で一人の老婆が死んだ。最後まで老婆は自分の孫娘の心配をしながら、眠る様に息を引き取った。孫娘の佳寿葉にとっては少し不思議な感覚だった。親はとても悲しんでいたものの、佳寿葉はあまり何も感じていなかった。大好きな祖母が死んで、涙もわかない。自分でも自分に疑問を抱いた。なぜ祖母の死を私は悲しめないのだろうと。そしてふと、正解は脳裏におりてきた。
小学校で聞いた、あの噂だ。
「佳寿葉ちゃん知ってる?」
「え?何が?」
「三ツ目の散歩道の噂!」
「……何それ?三ツ目の散歩道ってあれでしょ?薄暗くて、行くって言ったら苦い顔されるあそこ。」
「うーん、そうなんだけど。コテンパンに言われちゃうとなぁ」
「三ツ目の散歩道がどうしたの?」
「春に、三ツ目の散歩道を振り返らずに進み切ると、死んだ人に会えるらしいよ。」
「へ〜。」
「反応薄。」
「死んだ人と会えるって、実感無いし。」
まだ、大切な人を失っていなかった頃の佳寿葉の記憶。この希望に、佳寿葉は大小なりとも縋っていたのだ。きっとこれを果たせれば祖母に会える。そしたらまた、あの大きな暖かい手のひらで頭を撫でて貰えると。希望を失う絶望なんてしていられなかった。この道がもし潰えようと、佳寿葉は後悔もしないし、失望もしない。絶望よりも希望を照らしてみるべきだ。
佳寿葉は家を出る準備をする。両親に三ツ目の散歩道に行く、と言えば苦い顔をされるのは明らかな事を佳寿葉は事前に知っていた。だから、生まれて初めて嘘をついた。
「今日は友達の家に行ってくる。」
「そう、遅くならないようにね。ほらお菓子。」
「はーい。」
友達の家になんて行かない。みんな卒業式後なので旅行が入ってる子が多くて遊べない。だけど、家に行くと嘘をつく。初めてついた嘘は罪悪感と興奮でぐちゃぐちゃだったけれど、何とか佳寿葉は取り繕った。家さえ出てしまえば、あとはこっちのもので。佳寿葉は嘘をついた罪悪感で重い足をゆっくり動かしながら『三ツ目の散歩道』まで向かうことにした。
コンビニやドラッグストア、マンション、病院を通り抜けると、そこは一気に田舎になる。そんな田舎の通り道が、三ツ目の散歩道だ。
改めて条件を確認しよう。
一つ目は、散歩道の始まりで「会わせて下さいリュウガンサマ」と唱えること。正直リュウガンサマが誰かは誰も知らない。
二つ目は、生きている大切な人へ書いた手紙を千切る事。この儀式をするには、一時的に現世への未練を立たなければいけないらしい。
三つ目は、振り向かない事。振り向くと、家まで強制送還されるらしい。
と、佳寿葉が友達から教わったことはここまでだ。噂好きでお喋り好きな友達だから、間違ってる、なんてことは無いと佳寿葉は確信していた。
「会わせて下さいリュウガンサマ。」
一つ唱えて
一枚破って
足を踏み入れる
ようこそおいでませ
孤独な少女よ
佳寿葉ちゃんの設定欲しい人いない?いるよね?押し付けるよ???
滝本 佳寿葉 タキモト カズハ
年齢 12歳
性別 女
性格 真面目、騙されやすい、覚悟ガンギマリ
一人称 私
好きな〇〇 おばあちゃん、友達、ワッフル
嫌いな〇〇 喧嘩してる時の両親
その他 盤上町(通称 あやかし町)に住む小学六年生。卒業とほぼ同時期に祖母が亡くなった。
ほとんどの学年で学級委員を務めていた。
運動はそこそこできるがペットボトルが開けられない。
自分が原因で父と母が大喧嘩してしまい、そこから両親とは仲良くする気になれない。
覚悟ガンギマリ系女子、一般人の覚悟じゃない。
小学六年生にしては結構背が高い(161cm)