TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

今回佳寿葉目線です


三ツ目の散歩道はかなり坂が多い。しかも行きは全部登り坂。その上田舎道で暗いから、誰も寄り付かなくなった。

でも最近、来る人が増えたとか言っていた。大方この噂のせいだとは思う。成功するかも分からない、春しかできないような噂でも私達はこぞってすがりついてしまう。不思議な噂だ。人を惹きつける様な噂。散歩道には人は寄り付かないものの、桜が満開になっていて美しい。桜のアーチを通っているようで、小さい頃来た時はとても楽しかった。父と母が私の進路で揉めて、不仲になった今となっては馬鹿みたいな空想の話に成り下がってしまった。それが今、私の中では一番悔しい。あんなに美しい思い出を、勝手に空想の話になんてさせるものか。

「お嬢さん。」

後ろから声をかけられた。振り向けないので立ち止まる。

「誰ですか?」

「怪しいものじゃないよ、お嬢さんも噂を試しに来たのかと思って。」

後ろから声をかけてきた男は、すぐに私の横に並んだ。かなり長身のスーツを着た男。こんなに長身なら町で一回は見たことあるはずだから、きっと町の外から来た人なのだろう。

「あなたは町の外からわざわざ噂を試しに?」

「そうなんだけど、驚いたな。町の外から来たなんて分かるのかい?」

「この町は最近まで忌み嫌われていましたから、外部の方がほとんどいらっしゃらないんです。」

「忌み嫌われていた?」

「……町の外の方は、知らないかもしれません。」

この町は盤上町だ。昔は武士の多い土地だったらしい。でも、町の外も、中も、盤上町と呼ぶ人は珍しい。殆どの人が盤上町のことをこう呼ぶ。














あやかし町と。

「それまたどうして。」

「この町に来た旅行者の方が、相次いで行方不明なんです。」

「それって噂を試したからじゃなくて?」

「噂が経つ何十年も前のお話です。行方不明になった理由は分からずじまい。警察の方も捜査を打ち切りにしてしまいました。」

「だから嫌われてて、あやかし町。町の人達はどう思ってるの?」

「特にどうもですね。皆さん呼ばれて仕方ないという雰囲気でした。」

「いやいやそんなことある……?」

盤上町が嫌われているのは行方不明者が多いからだけでもなく、未だに各所に古い風習が残っているからでもある。それを町だけでやるのならまだしも、旅行者や他の町の人達にも強制するものだから、皆に嫌われてしまったのだ。私が産まれる前に死んだ祖父もその様な人だったらしい。祖母が止めても止まらなかったそうだ。

「お嬢さんはどうして噂を?」

「祖母が亡くなりまして。またもう一度会いたいんです。」

「そうか、お祖母様を。」

「あなたはなぜ?」

「妻に先立たれてね。結婚記念日のつい前日に、交通事故にあって。」

「心中お察しいたします。」

……あれ、全然気づかなかったけど





























三ツ目の散歩道ってこんなに長かったっけ。

「じゃあ私は先を急ぐよ。お嬢さんも頑張って。」

「あ、はい。」

男が私の先に行った。足取りは軽そうだ。私とは大違い。でも、違和感は拭えない。この散歩道の長さと異様な雰囲気。全てが幼少の頃のそれと違う。噂を実行するとこうなるのだろうか。それなら随分と力の強い噂だな。

まだ男は前に見える。

「あれ……?あの人なんだか頭を抱えて……」

よく見ると叫んでいるように見える。でも全く声が聞こえない。あれ、あれ。





あの人こっちを振り向いて!?

「振り向いちゃだめ!」

その声は届くこと無く、男は消えていった。きっと三つ目の条件を破ったからだ。家に強制送還された。でも引っかかるのはその前の男の様子。取り乱す、というより発狂と言った方が近い様子だった。男の精神を壊すようなことが、この先で起きたのだ。




でも、それに怖いとか言ってる場合じゃない。もう会うって決めた。それを覆すことなんてしない。

絶対に、私はこの道を進みきってみせる。

















『また人間が来たみたいだにゃ』

『腰抜けでしょう、すぐ逃げます』


『お願い助けて裏切り者酷いよ助けて許さないふざけるの許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して』

『うるっさい!黙ってろ!!』

『今回はどうなるかにゃ』

『リュウガンサマの機嫌次第ですよ。』

『まぁ、それはそうとして』

『頑張りたまえ

愚かな子供』

あやかし町の三ツ目さん

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

0

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚