観測部隊流星の人たちが持っていた懐中電灯で館内を照らしながら移動する。
千嘉「あ、そういえば名前言ってなかったですね…天空千嘉です」
こんなときに自己紹介するのも可笑しいけど今しかないと思ったのだ。
男「ご丁寧にありがとうございます」
千嘉「あの…護衛って誰からですか?歌葉を狙う人がいるってことですか?」
男「はい…彼女の力を狙う盗賊がこの世には存在します」
千嘉「力?盗賊?何です、それ…」
男「外では話せない決まりなので我々の研究所にお越しください」
千嘉「でも…今日は一旦帰らないと…親に言い訳してきます」
男「では明日の早い時間にお迎えに上がります」
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翌日の早朝
男「親御さんにはちゃんと伝えましたか?」
千嘉「はい、友達の家に何泊かしてくると言いました」
男「では、参りましょう」
車で1時間ぐらい走ったところで小さな工場みたいなところに到着した。
男「ここが我々の研究所です、中で流れ星が産み落とした命の行方を探しています」
千嘉「機械もだけど資料だらけですね」
男「我々もまだわからないことばかりなので日々研究漬けになってます」
千嘉「それで昨日話していた力とか盗賊とかって何なんですか?」
男「順を追って説明します」
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男「まずは流れ星が産み落とした命の誕生した日を我々観測部隊流星の者は星食の日と呼んでいます」
千嘉「誕生日の用語なんてあるんだ……」
男「しかし誕生日というのは表向きの理由です…裏では流れ星が産み落とした命の力が目覚める日でもあると言われています」
千嘉「歌葉には何か特別な力でもあるんですか?」
男「彼女の力……それは……星波の華を咲かせる力です」
耳に入ってきた星波という言葉に違和感を感じる。
千嘉「星波って…歌葉の名字と一緒!?」
男「えぇ…年頃になる星波家の娘にはその華を咲かせる力が目覚めるものがいると…それが流れ星の産み落とした命と呼ばれています」
近年は中々現れず盗賊と呼ばれるものたちも動いてなかったが彼女が現れたのでまた動き始めたらしい。
男「しかもあの方は伝説の言い伝えと同じ容姿ですので…咲かせるだけでなく流れ星の代わりともなるのです」
千嘉「代わりって?」
男「分かりやすく言ってしまえば…願いを口にしたら彼女は叶える代わりに消えるんです…消滅といった方が正しいかもしれません」
それを聞いた瞬間私は周りの音が全て遠ざかった感覚がした。
異次元の話だしよくわからないことだらけ。
けれど歌葉と会えなくなることだけは理解できた。
そんなの嫌に決まってる。
やっと本当の自分を見てくれる友だちを見つけたのに。
千嘉「彼女を……歌葉を助ける方法はありませんか?できることなら何でもします!お願いします!」
必死に頭を下げてお願いした。
絶対に危険なことだと本能が警告のアラームを鳴らしている。
本来なら私が首を突っ込んではいけない案件なのだ。
男「申し訳ありません…確実に助けるには盗賊が願いを口にする前に彼女を連れ出すしかありません」
そんなこと…私にできるわけがない。
男「盗賊が何を望んでるか知っていますか?」
千嘉「いえ…」
男「世界を自分たちの物にしようとしているのです…または彼女が消えないように願いを口にするか」
そんなの……不可能に近い……
千嘉「その…盗賊のいるところはどこですか?その人たちを説得して歌葉を返してもらう!」
男「奴等は我々の言葉を聞き入れた試しは一度もありません!その方が危険です!願いを叶えるために手段を選ぶような奴等ではありません!」
千嘉「仮に辿り着いても…歌葉はもう願いを叶えた後でいなかったらって思うと…もう……」
男「ん?あの…天空さん…髪の毛につけてるその飾りは?」
千嘉「気がついたら私の部屋にあって…なんかきれいと思って勝手に使ってて」
男「水色の星の髪飾り」
千嘉「なんか特別な流れ星みたいだなって勝手に思ってて」
男「一か八かですが……探す方法が1つだけあります…試してみませんか?」
千嘉(もしそれで歌葉が助かるなら…時間ないし選り好みの時間はない!)
男「その髪飾りを握って探してる人を思い浮かべて…古来から伝わる失せ物探しの術…流れ星が産み落とした命と心が共鳴するともしかしたらそれが道を示してくれるかもしれない」
千嘉(見つかる保証はないけどそれでも私は歌葉を助けたい!お願い!神様!歌葉の居場所を教えてください!友だちを見つけて!)